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14_焼肉定食

 今日起こったことをそのまま書くぜ……


 私は焼肉が好きだ。


 なぜ好きかと言われれば「脂が——、」とか「成分が——、」とか「メリットが——、」とか小難しいことは言わない。


 肉もうまいし、タレもうまいから。


 これだけだ。


 ちなみに高校生時代に2年間、大学生時代に2年間、計4年間の青春を焼肉屋でバイトをして過ごしていた。高校生の夏休みの研究では焼肉の部位に関する研究を提出するほど焼肉に興味津々だったものだ。


 ちなみに一番好きな部位はロース。



 そんな焼肉好きの私は頻繁に焼肉屋さんに行くのだが、某ウイルス様が気になってここ最近焼肉屋には足を運んでいなかった。しかし、今日約3ヶ月ぶりに焼肉屋に行った。


 というのも、とある焼肉屋がランチをしていて店内を覗き込むと一組しかおらず窓際にさえ座れば三密とやらにはならないからだ。


 ランチとはいえ焼肉は焼肉。行ってみるか。


 となったわけだ。



 窓際に腰掛け、日本語片言のおばちゃんが注文を取りにきた。


 私はランチメニューを眺めて、即座に800円の三種盛定食を頼んだ。他にもピビンパ定食、牛タンシチュー?定食なるものがあったが、とにかく焼肉がしたかったのだ。


 

 待つこと5分ほど。客が少ないこともありすぐ出てきた。


 いいこっちゃ(二つの意味で)。



 お盆に乗ってきたのは、白米、肉三種(タン、カルビ、ハラミ 計9切)、ナムル三種盛り、お吸い物、サラダの小鉢。


 十分すぎる。


 肉はそれなりにおいしかった。値段が値段だし、卸売店でもないので、肉としては高級なものではない。妥当な味だったと思う。


 白米はどこで食っても味わからないので全部うまい。


 ナムル三種盛りは美味しくなかった。特にキムチの味付けが物足りない。


 サラダはキャベツメインなのでまずいわけがない(キャベツ大好き)。


 そして特筆すべきはお吸い物。中の具からして即席のものではないのが見て取れる。長ネギと人参なのだが切り方にも味がある。ぶつ切りなのだ。軽い塩気と野菜の温かさを感じる。抜群に美味だった。


 そんなこんなで、ナムル以外は満足度が高く。幸せな気持ちで会計を済ませた。


 テーブルで1000円札を渡した。


 男の定員が札を持って行って、返ってきたのはレシートのみ。



 「あれ? 三種盛り定食って800円ですよね?」


 「え? 1000円ですよ」


 私はメニューを取り出し、三種盛り定食を指差した。


 「だってほら、800円て書いてるじゃないですか。ご丁寧に『税込みの値段です』とまで」


 するとその定員は、その二つ上のメニューを指差し、


 「お客様が食べたのは『牛三種盛り定食』ですよ」



 ——衝撃が走った。『鳥三種盛り定食』と『牛三種盛り定食』があったのだ。


 『牛』と『鳥』の文字はフォントの色が背景と類似しており、メニューのフォントサイズよりかなり大きく書かれている。気づかなかった。


 私は『牛三種盛り定食』を頼んだのか?


 記憶を辿るがそんな一言を正確に覚えていない。


 しかし、私はそもそもその存在に気づいていない。その状況で『牛三種盛り定食』などを口走ることは出来ないはずなのだ。


 可能性があるとすれば、店員が単純に牛三種盛り定食と間違えた。もしくは、『牛三種盛り定食』か?と聞き返され、私がそれに同意してしまったか。


 掲題『コーヒー』でも軽く書いたが、私の注文をあまり見ない。


 それが仇になった。よく似たメニューが二つあったとすれば、事前に私でも気づけたはずだ。



 どこで間違いが起こったか確認する術はないが、1000円のメニューを食べてしまったのであれば、払わざるを得ない。文句を言うのであれば料理が出た時、食べる前に言うべきだ。検収を怠った私に反論の余地はない。


 ……私の満足度はそこで一気に下がった。


 たかが200円。金額の問題ではない。


 

 ……だが、もう私は知っている。あの店に『鳥三種盛り定食』と『牛三種盛り定食』があることを。似て非なるメニューがあることを——。


 私の満足度を下げた心ばかりの復讐だ。


 明日もあの店に行ってやる。


 そして言ってやるのだ。


 「『鳥三種盛り定食』ですよ。『牛三種盛り定食』じゃないですからね」


 800円の売り上げを献上するとともに——


 今に見てろ! 絶対に『鳥三種盛り定食』を注文してやるからな!



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