犯人、見つけました
ステータスについて、僕にはもうひとつ気づいたことがある。
今度はさっきの逆。指を上に動かして、下にスクロールさせると――
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筋力 67 敏捷 60
知性 67 器用 54
<料理特性><怪談耐性>
<夜目弱視><睡眠短縮>
<偏頭痛持><甘味特化>
<動物愛好><手足冷性>
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なんか、いっぱい出てきたよ。
この下にも数十という四字熟語が並んでいる。これってもしかして技能みたいな?
ほとんど、日常生活にかかわりそうなものばっかだけど。
<偏頭痛持>とか<手足冷性>、こんなのもスキル扱いなの? いや、確かに偏頭痛持ちで冷え性ではあるんだけど。
つらつらスクロールさせていって確認すると、くだらないものも多かった。
<現実逃避>とか<不幸体質>とか、なにそれ。その後ろ向きな。
最近のになると、<苺恐怖症>。うん、ごもっとも。
<成長未熟>とか<羞恥減衰>とかは、消せないの? 結構、マジで。未熟も減衰もダメでしょう。
生きていく上で、なにかにつけて増えていったんだろーなーと、なんか人生を振り返っているみたいで感慨深い。
ただ、その中で、妙に他から浮いている物を見つけた。
<位相転移>と<転移特典>。気になる。すごく気になる。文字面が。
(内容がわかるといいんだけどなぁ……)
僕がスキル名が表示されている部分をつんつん突くと、いきなり別ウィンドウが開いた。
なんと、ポップアップ機能!? なんか、やたら高機能すぎないかい、きみ?
でも、ありがたいことには違いない。
さっそく調べてみよう。ぽちっとな。
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<転移特典>
チートボーナス。
体力1000倍。
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まさに、まんまだよ。
意味わからないけど、無限の体力の正体はこれか!
次に、<位相転移>だけど。
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<位相転移>
特定の場所へ転移する。
使用魔力 1
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犯人、いたー! おまえのせいか、こんちくしょー!
物凄くたいそうな性能なのに、なんで使用魔力が1なのさー!
きょうび、ゲームの最弱の火の玉魔法だって、MP2くらいは使うでしょ!?
1じゃなかったらー! せめて2だったらー! こんな目にはー!
こんな異――外国の見知らぬ土地に飛ばされてしまうこともなかったのにー! うあー!!
血の涙が流れ出そう。ってか、もろもろ出そう。
「ねえ、そろそろ本気で大丈夫? 自分のステータス視てるんだろうけど、そんなに百面相して悶えちゃって……」
僕の奇行に、心配したレニさんが寄ってきた。
うん、自覚はある。でも、もうちょっと哭かせて。うああー!!
……情緒不安定な状態が5分ほど過ぎ、僕はようやく落ち着いてきた。
スキルに<情緒不安>とか増えてそうな気がするけど、怖いので確認しない。
「ごめんなさい、落ち着きました。最近辛いことが多くて」
「そうみたいだね。まだ若いのに……頑張れ」
励まされた。
でも、悲観要素ばかりではない。衝撃はでかかったけど、当初の想定どおり、僕の持つ力が関係していたことは、これではっきりした。
逆説的には、魔力が1に回復しさえすれば、もう一度このスキルが使える。つまり家へ帰れるわけだ!
現金なものだけど、ちょっと気が楽になった。
それにしても、こういった事情を抜きにすると、ステータスって面白いね。
今まで、たくさんの人のステータスを視てきて、こういう楽しみ方をしてこなかったのは損したかな?
あ、レニさんもステータスが視えるんだから、見せっことか面白そう。
「ちょっとレニさんのステータスも視ていいですか?」
「え?」
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レベル31
体力 563
魔力 5
筋力 125 敏捷 182
知性 98 器用 302
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「すごい! レベル31もあるんですね!」
さすがは冒険家。遺跡や秘境を探検して、危険生物とも渡り合ったりするんだろうね!
村長さんには敵わないけど、充分すぎるほどすごい。
特に器用さが300越えてる人、初めて見た!
「へ? なんで、わたしのレベルがわかったの?」
なぜか、レニさんが目を丸くして驚いている。
「は? それはもちろんステータ――」
と言いかけて、僕は口を噤んだ。
この反応はおかしい。もしかして。
「って、いやだなぁ。冗談ですよ。レニさんがさっき、自分で言ったんじゃないですか~。僕のレベルが云々のくだり辺りで!」
「……あれ、そうだっけ。なーんだ、びっくりした。冗談きついよ。本当に他人のステータスを覗き視れるのかと思って焦っちゃったよ。いくらなんでも、それはないよねー。個人情報だだ漏れになるし」
――セーフ!
僕は心の中で喝采していた。
危なかった。そういう雰囲気だったから、止めてよかった。
なるほど、そっかー。他の人のは視えないのかー。これだけは僕の固有能力みたいだね!
ん? 嬉しそうにしている? ソンナコトハナイデスヨ。
それにしても、レニさんのステータス情報に少しだけ指が触れて、スクロールしたときに視えたんだけど……
レニさん、自己紹介では20歳と言ってたけど、表示の数値は24――いや、止めとこう。これ、確かに危険だね。いろんな意味で。
口は災いの元。沈黙は金成り、ってね。ちゃっくちゃっく。




