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50/1994

50_「お待ちください!」

おはようございます。きんぴらです。


私は散歩が好きだ。


 1日に必ず少なくとも数分は散歩をするようにしている。8月下旬、私はいつもの散歩を終え、スーパーで弁当を購入して帰路についていた。カフェを除けば、最近は外食を控えているので、もっぱら弁当が多い。コンビニで買うことは少なく、少し値は張るが美味しい近くのスーパーの手作り弁当が多い。


 時刻は16時頃。まだ日は高く、夕方というには早い。散歩だけで汗ばむほどに暑い。


 交差点を左に曲がると、犬を散歩している老人が前を歩いていた。禿頭を輝かせて涼しそうなTシャツを着てハーフパンツを履き、サンダルをつっかけて、一癖ありそうな歩法で私の前を歩いていく。進行方向は同じだから、顔は確認できない。


 犬がその老人より前を歩いていて、なんなら犬に散歩されているのではないかと思ってしまう。


 私と老人との距離は5m程度。私は歩くのが相当早い。足早な人が多い新宿駅を歩いていても、私より早い人を見かけることは少ない。駆け足で私を追い抜いていく人はいるが。そんなスピード狂の私だから、その老人を追い抜くことはわけもない。一車線の道路だから追い抜くにしても何の問題もない。


 そんな計画を立てていると、老人の連れであるかわいらしい茶色のトイプードルが電柱におしっこをした。日常的なその光景に私は何も思わない。


「かわいい犬がおしっこをした」


 それだけだ。


 トイプードルがおしっこに要した時間はおよそ1秒。一瞬だった。トイプードルは用を足してすっきりしたのか先を急ごうとする。そして私はその間に距離の詰まった禿頭の老人を追い抜かそうとする。


 そのあと、その老人が思わぬ発言をした。


「お待ちください!」


 私は思わず、振り返ってつい今しがた追い抜いた老人をみた。老人と目があったが、すぐに老人は視線をトイプードルに移し、


「水かけるから、お待ちくださいね〜」 



 私は無視して歩を進めることにした。そこからの帰り道は考えることがたくさんあった。


——なぜあの老人は犬に丁寧語を使うのだろうか。


——あの老人は俺に見られて恥ずかしかったのだろうか。


——実は本当に犬に散歩されているのだろうか。


 これらの考えからさらに派生されてストーリーが広がっていってしまう。やめてくれ、変なローファンタジーを思いついてしまう。絶対書かないのに。


 ……いや、時間ができたら書こうかな。ギャグは書いたことがないし、人を笑わせられるようなものが書けるならかっこいいからチャレンジしてみる価値はある。だがそれは今書いているのを書き終わったらだ。もっとネタに困っている時に出会ったらよかった。



 ……そうなると、実はあのじいさんは小説のネタをくれる天使だったのかもしれない。


 ではあの天使をつれていた犬は……神!




きんぴら

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