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狐火の市へ  作者: はなまる
約束編(出雲弁)

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38/62

其ノ六 出雲大社

 出雲大社の近くまで来ると、もうずいぶんと遅いのにチラホラと人出があった。観光客相手のお店は、この時間はまだまだかき入れ時だ。


「きゃん(こんな)時間に小学生が二人フラフラしちょったら、通報されえかも知れんな!」


 マサトは人目を避けて、路地裏に向けて自転車のハンドルを切った。

 後ろの荷台でどうやら居眠りをしていたらしいタクが、バランスを崩して「ふぁっ!」と変な声を出して目を覚ました。


「大丈夫か? 具合悪んなったら言えよ」


 マサトがそう声をかけると、タクは「もー、心配し過ぎだがね」と決まりの悪そうな声を出した。


 自転車のペダルをぐっと踏み込む。背中に出雲大社が遠ざってゆく。目の前にそびえる出雲のお山は満天の星空を従えて、暗く深く沈んでいる。



 そこに、もしもたいそ(すごい)神さまがおらいなら、誰かひとりでもいいけん、どげぞ、狐火を灯してごしなぃ(下さい)。


 ぼくに、タクをつなぎ止めえための、チャンスをごしなぃ。ぼくが渡せえもんなら、なんでもあげるけん。


 どげぞ、狐火を灯してごしなぃ。



 マサトのそんな願いごとを聞いてくれたのは、八百万(やおよろず)のひと柱の、ほんの小さなの気まぐれなのか。


 それとも人ではない恐ろしい何かが、覚悟の足りない子供たちに『全て捧げてしまえ』と、貢ぎものを求めて手を伸ばしているのか。


「ま、マサト、見いだわ‼︎ ほれ……なぁ、あれって……もしかすーと……!」



 タクの指差す場所には、揺れる小さな炎が三つ。無力な二人の子供を、誘うように灯っていた。



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