真冬の夜が見せた夢
それは、真冬の凍てつく寒い夜のこと。
燃え盛る暖炉の前、暖かい部屋の中。
灯りは煌々と点っているけれど、私はソファーに横たわり、うとうとと眠りに誘われようとしていた。
“…ママ…ママ……”
どこからか、聞こえてくる小さな子供の声。
辺りを見回すけれど、霧に包まれて霞んでいる。
しかし尚、何処か遠くから更に声が響いてくる。
“何処にいるの”
ママはここよ。ここにいるわ。
思わず知らず答えていた。
そして、声の主に尋ねる。
あなたは何処。何処にいるの?
“こっちよ、ママ”
振り返ると、それは愛らしい女の子が立っていた。
つぶらな瞳におしゃまな笑顔。
あなたは……。
“もうすぐ逢いに行くからね”
その子はあどけなく笑うと、くるりと背を向け、霧の彼方へいつしか幻のように消えていった。
「……夢」
呟きながら、ブランケットをかけている肌を抱きしめる。
「あの子は……」
思わず知らず肩先の金色の巻き髪に触れ、フォトスタンドの中で笑む夫の碧眼を見つめた。
間違いない。
あの髪、あの瞳の色。
あの子は私達の……。
それは凍てつくような寒い夜に、暖炉で燃え盛る炎が見せてくれたひとときの夢。
「もうすぐ逢えるわ」
私は微笑み、丸く大きな臨月のお腹にそっと手を当てながら呟いた。
本作は、家紋武載さま主催「夢幻企画」参加作品でした。
作中イラストは、みこと。様より頂きました。
参加させてくださった家紋さま、みこと。様、お読み頂いた方、どうもありがとうございました!




