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河下りをしてみましょう

 朝、目が覚めた。


 焚き火の火は消えてしまっている。

 魚を食べ終え、食後の一休みと横になったところで、どうやらいつの間にか本格的に寝に入ってしまったらしい。


 岩場の硬い寝床でも、慣れてしまえば眠れるものだね。

 むしろ、普段より熟睡できた感がある。

 たった3日で、僕もずいぶんたくましくなったものだよ。


 欠伸をして上体を起こし、ふと自分の爪先を見ると――巨大なワニに、足を齧られてました。


「!!!???」


 起き抜けに大混乱!

 どうりで、足元がむず痒かったわけだ。って、冷静に分析している場合じゃない。


 ワニって確か、獲物を水中に引きずり込んで、窒息させるんじゃなかったっけ!?


 いくら無尽蔵の体力でも、窒息はまずいよね。なにせ、僕は体力以外は凡人レベル。

 この体格差じゃあ、一度引きずり込まれたら、アウト確定。ゲームオーバー。


「あわわわわ」


 咬まれてるのはどうってことないけど、抵抗虚しく地味に河のほうに引きずられていっている。

 鼻っ面を残った足でげしげし蹴っても、効いてもいない。


 朝っぱらから、こんなスリリングな目覚めはいらないからー!


「キュイイー!」


 見上げると、上空を旋回するしろの雄姿。


 僕のピンチにしろは飛来し、無防備なワニの背中目がけて、炎のブレスを吐きかけた。

 たまらず僕を離し、水の中に逃げ込むワニ。


 脅威は去った。

 嬉しそうに尻尾を振って戻ってくるしろの頼もしさに、思わず惚れそう。♂か♀かは知らないけど。


 それにしても、油断も隙もないね。

 まさか、河側から寝込みを襲われるとは。


 もし、陸で獣に襲われたら、河の中に逃げ込めばいいやとか思ってたのに、逆にワニの巣に飛び込む危険もあったわけだ。居るなら居るで、早く言ってよね。ったく。


 今後は河沿いに下流へ向かおうとも計画していたのに、とんだ誤算。

 飲料水の確保はもとより、これでいつでも水浴び自由と思って喜んでいたのに。


 まあ、河幅はかなりのものだけれど、河岸は浅いので、今みたいに寝てるんでもなければ、さすがの僕も気がつくとは思うけど。

 でも、命に関わる危険性は、なるべくなら避けたい。今だって、しろがいないとやばかった。


 陸と河、両方からの脅威を免れる手段なんて、そうそう都合よくはないのかな。


 河幅はかなりのものだから、大きめのボートかフロートでもあると便利そうだけど。

 いっそ、河辺の木を切って、作ってみようかな。さすがに道具がないと、無理そうな気もするけれど。


「キュイィー! キュイィー!」


 しろが前方の上空を飛びながら、鳴いている。


 なんだろ。なにかいつもと違う気がする。同じ場所で旋回して、僕になにかを伝えようとしているような……


 いや、これ。本当に伝えようとしている?

 しろは頭がいいから、可能性は大いにある。


 とにかく、あそこまで行ってみよう。


 僕がそこに辿り着くのに合わせて、しろもゆっくりと降下してきた。


 しろが着地したのは、河岸に打ち上げられた樹木の上だった。

 枝葉どころか木の根までそのままなので、おそらくは、ここより上流で地滑り辺りで河に落ち、流されてきたものだろう。

 すると原因は、もしや昨日のスコール?


 樹木は見た目にも若木で、3mほどのものが5、6本ほど。

 河べりの浅いところで、先頭の樹木が水中の岩に乗り上げて座礁し、後ろの樹木を堰き止めている。


「……これをいったい、どうしろと?」


 正解はしろが教えてくれた。


 嘴に、長い木の蔓を咥えてきている。

 昨日の釣り糸には太すぎたけど、なるほどロープとしてなら申し分ない。


 以心伝心。さすがは僕のしろ。

 僕の意向を読み取ってまでくれるとは。


 これだったら、ロープでそれぞれの木を固定するだけで、簡易でも立派なフロート代わりにはなる。

 樹木は水中に没していても、半分は浮いている状態なので、僕の力でも、充分に動かせそう。


 さすがはしろ! 頼りになる!


 ……でも。なにか身体能力だけでなく、知性も負けてるんじゃないだろうか。そこはかとなく、そんな気も。


 ま、いいか。

 半端なプライドなどサバイバルでは役に立たないので、しろに素直に感謝しておく。


 愛しているよ、しろ!

 人間だったら、求婚している勢いだよ!


 しろをハグして頬ずりすると、しろも嬉しそうに鳴いていた。


 で、河辺で水浸しになりながら、長い蔓片手に30分ほど四苦八苦して、ようやく完成。


 フロート。和名で、ザ・いかだ。


 まんまの木々を、申し訳程度に蔓で括り、繋ぎ合わせただけの代物だけど、それなりにしっかりしてそう。


「じゃあ、さっそく乗ってみよっか」


 しろを抱いて飛び移ると、しっかりふたり分(ひとりと1匹分)の重量を支えてくれた。むしろ、びくともしない。

 長い棒も用意して、いかだの上から水底を押すと、岩で座礁していた部分が外れ、おもむろにいかだは流され始めた。


 大成功!

 下流へと河の流れに乗り、いかだは順調に進み始める。


 もとから水の流れはさほど急ではない。

 スローペースでいかだは進み、ちょっとした遊覧気分。周囲の景色の移り変わりを楽しむ余裕も出てくる。


 しかも、安全面でもかなりいい。

 そのまま残った木の枝や根が水中で四方八方に張り出しているため、水底に潜む生物の接近を邪魔して、容易に近づけないとくる。これはいい。


 優雅ないかだの旅の始まりだ。


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