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42/1994

42_財布

おはようございます。きんぴらです。


私は今使っている財布が好きだ。


 財布に限らず私は物持ちが良い。洗濯機は洗濯槽洗剤を駆使してもう10年ほど使っている。同じくテレビも10年選手だ。録画機能付き、ブルーレイプレーヤー搭載、しかも画面が回転する機能付きで当時の最先端だった。名古屋のLOFTで見つけたおしゃれな本棚も10年ほど経っている。


 そんな中、財布は少しだけ短く8年使っている。だが逆に言うと先ほど挙げた長期絶賛使用中の家具類は家に置いておくものだ。それに対して財布はいつも持ち歩くもの。要するに消耗が激しい。それゆえ、一部表面が剥げていたりする。機能面では問題ないのだが。


 この財布に対してどうして愛着があるかというと、社会人になって初めて買い換えた……ということだ。財布といえば、ブランドものを想像する方が多いのではなかろうか。ルイヴィトン、グッチ、ブルガリ……男性でいうとこんなところがメジャーだろうか。どれもこれも素晴らしい財布だ。

 が、私の財布は安価だ。1万円だったと思う。惚れて購入に踏み切った。しかも東急ハンズで。何が気に入ったかというと大きく2点。


 1点目はデザイン。

 真っ黒な表面に、黄色で簡素な1センチ程度の棒人間がたくさん書かれている。それらが手をつないでいるのだ。その中にジャンプしている赤色の棒人間が一人。黄色の棒人間は手を繋いでいてみんな似たり寄ったりだが、一風変わったアクションを起こしている青色の棒人間が二人。


 私はこのデザインを見たとき猛烈に心が高揚して財布を手に取った。なんだか、小学生の頃の記憶を呼び起こされたような、そんな懐かしくて楽しい気持ちにさせられた。


 2点目は生地。

 財布といえば皮や布が多いが、この財布はゴム製。しかもブリヂストンの車のタイヤと同じ素材というではないか。最初に触ったときに手感触(てざわり)で驚いた。今まで使ってきた財布とは全く違うのだ。確かそのときは8万円くらいのグッチの財布を使っていたが、正直手触りに関しては1万の財布に軍配が上がった。


 デザインで手に取らせ、触覚で客を落とす。


 私はまんまと落とされ、その日からその財布を使うようになった。それから8年も経つのかと思うと懐かしいものだ。


 そして、この財布を持ってから今まで一度もなかったことが起こった。高校のとき、彼女からグッチの財布をプレゼントされて使っていたときも、その後財布を買い換えてグレードアップしたグッチの財布を使っているころも一度もなかったことが——。


 ある日、私が名古屋駅の新幹線を待つ間に一人で構内のカフェに行ったときのことだ。注文して金額を告げられ、財布を出したら店員さんが声をかけてくれた。


「その財布、すごく可愛いですね」


 そう、その店員さんこそ今の嫁……といったロマチックな話ではないが、この財布を見て声をかけられたのはこの一度だけではない。私の記憶が正しければ3度言われている。となると、言わないだけでそう思ってくれた人が他にもいるという可能性が高まる。


 この財布を買ったらあなたもモテ男……のような週刊誌の終盤の商品案内ページのようになってしまったが、そうではない。


 自分の「好きなもの」「かっこいいと思うもの」「可愛いと思うもの」、それが他の人にも共感を与えるようなものであれば会話も弾むし、思わぬ出会いがあるのも実体験したのだ。


 私にも、周りからも好かれる財布を買い換えられるだろうか。私に多くの経験……主に女性から話しかけられる体験だが、それを与えてくれたこの財布を。



 ……まだ長い付き合いになりそうだ。



きんぴら

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