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狐火の市へ  作者: はなまる
魔法使いのおにい編

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其ノ九 仕切り直し

 それからうちは、改めて掟破りを詫びた。そして次の新月の晩に、きっちり作法を守って狐火の市を訪れることを約束した。


 婆さまは「そう簡単にたどり着けると思うなよ」と不敵に笑い、おっちゃんは「気ぃつけて来るんやで」と心配そうに言うてくれた。

 おにいはおっちゃんの隣で、居心地悪そうにしとったので、二人はやっぱり血縁なのかも知れへんなぁと思た。おにいのおとんやろか?


 帰ってからは、次の新月の準備をして過ごした。

 ちょろまかしたお祭りの提灯は、電源がないと明かりが点かへんし持ち手もない。勢いだけで山に入った時は、ぶら下げて持っとっただけでなんの役にも立たへんかってん。何度も転んで(ひど)い目ぇに合うた。

 電池で点くようにして、明るい電球と取り替えて、更に持ち手も取り付けた。少しだけ、爺ちゃんに手伝うてもろた。


 プラスチックの狐の面も改造した。通気性が悪くて息苦しいし、目の穴も小さくて視界が狭すぎや。空気穴をたくさん開けて、目の穴も大きゅうした。見栄えはさらに悪うなってしもうたけれど、まあ作法には支障はないやろう。


 それから、自分がどないしたいのか、じっくりしっかり考えた。


 一番ええのは、ダムの計画がのうってまうことや。うちは大人になったら、爺ちゃんや婆ちゃんと、この村で暮らそう思とった。

 でも計画は、今更『なかったこと』には出来へん。村の人のほとんどは、もう別の場所で新しい暮らしをはじめとる。村に残っとる年寄りたちも、身の振り方は決まってるんやて。うちの家も二世帯住宅に建て替えるらしい。


 妖怪たちが避難するなら、それを手伝いたい。


 ただの人間のうちに出来ることあるなら、なんでも手伝いたいと思う。


 山や村におる、生き物たちを助けたい。


 出来れば動物や昆虫だけやのうて植物も。なんも知らへんで、水に沈むこと良しとする生き物やらは、おらへんはずや。

 狐火の市では、そのための道具を探そうと思う。


 お母ちゃんに電話して、うちの宝物を段ボールに入れて送ってくれるよう頼んだ。間に合わんと困るから、速達でと念を押した。

 ついでにうちにダムの話を教えてくれへんかったことに文句を言うた。お母ちゃんはうちにとってのこの村の価値を、ちいともわかっとらんかった。


 他にもなんか宝物っぽいものはあらへんかと、爺ちゃん婆ちゃんに聞いたり、納戸や物置きの中を探し回った。

 爺ちゃんがやけに親身になってくれて、大事にしとった将棋のセットを「持ってけ」と差し出した時はびっくりした。爺ちゃんは何か気づいとるのかも知れへん。

 せやけど、いっくらすごい(もん)でも、それはうちの宝物とちゃう。

 そう伝えたら爺ちゃんは「そうやな。ほんま、その通りやな」言うてた。そして「あんまり無茶すんなや」と、頭を撫でてくれた。


 そう考えると、うちの用意した宝物はほんまの宝物と言えるんやろか。せやけど、ほんまにほんまに大切なものは、人に渡せるようなものやあらへん。狐火の市は、人の覚悟を試すもんなんかも知れへん。


(さすが婆さまのやるこっちゃ。ほんま、(あなど)れんわ……)


 色々忙しくしていたら、時間も日にちもどんどん過ぎてゆく。それでもなんとか準備を済ませて、やがて新月の晩を迎えた。


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