81_ゆで卵の殻を綺麗に剥きたい男
おはようございます。きんぴらです。
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私はゆで卵を食べる機会が多い。
朝目が覚めるといつもより重たい体が転がっていた。
昨日は夜中作業をしていて、就寝は朝の5時。2時間だけ寝て目が覚めた形だ。いつもは6時に起きているから1時間遅かった。
生活リズムが崩れないか不安を感じながら体を起こして、カーテンを開ける。空は一面鼠色。ところどころ影によって濃淡があるから立体的な空だ。
「今日は雨が降りそうだな」
すかさずスマホで天気予報をチェックするが1日中曇り。雨は降らないらしい。空は今にも降りそうだが長年人間が研究してきた天気予報が降らないと言っているから降らないのだろうと私はスマホをデスクに置いた。
そのデスクには昨日「忘れないように」と目立つように置いた納税通知書。今日は朝一納税に行く予定だ。金額を見ると目がチカチカする。文字は好きなはずなのだが。
バスルームで頭を洗いながらアグレッシブにスクワットをして目を覚ます。髪を乾かして納税通知書とノートパソコンをカバンに押し込んで家を出る。ノートとボールペンはカバンに常備しているからいちいち入れる必要はない。
玄関に置いていた空のペットボトルを抱えて部屋を出る。外から鍵をかけて、1階にあるダストルームに向かう。ペットボトルの蓋を外してキャップ入れにキャップを入れて、ボトルの部分はボトルの網カゴに分別。ラベルは部屋で外して燃えないゴミの袋に分別済みだ。
ダストルームを出て、さぁ行くかと歩き出したら小雨が降ってきた。
「天気予報め」
私は部屋に戻って玄関の傘立てから黒い大きな傘を取り出す。大きなカバンを背負っているから大きな傘でなければカバンが濡れてしまうのだ。
傘をさして今度こそ出発。コンビニなどでも支払いも可能なのだが、私は役所が意外と好きだ。日頃あまり用事はないし、マイナンバーカードやe-taxなどで手続きが電子化されていて訪問する機会も少ない。だからたまに行きたくなってしまうのだ。健康診断で3ヶ月前に行ったけれど。
だからお金を払う必要があるとき、さらにそういう気分のときは区役所に現金で支払いにいくようにしているのだ。
今日はそういう気分の日。
スーツ姿の出勤途中と思われる職員さんたちが区役所にまばらに吸い込まれていく。「私が職員になっても遅刻することはないだろうな」などど人の流れを眺めていた。
私は8時半に区役所に足を踏み入れ、納税処理ができる収納課の窓口へ。問題なく支払いをして終了。なんのことはない。買い物にきて何も持って帰らないような、そんな感覚。ただ、場所が役所ということが大切なのだ。ちょっとばかりの非日常感を味わえた。
支払いを終えたらいつもの散歩コースではないが、カフェに向かう。雨も降っているし、遠回りする気にもなれない。一直線にカフェだ。
今日は朝の定食を食べていないので、モーニングを頼む。
パソコンを開いていると、代わり映えのしないトーストとゆで卵が置かれた。名古屋と比べると見劣りするが、これでも十分だ。ちょうど8分目程度に納まる。
私は作業で必要になる道具を机の端に避けて、トーストに手を伸ばした。いつもと同じ味。厚めのトーストにバターが塗られてこんがり焼かれている。美味しいけど、人に勧めるほど「うまい」というわけではない。家でも簡単につくれるような本当によくあるトーストの味。
続いて茶色い殻で覆われたゆで卵に手を伸ばす。
机の角に衝突させて殻にひびを入れる。周りになるべく迷惑にならないように、こつんこつんと。そのひびを剥がして殻を剥いていくのだが……。剥きづらい。こまめに殻が割れてしまうし、身と皮がしっかりとくっついていて白身が持って行かれてしまう。
後半はうまくむけたが、前半はボロボロ。凹凸のひどいゆで卵が姿を現した。
私はゆで卵を2口で完食して、すぐさまスマホを手に取った。
調べる内容はシンプル。
『ゆで卵 殻』
どうやら殻をうまく割る方法は『茹で方』と『剥き方』に大別されるようだ。
『茹で方』は私が関与できない領域だ。カフェの厨房に入って行ってゆで卵作らせて欲しいなどと言いだせばバイト希望だと勘違いされてしまいそうだ。強引に入ろうものなら警察を呼ばれかねない。リスクしかないので茹で方は店員さんにお任せする。
となれば『剥き方』だ。
すごく簡単な方法があった。ゆで卵を机に押さえつけて殻にひびが入る程度の力で押さえつけて、転がすのだ。ただ、力加減を間違えると机にゆで卵をぶちまける結果となるので要注意。精巧な力加減が必要だ。
今日はもう食べてしまったから、また明日試してみよう。うまくいったら今後、ゆで卵はそのようにして剥こう。カフェだからまだしも、もっと高級なお店に行った時にそれをするわけにいかないから、そのケースはまた別で考えることにする。
ゆで卵の殻の綺麗な剥き方について理解した私は満足してスマホを置いてパソコンを再び開いた。
今日のエッセイは何を書こうか……。大きな窓から空を見ると、相変わらず鼠色の空が一面に広がっている。雨は止んだようだが、いつ降ってもおかしくないような気がする。
アイスティーを一口含んで、剥き終わったバラバラのゆで卵の殻を見つめる。
ゆで卵に関する知識を一つ得た私も、一皮剥けたのだろうか。
きんぴら




