182_ウマ娘 サイレンスズカの凄さ
おはようございます。きんぴらです。
今日は2021年1月17日。日曜日だ。
珍しく夕方にこのエッセイを書いている。緊急事態宣言も出ていることもあって、今日の外出はコンビニに一度行っただけ。今日は散歩にも行っていない。
ルーティンである散歩をせずに何をしていたかというと『サイレンススズカ』について調べていた。
『サイレンススズカ』とは『ウマ娘』に登場するメインキャラクターの一人。実際にこの世に存在していた競走馬だ。
私が『ウマ娘』を好きで見ているという話は、このエッセイでもよく書いている通り。多く登場するウマ娘の中で私が最も好きなウマ娘が『サイレンススズカ』なのだ。
まず、スズカがアニメ内でどういった役所かを説明しよう。
先に言っておくが今日はネタバレ全開でいく。ウマ娘は実際の馬の一生に添えるように制作されている。ネタバレに触れずに魅力を語ることは難しい。
スズカの説明に戻るが、スペシャルウィークが主役である1期のメインキャラクターだった。
スペシャルウィークは日本一のウマ娘になるために東京にあるトレセン学園へ入学する。そこでスズカの走りに魅了され、スズカが所属するチーム、『リギル』への入団テストを受けるのだが、エルコンドルパサーに敗れて入団できなかった。このエルコンドルパサーは最後に重要な情報を書いているので、名前を覚えておいてほしい。
無念を抱いて帰路に着こうとしたところで、チーム『スピカ』の連中に誘拐されて、強引に入団を迫られるが、同日、スピカに憧れのスズカが移籍していたことを知り、スピカへ入団することを決意する。
スズカは、主人公のスペシャルウィークの憧れであり、心の支え。そして、ストーリーが進み、永遠のライバルともなる。
そんな憧れのスズカはスピカに移籍後、とてつもない成績を残し始める。出るレースで1着を取り続けるのだが、そのレース展開がすごい。逃げ馬といって、序盤から飛ばしに飛ばしてリードを奪い、そのリードを詰められる前に1着でゴールするのだが……スズカは後半も加速し、最強と謳われるエルコンドルパサーを以ってしてもスズカに追いつくことができなかった。
そして11月1日。秋の天皇賞で、最高潮の観客の前に最高のコンディションで登場したスズカはゲートが開くと同時に猛スピードで他の馬を置き去りにかかる。圧倒的なスピードでその差は1馬身、2馬身とあっと言う間その差は10馬身を超えた。
1000メートルのラップは57.4秒。とてつもないスピードだ。
だがその直後——、競馬界、いやウマ娘界で語り継がれる悲劇が起こる。
第3コーナーで、スズカの左足が変な動きを見せる。風のように走っていたスズカは左足を守るようによろけながら慣性の力に任せて徐々にスピードを落としていく。その横を、他の競走馬たちが追い抜いていく。
スペシャルウィークは柵を飛び越えて、猛スピードでスズカの元に向かい、柵にぶつかるかる前に体で受け止める。
スズカは左足首を骨折していて、病室でこんなやりとりがトレーナーと交わされる。
「骨折ってことは……治りますか?」
「もちろん」
「走れるように?」
「ああ……まぁ」
「レースに出て、全力で走れるようになりますか!?」
「分からない……」
するとスペシャルウィークが言うのだ。
「治ります!」
何の根拠もないだろうに。むしろ、トレーナーが口ごもっているのだから、直らないのではないかとスペシャルウィークが思ってもおかしくないだろう。それでも治ると言い切ったのは、スズカと一緒に走ると約束していたからだ。そのためなら、どんなサポートもすると言う。それほど、スペシャルウィークにとってスズカと一緒に走るという夢は大切なものなのだ。
そして第7R(7話)の最後は、スペシャルウィークがスズカにこんな言葉をかけて締め括られる。
「これからも一緒に! 走るんです!」
スズカは厳しいリハビリに耐えて、また怪我をするのではないかとの恐怖にも打ち勝ち、第11R(11話)にてオープンレースで復帰を果たす。そこでも彼女の走りは健在で、逃げ馬での勝ち方ではないが無事1着をもぎ取る。
そして夢のアメリカ遠征に向かう。
これが、アニメ『ウマ娘』で描かれている『サイレンススズカ』だ。私の最も好きなキャラクター。
