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《最強》になりえない彼が、《最恐》と呼ばれる理由  作者: 岡部雷
季節は巡れど春は来ない
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窮鼠が猫を噛んでも、多分勝てない。

更新遅れてすみません!

「いなくなったってどういうことだ!?」


『だから、ちょっと見ないうちにどこかでいなくなったんだ!』



 ……消える理由はなんだ?

 タイミングが怪しすぎる。もしかして俺は何かを見逃したのか?



『俺の異能力で探知できねえってことは400メートルは離れてることになる。優香も探してくれてるんだけど見つからねえ! 直ちゃんの体力だとそう遠くへは行ってないはずなんだけど……!』


「まだ俺が離れてから10分も経ってないのに、見失ったのか?」


『悪いな! 予想外すぎてこっちもビックリだ!』



 普段あまり聞かない太一の怒声が鼓膜を揺さぶる。


 学校の敷地は確かに広いが、生徒が自由に歩ける場所は限られている。それにもう陽は沈んでいる。外灯はあってもあまり明るいとは言えない。

 遠くへ出歩くには適して





 ……遠くへは?



「太一……まずいかも」



 忘れてた。

 ()()彼女の異能力を使えば、遠くへの、しかも生徒が立ち入りを禁止されている場所でも楽々と入ることができる。



「太一! 今すぐ二瓶さん連れて寮に戻れ! 俺たちでどうにかできる域じゃねえかもしれねえ!」



 すぐさま向き直って小宮山先生と伊藤の元に向かう。



「どうした?」


「秋山さんが姿を消したそうです。周辺を探したそうですが、見つからないと。恐らく《虎》を使って移動してるのではないかと思います」



 先生の表情が険しくなる。



「……まずいな。このタイミングだ。こりゃ相当ヤバいかもしれん。あいつが何か知ってるかもしれない」



 急いでさっき拘束した男の元に向かう。

 警備員室に押し込んであるはずだ、と先生は息巻く。


 道中で警察と鉢合わせした。

 若い警官二人は挨拶もそこそこに用件を切り出してきた。



「で、テロリストは?」


「ああ、あっちの警備室で預かってますので」



 先生は案内するのではなく、あるべき方向を指差した。

 が、



「……」



 その方向を見た俺たちは絶句した。

 どうやって拘束を解いたのか、中年の外人がこっちにヨタヨタと向かってきていた。この感じだと警備員は突破されてしまったと考えたほうがいいらしい。

 口を開いた瞬間、唾液が糸を引いているのがこの距離でも見えた。



「『なるほど、この程度ですか』」



 男のものとは思えない、流暢な日本語。

 気味悪く笑ったその口がなんとも恐ろしい。



「『ああ、お初にお目にかかかります。まあ、そうは言っても名乗る名前は持ち合わせていないのですが』」



 嫌な予感がした。



「『秋山直子さんの身柄は、既に我々の手中です』」



 ご丁寧に脅迫までセットだ。

 口の中が乾いていくのを感じる。



「……目的は俺か?」


「『いいえ。()()()()()()()()()()()()。ですが大方の目的は果たしましたよ。でも最後に、一つ取引しませんか?』」



 男の目は焦点が合っていない。

 こいつ、操られているのか? だとすると今喋っている奴は相当用心深いな。



「取引ってなんだ?」



 小宮山先生が問うと、男はなぜかゲップした。



「『ククク……失礼、《同調》の異能力はまだ使い馴れていないもので。さてそうですね。伊藤光太郎さんと榎本優哉さんの異能力を()()()()()()()()()。それだけですよ』」



 能力を『渡す』? 聞いたことのあるフレーズだ。



「てめぇ、《譲渡》の能力者か?」



 俺の言葉に反応した男はわざとらしく手をポン、と叩いた。



「『ご理解が早くて助かります。あなた方お二人の異能力はとても素晴らしいものです。是非ともお譲りいただきたい』」


「暗に『死ね』ってことじゃねーか」



 《譲渡》。文字通り「異能力を他人に移す異能力」である。ただしこの異能力を使うと譲渡する側、つまり本来の持ち主は死んでしまうそうだ。

 理由は不明。俺もそれ以外の情報は持っていない。


 男は歯をカチカチ鳴らしながら笑ってる。

 どういう原理だ?



