おっさんキラーウイルスのある世界
おっさんキラーウイルス、対抗薬の無いこの脅威のウイルスは、名前とは裏腹に女性の感染率が99.99999%である。
ただ、昔に悲惨な事件が起きた為に、今は女性の保有率100%としか公表されていない。
このウイルスは女性には空気感染するのである。
そして特に症状が出る事は無いと思われていた。
そしてこのウイルスの男性への感染経路は不思議な事に性交渉のみなのである。
ただ一度感染すると致死率100%なのがこのウイルスの脅威なのだ。40歳以上は感染後生存日数が3日以内で、それ以下の年齢では3日以内死亡率は約10%でそれを過ぎると政府に管理され40歳頃に加齢臭が急に酷くなる。それが死の合図である。
この事が名前の由来らしい。
「三組の加藤君楽園送りになったらしいわよ。」
吉田香澄が話しかけてきた。
「という事は3日前の事件の被害者は加藤だったんだな。可哀想に。」
金本健二が答える。この2人は恋人同士である。
「加害者は43歳の処女だったらしいわね。」
「ああ、楽園巡りしたくないって逃亡していたらしいね。」
30年前から40代女性の性犯罪が増加したらしい。健二にしてみれは、生まれた頃からそれが普通だったから増加と言われてもピンとこない。
最近の研究で性交渉した事の無い女性はおっさんキラーウイルスの影響で40歳を過ぎた辺りから性欲が増加し続け最終的に歯止めが効かなくなり犯罪に走るらしい。
「なんで楽園巡りから逃げるのか、理解できないね。」
「そう、私は少し気持ちは分かるかな。きっと心から愛している人がいたのだわ。」
香澄は悲しそうな表情になる。
「じゃあ尚更、楽園巡りをするべきだったんじゃないか。」
「複雑なのよ。聞いた話だと、楽園の男と身体を重ねるうちに愛が芽生えて彼氏と別れたとか、逆に彼氏を襲おうとしてしまって、逃げられたとか色々あるのよ。」
ガールズトークの内容は健二には刺激が強かった。
「そうよね。男の子は保健の授業無いものね。これは内緒の話なんだけどね。彼氏が楽園送りになったのに美菜子どこか喜んでる様子なのよ。いつも逢えないのは悲しいって言ってるけどね。ここだけの話楽園巡りって指名も出来るらしいの。」
その日から香澄のスキンシップが激しくなったのだが、知識の無い健二にはそれがいかに危険な事か分からず、喜んでいたのだった。