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《最強》になりえない彼が、《最恐》と呼ばれる理由  作者: 岡部雷
季節は巡れど春は来ない
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ジグソーパズルは四隅から

「おめーもおめーで苦労多いな……」


「でも今がチャンスだ。犯人たちが現在進行形で動いているなら、捕らえるにはもってこいだ」


「そうは言っても、監視をすり抜けて寮の郵便受けに投函なんてできるか?」



 二人して誰もいない敷地内を走り回るが、それらしき影は見当たらない。

 ところがしばらくすると、三原が足を止めてしまった。



「どうした?」


「いや、よく考えたら僕の推測で一番考えたくなかったのが的中しそうだな……」


「なにそれ?」


「君が言ったんだろう? 『秋山直子に対して個人的な嫌がらせをしている』。つまり犯人はテロリストなんかんじゃない。()()()()()()()だ。だとすれば、見方をリセットする必要があるけど。ただそう考えると合点がいく部分が出てくるのも事実なんだよね」



 三原曰く、「こうして走り回っているのも無駄になるかもしれない」。



「なんで?」


「先生や生徒なら誰も怪しまないだろ? ポストにものを入れるのだって生徒なら自分の寮でやればいい話だし、先生でも不自然さはゼロだ」


「……」


「おい、どうした?」


「納得しすぎて言葉がでなかった」



 ただの無駄骨じゃねーか。



「そうなると桐山はついでか? 『複数の生徒を狙った』って見せかけるための目眩まし?」


「かもねー」



 疑問点は残るが、先に確認すべきことが出てきた。

 俺は太一に電話をかけた。



「さっきは悪かった。それでどんなのが入ってたって?」



 いきなり電話を切ったことを少しばかり小言を聞かされたが、それ以上には怒っていなかったのかすんなりと本題に入った。



『だから、俺たちの個人情報が書かれたノートのコピーだって。裏表にみっちり書いてある。生年月日から日々の習慣まで。直ちゃんがこんなことしてたのかと思うと正直ドン引きだ』



 ……普段から俺がドン引きしてることは知らないのか? おまえらのイチャイチャが俺の部屋まで響いてきて糖分過多になりそうなのに。

 昨日、あいつの首筋にそれにしか見えない内出血があった。



「二瓶さんのは?」


『まあ、優香も似たようなもんだ。優哉のところにもたぶん来てると思う』


「……そうか。それ、俺が出ていった後だよな?」


『投函する音が聞こえたから、そうなるな。でも直ちゃん今は軍の監視付きの病院だろ? おかげで意味分からねえ』



 電話口の双方で唸る。

 このタイミングでなぜこんなことが?


 と、何やら争う声が聞こえた。

 なんだどうした?



『榎本くん?』



 うわぁブラックなお姫様降臨。電話越しでも怒りが伝わってくる。

 彼女は大きく息を吸うと



『あの女ぶっ殺していい?』


「待て待て待て! 確かに個人情報ゴリッゴリに書いてはあるけど! 今秋山さん病院だろ? 郵便受けに入れるのは無理だって!」


『だとしてもこれはないわ。だってプライベートな情報が多すぎる。あいつこんなの書いてたの?』



 女の友情は薄っぺらいとはよく聞くが、この場合はどう対処したものか。



『あたしが太一が寝てる間にしたキスの回数まで書いてあるんだけど。「首筋が好み」とか……もう最悪……。太一とはまだキスしてないことになってるのに』


「………………」



 どうしよう。

 バレバレって言いにくくなっちまった。



「ま、まあ、それもそうなんだけど。二瓶さん、お父さんから何か言われてない?」


『なんで親父?』



 うわぁ二瓶さんの口からすんげえ単語出てきた。



「これだけの事案だからさぁ、軍も絡んでるでしょ? 娘に何かしら言ってくるんじゃないかなー、と思って」


『……あいつの電話は着信拒否してる』



 そういえば親子仲は最悪でしたね。



「その点についても秋山さんに後で確認しよう。それより二瓶さんにも聞きたいことがあったんだ」


『なに?』


「《譲渡》の異能力って、実際の知名度どのくらいなの?」



 唐突な質問だったにもかかわらず、二瓶さんの返事は淀みなく返ってきた。



『名前と能力の内容なら、都市伝説みたいな感じで広まってるはずだよ? ただ、本当にそれがあることを知ってるのは限られた人間だけだけど』


「信憑性が低い噂話ってこと? 実際にあるのに?」


『私も詳しくは聞いてないけど、親父が言うには「あの異能力は他のものとは出来が違う」んだって。あいつも深くは知らないみたい。それ専門の人がいるらしいけど、あいつといい関係じゃないらしいから』


