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80/1994

80_秋刀魚を食す秋

おはようございます。きんぴらです。


——


 私は魚を食べている。


 健康診断で善玉コレステロール値が低いという診断を受けてからというもの、動脈硬化に怯える毎日。真剣に魚と野菜を摂取するようになった。


 そして大いに増えている体重を減らすべく、炭水化物も制限するようになった。運動は散歩とストレッチしかしてない私にとって、炭水化物の摂取は肥満に直結する。


 それにより私が普段食べるものは焼き魚、煮魚、野菜、卵、梅干しに制限されている。大好きなから揚げはお預けだ。体の方が大切。


 それにすぐ満腹になるので、おいしい魚を食べて満腹にしておけばそれほどから揚げを欲することはない。実際もう3週間ほど食べていないがコンビニでから揚げを見ても買おうとは思わない。安定している。


 魚はいつも定食屋で頼んでいたのだが、炭水化物を控えるため定食屋もやめた。そう、俗にいう『自炊』というやつだ。


 私は自炊が好きではない。部屋に匂いがつくし、台所が汚れるし、洗い物も増える。面倒だ。だが、抑制する以上はある程度覚悟しないといけない。惣菜で魚を買ってきても良いが、温めるなどの手間は必要だ。温めるためには電子レンジを使うにしろ、フライパンを使うにしろ、洗いものや掃除する箇所は増えてしまう。自炊だろうが惣菜だろうがそれなりの手間は発生するのだ。


 私はスーパーに行った。赤色の買い物かごを入り口で手に入れて惣菜コーナーをうろつく。黄金色に揚がったから揚げ。衣が立っていて食感が良さそうなトンカツ。美味しそうだ。だが今は動物性脂は避けたい。


 私はわずかに動いた食指を押さえつけてさらに惣菜コーナーを進む。だがそのまま野菜コーナーに行き着いた。そこでいつも購入する90円程度のコールスローサラダを買い物かごに入れて、来た道を戻る。


 こうしてみると、明らかに肉の惣菜が多い。結局魚は惣菜コーナー開始地点にしかなかった。あるのは焼き鯖と焼き秋刀魚。鮮魚コーナーにいけば鮭や鯵もあるのだろうが、ここで再び手間について考えた。


 焼けている方が調理工程が少ないはずだから、選択肢は減るものの惣菜で決めてしまおうと思った。鯖は少し前に定食で食べた。秋刀魚は旬の食材。秋刀魚を選択するのに時間はかからなかった。


 選んだ秋刀魚は頭も尾びれもついている丸焼きの秋刀魚。長さは35cmくらい。胴の部分に斜めに切れ込みが入っている。焼いているときに丸まらないようにするためだろうか。


 帰宅して私は早速秋刀魚を電子レンジで温めた。惣菜のパックから皿に移してから電子レンジに入れて、温めるスイッチを入れる。洗い物が増えると考えていると、電子レンジから破裂音が聞こえた。気になって前面のガラスを通して中を確認すると、皮の部分が膨れ上がって空気が抜けるように破裂していた。……大丈夫。食べるぶんには影響ない。


 1分間の温めが終わった合図を電子レンジが出す。


 私は電子レンジの扉を開いた。秋刀魚の焼けた匂いが香る。少し脂っこくて、塩っ気のある香り。食指を動かされる。美味しそうだ。……ただ部屋について欲しくない匂いだ。これが嫌なのだ。換気扇を強で回す。


 秋刀魚をテーブルに乗せると、炭酸水をコップに入れて、テレビをつける。ニュースが流れている。なかなか明るいニュースはない。女性軽視発言をした議員がいる。コロナの感染者はたくさん。ふむふむ。


 私は鯖に箸を伸ばす。湯気が立ち上るその身を箸で割る。さらに湯気が上る。少し茶色がかったその身は脂を宿して私の食欲を駆り立てる。


 口の中でほろほろと身が崩れて焼き魚独特の香ばしい香りが鼻を抜ける。苦味を帯びた旨味が口の中に広がる。美味しい。


 私は器用に骨を避けて秋刀魚の身を堪能した。旬の魚だけあって本当に美味しかった。また食べたい。洗い物は増えるが、これほど美味しいのであれば多少の手間は厭わない。


 私は流し台で皿と箸を洗い始めた。秋刀魚の頭や骨をまとめてゴミ袋に入れて強く縛る。臭いものには蓋を。


 つけっぱなしのテレビからニュースが流れてくる。


 「室伏広治さんがスポーツ庁長官に就任しました」


 気づけば苦味は炭酸水の爽やかさでかき消されていた。

 部屋の匂いは換気扇のおかげで薄れている。


 私は電子レンジを見てふと思った。


 「あ、電子レンジも掃除しないと」

 

 明日も頑張れそうだ。




きんぴら



 

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