私は知りたくなった。アニメの『サイレンススズカ』は大好きだが、実在した『サイレンススズカ』はどのような存在だったのだろうか。私は競馬にはこれまで興味を持ったことがなかったが、アニメ経由で初めて興味を持って調べてみた。これが今日の正午ごろのことだ。
実在したサイレンススズカは牡馬だ。別に性別は重要ではない。ウマ娘なのだから、娘に擬人化していて当たり前。
まずはWikipediaで軽く調べて、そこで愕然とした。少し心が落ち込んだが、そのまま彼のレースを見てみることにした。4時間ほどかけて全てのレースに目を通した。
サイレンススズカは、アニメ通り、すごい馬だった。
序盤から前に前に出て、さらに後半でも加速し、他の馬の追い上げをものともせず逃げ切る。最高にかっこいい。だが、もちろん全戦全勝ではなく前半出遅れて馬に囲まれて負けることもあったり、長距離になるとスタミナの問題で負けたりもした。
だが、一生を終えるまでの最後のレースを除き、6連勝を果たしている。
ここに彼の大きな転機がある。
実は、香港国際カップに出場した時、彼に乗ったのは有名な騎手である、武豊騎手だった。このレースは勝てなかったものの、武豊騎手はサイレンススズカのことをこう分析した。
「この馬には押さえない競馬が向いている」
サイレンススズカはデビュー戦も抑えることなく序盤から先頭に立って1着でゴールしている。だが、それ以降のレース展開は序盤は抑えて、後半の直線で一気に抜き去る戦法で調整に入った。それがサイレンススズカの良さを無くしてしまい、本領を発揮できていなかったようなのだ。
武豊騎手はサイレンススズカへのコンビを熱望し、その後サイレンススズカとレースに出るようになった。先行逃げ切り。『抑えない競馬』で。
1度だけ同じレースですでに契約している馬がいたため、サイレンススズカは別の騎手が乗って、武豊騎手とサイレンススズカの対決があったようなのだが、武豊騎手が見抜いた『抑えない競馬』が猛威を振るい、サイレンススズカが1着でゴールした。
結果、香港国際カップで武豊騎手と出会ってからのサイレンススズカは負け無し。そしてその走りは、以前に比べて伸び伸びとしている。本当に楽しそうに走る馬だなぁと思った。
武豊騎手は最後の直線でも鞭を使わないこともよくあった。鞭を使わずともサイレンススズカは後半も伸び伸びと走っているのだ。涙が出た。
そして1998年11月1日。秋の天皇賞がやってくる。
アニメ同様。正確には実際のレースを模してアニメが作られているのだから、逆のような気がするが、私の知った順で表現させてもらおう。
アニメ同様、サイレンススズカは序盤から飛ばしまくり、他の馬との差をグングン広げていく。
ものすごいスピードだった。解説者がスタート直後の順位を話している間に、10馬身程度の差に広がっていた。霧で見づらい映像なのだが、それでも一番前にいるサイレンススズカが一番前にいるのはわかる。圧倒的な差だったから。
それでも——、アニメ同様、競馬界で語り継がれる悲劇が起こる。
サイレンススズカの体が一瞬よろけたと思ったと瞬間、左前足を庇うように慣性に任せてスピードを落としていくサイレンススズカ。武豊騎手はサイレンススズカから降りて、前足を庇うサイレンススズカを宥めているようにも見えた。
これを最後にサイレンススズカの映像はない。
なぜなら、サイレンススズカの左前足は粉砕骨折していたからだ。もう2度と走ることはできなかった。
あんな楽しそうに走っている馬を私は見たことがない。走らされているのではない、好きで走っているのだと感じさせる。特に武豊騎手に変わった後のサイレンススズカの走りは、真っ直ぐ、早く、気持ちよく走っているように見えた。
そんな馬から、走るという行為が欠落してしまった。私はWikipediaを見ながら涙を流してしまった。アニメで大好きになったサイレンススズカは、その生い立ちも実際のレースでも私を魅了し、気づけばファンになっていた。
そして、走れなくなったサイレンススズカは同日中、安楽死となった。
4歳。早すぎる死だ。
これを書いていて、思い出したらまた涙が瞼を超えてきた。目が霞むがもう少し頑張って書きたい。
これを踏まえてアニメを振り返りたい。
アニメではサイレンススズカは無事復活を遂げて、アメリカ留学の夢を叶える。