「そっか……ありがとう。ごめん、太一と変わってくれる?」



 渋々だったが、最終的には変わってくれた。



「ああ、悪い。今、この件を一緒に調べてる人がいるんだけど、その人が言うには『犯人は学校の生徒か教師』の可能性があるらしい。それで相談なんだけど、おまえこの学校の人間の異能力ってどのくらい把握してる?」


『それは、「この学校の人間で今回の事件が起こせるか」ってことか?』


「そうそう」



 太一はしばらく無言になった。



『無理だろ。学年主任が《物質合成》の異能力は持ってるけど人体なんて複雑な組み合わせはできない。この異能力はこの学校で一人だけだし』


「人体?」


『内部の人間の犯行だって言うなら、あの外人の男はどう説明するんだ?』



 やっぱ、そこに行き着くよな。

 あの外国人がいたことで、内部犯行説はかなり薄まってしまうのだ。



「それは……」



 返答に詰まっていると、急に三原が俺の腕を引っ張った。



「どうした?」


「そろそろ次の巡回の大人が来る。ここを離れないと」



 いいアイディアが浮かんだ。



「おい三原くんよ。すまないがこの電話の相手と少し喋ってもらえないか? 実はこいつも情報収集が得意分野でね」


「へえ。なら3分でいい。監視を頼むよ」



 最初からこうすべきだった。

 太一と違った視点からの情報を共有をすれば真相に近づけるかもしれない。



「……ふんふん、僕としては……」



 周囲に目を光らせながら、俺も今回の一件を振り返る。

 今までに起きた事件と違って、目的の不明さが目立つ。


「生徒をただ殺す」のが目的ならもっと大々的にやるだろう。

 本人の申告通り「異能力の奪取」が目的なら、秋山さんや桐山の異能力が奪われていない理由が分からない。

 現在最有力の「秋山直子への嫌がらせ」にしても、外国人連れてきて爆発四散させてる時点で犯罪行為だ。

「別のなにか」だとすればもうお手上げだ。


 起こした規模が絶妙なまでに中途半端。


 これじゃあ、「厳戒体勢を作り出す」のが目的みたいなものだ。

 何のために?



「――――おい、おい。聞いてるのか?」


「へふっ?」


「真田くんと話せて良かったよ。これで真相にかなり近づいた」 


「ほう、そりゃいいじゃないか」


「けど……」



 饒舌になったと思ったら今度は黙りこんだ。



「どうした?」


「いや……今の君には言わないでおくよ。振り回して手間を増やすのも面倒だし」


「そうか。で、俺たちはどうやったら真相に辿り着けるんだ?」



 三原が変な顔になる。笑ってるのか?

 ロリコンが小学生を見つけて興奮しているようにしか見えない。



「ちょっと面白いこと思い付いた」



 ◆◆◆



「おまえ笑い方怖すぎるよ。わざとじゃないならマジで怖い」


「そうかい? 僕はこれが普通なんだけどな」


「で、俺を病院の中に連れ込んだ理由を聞こうじゃないか」



 俺は現在、三原と共に病院内の物陰に身を潜めていた。



「結論から言おう。この事件はあまりにも()()()()()()理由が原因だ」


「そこまで言うか?」


「だって、()()()()宿()()だよ?」



 脳が一瞬、動かなくなったのかと思った。

 なんだと?



「夏休みの宿題ってどういうことだ?」


「君も書いただろう? 〈異能力記録〉。あれだ。この事件を起こした連中は夏休みの宿題をサボってたんだ。それを埋めるためだけに、今回の茶番を起こした。そう考えると状況の辻褄は合う」



 本当にくだらない理由だった。理解したと同時に、まだ解決していない問題がある。



「外人はどう説明するんだよ?」


「それは本人たちに確認するしかない。だからこうしてるんだ」


「……おい、それが本当なら俺は怒るぞ? なんだって秋山さんに人殺しをさせなきゃならなかったんだ?」


「まあ、向こうの言い分も予想はできるんだけどね――――」



確証が欲しい。三原はそう言った。

 俺たちは真相を確かめるべく、病院に突入した。突然の侵入者に看護師や警備の軍人などが呆気に取られている。

それをガン無視して目的地を目指す。


 4階の角の大部屋。


 非常階段からフロアに入ると、軍人たちが一斉にこっちに来た。

階下から連絡が来たのだろう。



「頼んだ」


「あいよ――――」



 三原が囮となり、俺は自らの異能力を発動する。

 今回は、はっきり見えた。



 軍人たちには見えていないであろう、真っ青な顔でこちらを見ている、この学校の生徒が。

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