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不死鳥の聖女  作者: りすこ
第五章 善と悪の戦い
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潜入 side サラ&セト

 ミルキーと通信を終えたサラは、小さく息を吐いた。


「ミルキーは大丈夫だろうか……」


 つい不安が口からでると、タブレット端末を見ていたセトが安心させるような笑顔になる。


「いざとなりゃ、おれたちがすぐ行く。そのためにここにいるんだろ?」


 サラはこくりと頷いて周囲を見渡した。

 ここは、地下鉄の駅にある部屋。

 フェアリーメイソンに技術を教えるときに、ドゥードゥたちが使っている部屋だった。


 待機していると、黒いポーションを飲み込んだ鳥型のロボットが近くまで来た、とタブレットに表示される。


「ちょっと、行ってくんな」


 セトが部屋から出ていった。


 手持ちぶさたになったサラに、羽音を立ててリトル・シーがやってきた。

 サラの肩にとまって、頭を頬にこすりつけてくる。


 ──サラ、大丈夫だよ。ぼくもいるよ。大丈夫だよ。


 くすぐったくてサラは喉を震わせて笑う。


「ありがとう、リトル」


 ここにリトル・シーがいるのは、自らサラに付いていくことを望んだからだ。


 ──サラはぼくの仲間! 仲間! ぼくも役に立つよ!


 リトル・シーは羽を燃やすと回復の粉になる聖女みたいな鳥だ。

 鳥を重んじるアーリアに居ても、手酷く扱われないだろうという判断で、同行が認められた。


 リトル・シーの背中を撫でてやっていると、セトが戻ってきた。

 サラの様子に安堵して、セトはほっと息を吐く。


「黒いポーションはドゥードゥたちがノームじいさんの所に送ってくれたよ。じいさんに任せておけば成分も分かるし、分かれば攻略法も見つかるだろ」


 セトは自分の頭を、指でとんとんと叩く。


「やべえもんだったら、無効化するレシピをノームじいさんが作って頭に送ってくれる。かーさんも手伝っているし、早く解析してくれるって」


 ウンディーネはセトに付き添っていない。

 ノームたちと共に支援に回っていた。


「そうだな……本当に皆には感謝の言葉が尽きない」


 一人ではないことが心強い。

 何があっても、仲間がいるからドルトルに立ち向かえる。


 囮にもなれるというものだ。


 ミルキーが偵察してくれてはいるが、それもいつまで、どこまでできるか未知数だ。

 ドルトルたちは、何を仕掛けてくるか分からない恐ろしさがある。

 なら、サラが一人で出た方が、相手の動揺を誘えそうだ。

 しかし、セトはこの作戦にはいまだに反対していた。


「なぁ、本気でおれと分かれて一人で国境の門に行くのか?」


 心配する声にサラはほほえむ。


「一人ではない。リトルも付いてきてくれる」

「そうだけど……サラをぶっ刺した奴だぞ? 危険すぎる……」

「その為にリトルがいるんだろ?」


 セトは行くなと強く言いそうになって、気持ちを消去した。

 抱えていたら、サラをこの部屋に閉じ込めて一人で、何もかもを片付けてしまいそうだ。

 でも、そんなことをしても、彼女は喜ばない。

 だから、消去(デリート)消去(デリート)

 心を機械化する。

 彼女の望むことしか言わない存在(ロボット)になるんだ。


 セトは押し黙って、床に置いてあった鞄を手で引き寄せ、中身を漁る。

 ひとつの麻袋を取り出してサラに差し出した。


「ノームじいさんに頼んで、エリキサーを溶かして飲みやすいカプセル型の錠剤にしてもらった。ひとつ飲めば完全回復する」


 サラは驚いて中身を確認する。

 石だったエリキサーは、綺麗なエメラルドグリーンの錠剤になっていた。


「……全部、溶かしたのか?」

「うん。おれはエリキサー効かねえし、サラに持っていてもらおうと思って」


 ふっとセトが目を伏せる。


「……サラの為に使えば、あいつもきっと喜ぶ」


 セトは脳裏にユニコーンの姿を描く。

 愛するものの為に使えといった遺言も。


 ユニコーンのことを知らないサラは、含みのある笑みを見ても彼の感情のすべてが分からない。

 でも、感じるものはあった。


 サラは大事にエリキサーを一粒つまみ上げ、腰ベルトにあるポケットにしまう。

 残りは袋ごとセトに渡した。


「お守りに一粒、もらっておく」

「一粒だけかよ?」


 不満そうにするセトの肩にしなだれかかった。

 彼は驚いて体を震わせる。


「私は丸腰でいくつもりだ。万が一、捕まったときにエリキサーを奪われたくない。セトが持っていて」


 セトは嘆息して、サラの頭に自分の頭をつける。


「もっと持っていけよ。何があるかわかんねえじゃん」

「私が何かある前に、助けてくれるのだろ?」


 目を伏せていうと、セトは口をすぼめてサラの肩に腕を回す。


「……助けるよ。あの野郎に傷つけさせるもんか」


 引き寄せられたが、彼の腕の中だと安心する。

 不安も何もかも溶けて、自分は戦いにいけるのだ。


「セトを信じている」


 そう言うと、セトはサラを守るように強く抱きしめた。



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