11 宇宙人に、失恋①
『フェルナン、わたしと結婚してくれますか?』
あの雪の日の事は今でも明瞭に覚えている。それでいて子どもの頃に見た映画のように覚えている部分はあるのに輪郭を伴わない全体像が、夢のようにも思える。あの時も、思い返す時も自分の感覚や意識がどこか曖昧で、周りの人間も実家の家具も何もかもが近くにいるのに遠く感じた。
しばらくたった今では、嬉しいような気もする。
でもこれはきっと、多分――
「明日は地球にいられる最後の日になるの」
あまりにも突然すぎる最後通牒。
しかしそれは予定されていた未来。
アリシアに日常会話の延長のように言われ、僕は話半分で聞くみたいに「ふうん」と言いそうになった。しかしその言葉の意味を、深く考える必要があると気づいた。
「……地球に」
この家に、ではなく。この街に、でもなく。この国に、などではなく。
彼女たちがこの上なく巧みに地球人に擬態するものだから、アリシアが地球外知的生命体だということを忘れていた。そして、彼女たちスター・トラベラーが地球上にいられる期間には限りがあることも、忘れてしまえていた。
僕はとても長い夢を見ていたのだろうか。
ただ僕は、瞬きをするだけしかできなかった。




