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狐火の市へ  作者: はなまる
姉妹編(広島弁)

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15/62

其ノ八 それからのわたし

 わたしはサエをおぶってお山を降りた。サエが背中から「ねぇね』と呼ぶ。


 わたしが「なんじゃ?」と聞くと、また「ねぇね」と呼ぶ。


「ねぇね」

「なんじゃ?」

「ねぇね」

「なんじゃ?」


 あんまりなんべんも繰り返すので、面白くなって笑ろうたら、サエも背中でキャッキャと笑うた。


「こらこら、暴れたらいかん!」


 サエの重さが嬉しかった。夢じゃないんじゃと、ようやく思えた。またじんわり出てきた涙と、タラリと垂れた鼻水を、体育着の袖で拭いた。


 背中で、うとうとしだしたサエが、半分寝言のように呟く。


「ねぇね、だいしゅき」


 わたしは涙も鼻水も、そのままだらだら流しながら、朝焼けのもやに煙る山道を、黙ってテクテクと、歩いて帰ったんじゃ。



 次の日の朝、お母ちゃんとお父ちゃんが、わたしの部屋で一緒に眠るサエを見つけて大騒ぎになった。

 駐在さんや近所の人らも来て、もっと大騒ぎになった。


 新聞の人やらが来て、たくさんの大人に色々聞かれたけれど、わたしは全部「わからん」で通した。

 話したところで、どうせ誰も信じっこない。


 そんな騒ぎが、ようやく収まって来たある日のこと。


 天狗のおっちゃんから、請求書が届いた。手紙ではのうて、請求書じゃ‼︎


『ミサキ殿 


妹預カリ料金の支払イヲ請求ス。


支払方法 

狐火ノ市ニテ『玉屋』ノ店番ヲスル事デ支払イトスル


新月ノ晩、迎エ有。必ズ、妹ト共ニ待テ』


 サエを預かっていた二ヶ月分の、預かり料を払え。玉屋の店番をして、働いて返せいう事じゃろう。


『必ずサエを連れて来い』。


 わたしはそれを読んで、思わず吹き出してしもうた。天狗のおっちゃんはきっと、サエと暮らすうちにすっかり情が移ってしもうたんじゃ。


(サエに会いたいのに、素直に言えんのか? 天狗も、かわいいところがあるんじゃな!)


 そんでも、窓から落ちたサエを助けてくれたし、迎えに行ったわたしに、サエをちゃんと返してくれた。


(天狗のおっちゃんにゃあ、感謝しかない。店番くらい、喜んでやったるわい!)


 新月の晩が、今から楽しみじゃ。宝物をたくさん持って行かにゃならんな! 欲しいもんが山ほどある。


(ふふふ! 天狗のおっちゃんや、タネ屋の好みの品を……)


「あれ? サエ……なんじゃ、その背中の黒いのは……」


 ちっこい翼が生えとる?


「ちょっとパタパタしてみい?」


 サエが『ふん!』と力を入れると、背中の翼がパタパタと羽ばたいた。ふわりと身体が浮き上がる。


 天狗の翼じゃ!


「おっちゃん、サエを(あやかし)の仲間にしてしまうつもりか?」


 こりゃあ、困ったことになった。こんなモン背中に生やしとったら、きっと保育園でイジメられる。

 ところが、サエがわたしに抱きついて、キャッキャと笑うと、背中の羽がスーッと消えた。なんじゃ、出したり消したり出来るんかいな?


 天狗のおっちゃんに、人間社会について少し教えてやらないかん。サエがイジメられたりしたら、わたしは保育園で暴れてしまうかも知れん。


 サエが『おっちゃんのハーナ、あこうて(赤くて)なーがい』と、でたらめの歌をうたいだした。


 嬉しそうじゃのう……。ねぇねは心配しとるんじゃぞ! でも、サエが楽しそうじゃけん、ええんかいな?


「鼻が伸びるよりはええじゃろうか?」


 サエ、さーえ! 翼のことは、お父ちゃんとお母ちゃんには内緒にせないかんよ? 二人ともびっくりして、腰を抜かしてしまうけぇな!




 うちの妹にゃあ、ちっこい天狗の翼が生えとる。

 パタパタとわたしの周りを飛ぶ姿は、そりゃ可愛いもんじゃ!


 わたしの妹は、世界一、可愛い可愛い妹じゃ。

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