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ヒューマンドラマ作品集

真冬の夜が見せた夢

作者: 香月よう子

 それは、真冬の凍てつく寒い夜のこと。


 燃え盛る暖炉の前、暖かい部屋の中。

 灯りは煌々と点っているけれど、私はソファーに横たわり、うとうとと眠りに誘われようとしていた。


 “…ママ…ママ……”


 どこからか、聞こえてくる小さな子供の声。

 辺りを見回すけれど、霧に包まれて霞んでいる。

 しかし尚、何処か遠くから更に声が響いてくる。


 “何処にいるの”


 ママはここよ。ここにいるわ。


 思わず知らず答えていた。

 そして、声の主に尋ねる。


 あなたは何処。何処にいるの?


 “こっちよ、ママ”


 振り返ると、それは愛らしい女の子が立っていた。

 つぶらな瞳におしゃまな笑顔。


 あなたは……。


 “もうすぐ逢いに行くからね”


 その子はあどけなく笑うと、くるりと背を向け、霧の彼方へいつしか幻のように消えていった。


「……夢」


 呟きながら、ブランケットをかけている肌を抱きしめる。


「あの子は……」


 思わず知らず肩先の金色ブロンドの巻き髪に触れ、フォトスタンドの中で笑む夫の碧眼を見つめた。


 間違いない。

 あの髪、あの瞳の色。


 あの子は私達の……。


 それは凍てつくような寒い夜に、暖炉で燃え盛る炎が見せてくれたひとときの夢。


「もうすぐ逢えるわ」


 私は微笑み、丸く大きな臨月のお腹にそっと手を当てながら呟いた。



挿絵(By みてみん)




本作は、家紋武載さま主催「夢幻企画」参加作品でした。


作中イラストは、みこと。様より頂きました。


参加させてくださった家紋さま、みこと。様、お読み頂いた方、どうもありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] こういうお話って個人的にすっごくツボで、めちゃくちゃ好みでした! 温かで優しく、幸せな読後感を、しかもこの短編の中にいっぱいにつめこんであるなんて、本当に素晴らしい作者様だなぁと感動しまし…
[良い点] タイトルからホラーかなっと思ったんですがとても優しい暖かいお話でほっこりしました。ママが大好きで産まれる前に会いに来てくれたんですね。子供の話は一瞬、可哀そうな泣ける話かなっと身構えちゃう…
[良い点] 全体を通して、暖かみがあって良かったです。 お子さんの女の子、お母さんに会えるのが待ちきれなくて、夢の中で会いに来ちゃったのかな? 何とも可愛らしいですね。 どうかお幸せに、と願わずにはい…
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