実在した時のスズカはこの時、走ることはできず安楽死していた。病室でのトレーナーとスズカのやりとりが頭を過ぎる。
「骨折ってことは……治りますか?」
「もちろん」
「走れるように?」
「ああ……まぁ」
「レースに出て、全力で走れるようになりますか!?」
「分からない……」
するとスペシャルウィークが言うのだ。
「治ります!」
「これからも一緒に! 走るんです!」
制作陣はこの第7Rが完成したとき、きっと泣いていたと思う。サイレンススズカは多くの競馬ファンに惜しまれてこの世を去った。涙を流した人も多かったという。きっと、制作の人たちにもこの馬のファンがいたはずだ。
そして、アニメは原作をうまく踏襲してアレンジしている。
例えば、チーム『リギル』の戦略ではない、先行逃げ切りの作戦をチーム『スピカ』のトレーナーがスズカに教えて、結果としてスズカの成績は上がった。
これは武豊騎手が戦略を変えたことに由来しているのだろう。
例えばチーム『リギル』のトレーナーが言うのだ。
「他の馬娘なんて関係ない。まるで全レースがタイムトライアルのようだ」
これはまさにその通りで、実際のサイレンススズカの走りはそのようだった。他の馬にはめもくれず、ただひたすらに真っ直ぐ、先頭を走る。その様子はタイムトライアルだった。
例えばチーム『スピカ』のトレーナーが言うのだ。
「あいつは好きなように走らせるのが一番なんだよ」
そしてスズカは毎回レース前に言うのだ。
「楽しんできます」
これも、武豊騎手の作戦変更にまつわる話だ。『抑えない競馬』でサイレンススズカが本当に楽しそうに走るようになった。生き生きと、伸び伸びとしたあの走りは、まさに好きなように走っていると表現がしっくりくる。
ここまで踏襲できるのは、サイレンススズカへの大きな愛があったからに他ならないのではないか。
ウマ娘のおかげで本当にすごい馬がいたと知れた。
この事実を知った上で、もう1度、第7Rと第11Rを見て欲しい。私は涙が止まらなかった。寂しく、悲しく、残念な気持ちの下に、大きな尊敬の念があることに気づいた。
サイレンススズカ。本当に尊敬に値する馬だ。
ちなみに、序盤で書いたエルコンドルパサーを覚えているだろうか。エルコンドルパサーはランキングでも世界指折りの評価を受けている競走馬なのだが、なんとその生涯戦績は1着と2着のみ。3着以下になったことがない、とてつもない馬。
日本での競馬を経て、海外に主戦場を移したのだが、日本で1度だけ1着になれなかったことがある。そのとき、1着になったのが武豊騎手が騎乗したサイレンススズカなのだ。サイレンススズカが左前足を粉砕骨折する一つ前のレースが、エルコンドルパサーとサイレンススズカが名勝負を繰り広げた、毎日王冠だった。
サイレンススズカの凄さが際立つエピソードではなかろうか。
ウマ娘は私の中で好きなアニメTOP5に躍り出てもおかしくないほどの作品になっている。特にサイレンススズカはキャラクターとしても魅力が溢れている。そのキャラクターの元になった、
実在したサイレンススズカをいつか墓参りしたいと思う。
北海道にあるので、遠いし、時間もかかるが、本当に行ってみたい。外出ができるようになって、暖かくなったら行こうと思う。
さて、今『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』が放送されている。今度の主役はトウカイテイオーだ。こちらも超有名競走馬。1話、2話見てすでに2回泣いている。
私の感情移入の異常さもここまでくると天晴れだ。
競馬が好きな人は、多くの知っている名馬が出てくるので楽しめると思う。競馬に興味がなくとも、アニメが好きな人は圧倒的スピード感や感動的なシーンに心が動かされるだろう。オススメなので、ぜひ一度見て欲しい。
今日はサイレンススズカを調べて、涙を流して疲れたので一度仮眠をとって今はもう夜。書き始めたのは夕方だったのに。仮眠のおかげでまだ元気、これを書き終えたら、創作の方を頑張ろうと思う。
実在したサイレンススズカが、自分のやりたい走りを楽しんでいたように、私も自分のやりたいことを楽しもうと思う。アニメのスズカが、復帰して夢を叶えたように、私も夢に向かって一直線に進もうと思う。
それでは、みなさん、今日もがんばっていきまっしょい!
きんぴら