「『新時代の礎となるのなら、本望では?』」


「生憎、青春しないで火葬場に行くほどアホじゃないんでね」


「『では死ね』」


「……!?」



 男の淡白な返事はなんとなく予想が着いた。しかしその先については「予想外」としか表現できない。

 男が呟いた瞬間、正面ではなく真横から衝撃が来た。


 幸い、俺の《壁》は俺が気づかなくても危機に直面すると自動展開するので大事には至らなかったが、足元になにやら金属が落ちた。


 ……って弾丸?



「おいおまえ! なにやってんだ!」



 若い警官の一人が拳銃を抜いていた。

 躊躇なく連発してくる。6発しかないだろうと思ったらなくなった瞬間に再装填している。しかも移動して男を庇う位置に立たれた。


 目は少し虚ろになっている。《伝達操作》を食らった?

 いつやられた?



「『まだ足りないでしょう?』」



 よりによって男の頭上に《転移門》が開く。そこから出てきたのはよく分からないがマシンガンみたいな大型の銃。

 警官はそれを受けとると躊躇なく引き金を引いた。

 同時に俺の脇をすり抜けた奴がいた。



「伊藤っ!?」


「全員、俺の後ろに!」



 伊藤が先頭に出て弾丸を全て受ける。まあ妥当な判断だ。

 小宮山先生が弾丸を受ければ《反転》で弾丸が警官に当たる。俺の《壁》も弾き飛ばす分、被害が拡大しそうだ。

 あいつの異能力なら、弾丸は全て止まる。



「『ああ、期待通りです! ますます欲しくなりました!』」



 男が両手を広げてこちらに歩いてくる。

 だが警官が進路を阻む。どうやら「あの男を守れ」と命令されているようだ。こちら側に来ないようにしているのだろう。



「『邪魔だ』」



 男は躊躇なく警官を殴り飛ばした。

 警官は壁に叩きつけられた衝撃のせいか動かなくなった。


 ……死んでないよな?


 もう一人の警官は悲鳴を上げながら逃げてしまい、残ったのは結局教師と生徒の3人だった。

 先生は自身の端末を操作する。



「榎本、ここは俺たちがどうにかする! おまえは秋山を探しに行け! 他の先生にも連絡したからすぐに合流してくれるはずだ!」



 俺は警備室を飛び出して屋外に出る。


 だが、どこにいったのか皆目見当もつかない。

 常時発動できるタイプではない俺の異能力はこういうときに不便だ。

 いざというときに備えて使用は極力控えざるを得ない。


 とりあえず自分の寮へ戻る道を進んだ――――ところで。


 道の真ん中に、誰かがいた。

 薄暗くてよく見えないが、全体的に黒っぽい。



「そこの人! 今は危険だから今すぐ寮に――――」



 言いかけて気づいた。

 なにせその人は、俺が探していた人なのだから。



「秋山さん? 無事だっ」



 だったんだ、と最後まで言うことはできなかった。

 彼女が黒っぽく見えた理由。


 彼女の後ろに、口元が不自然に赤く染まった《虎》がいた。



「ねえ、榎本くん」



 目が、死んでいた。



「――――わたし、ひとを殺しちゃった」



 ◆◆◆



「『そろそろですかねぇ』」



 伊藤と小宮山の攻撃をひらりひらりと避けながら男が腕時計を見る。

 と、急に動きを止め、両手をあげた。



「……どういうつもりだ?」



 相手のカウンターを警戒した小宮山は一定の距離をとる。倒れている警官にも目を向けたが、動く気配はない。



「『どうせこの男はもう使い物になりませんから。最後に一つ。この後()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。では』」


「おい、待て――――」



 小宮山が制止する間もなく、男の体は爆発四散した。あまりにも細かくなりすぎて何がどの部分だったのかすら不明なほどに。



「……やられた。伊藤、すまないが榎本のところに行ってやってくれ。ここの処理は俺がする」


「必要ないですよ、先生」



 小宮山が振り返ると、榎本のとなりに血で全身が真っ赤に染まった少女がいた。



「……何があった?」


「やつらの目的は、秋山さんの異能力で殺人をさせることでした」

次はそこまで空かないと思います……。

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