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《最強》になりえない彼が、《最恐》と呼ばれる理由  作者: 岡部雷
キューピッドに休みはない。
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恋は盲目?

日付変わった…………。

「優香ちゃんと太一は幼稚園からの幼馴染。あの頃は優香ちゃんの親父もこの土地にいたんだ。小さい頃から本人同士は仲はよかったんだけど、知っての通りその親父が堅物でねえ。職業柄でうちの裏事情まで知ってるもんだから最初は交際の許可が降りなかったんだよ。まあ、あたしもそればっかりは妥当だと思ったけど」



 付き合い始めたのは中学生だと言っていたな。

 ……中学生の交際って、普通の親は許可しないような気がする。なんでわざわざ許可を取りに行ったんだろう?



「あのバカ、告白したまではいいんだよ。そしたら優香ちゃんもOKして。だけど、何を思ったのかあの親父相手に『娘さんをください』って啖呵きって。当然断られて、優香ちゃんの親父に『付き合うのは大人になるまで待ってくれ』って言われて。そしたら怒った優香ちゃんが家出して大騒ぎになったことがあるの」



 段階が違った。まさかの結婚宣言。

 二瓶さんはまだまともそうに見えたんだけどなあ……。舞い上がったのかな?

 ……ん?



「あのぉ、『待て』ってことは、交際そのものには反対しなかったんですか?」


「そうだね。あの親父、弟に借りがあるからさぁ。あいつが絡むと強く言えないんだよね」



 中将相手に、どうやって貸しを作ったんだあいつは!?



「あの親父は娘を殺しかけたんだから当然。つか、うちらも殺されかけたし」


「へー…………あ゛? 殺されかけた?」



 ちょっとややこしいんだけどね、と舞子さんは前置きして。



「実を言うとね、先に惚れたのは優香ちゃんのほう。幼稚園で一目惚れしたんだって。で、小2の時に『太一の嫁になる』って親に言ったもんだからあのグラサンキレてさぁ。今は町中に引っ越したけど、当時うちの家族はこの近くの山に住んでたんだ。だから、山での事故に見せかけて……サクッと」



 冷や汗ってレベルじゃねえ。

 あと二瓶さんのお父上こええええええ!!!



「あの……ちなみに具体的には」


「あいつ、一定エリアの天候を操作できるんだよ。で、暴風で家を吹っ飛ばして、逃げる最中に足を雨水で滑らせてがシナリオ。土砂崩れだと周りもも巻き込むから、そっちのほうがピンポイントで確実に」


「それ事故じゃなくて計画殺人でしょうが!!!」



 なにその精神病んでる親は! 軍人って皆思考回路おかしいのか!? 



「ただ誤算があった。一つは娘がその山にこっそり行ってたこと。おかげで奴の計画は頓挫。自分で起こした嵐のせいで、逆に娘が行方不明」



 おかしいなあ。時系列が正しければ小学2年生だろ? 二瓶さんアクティブが過ぎませんかね?



「で、うちらは家をぶっ壊されて命からがら逃げてたの。でも途中であいつが『優香ちゃんが近くにいる』っつって『なわけねーだろ』って思ったんだけど。あいつの案内通りにいったらあら不思議。木の下でずぶ濡れのお姫様発見。そんなわけで言わばあいつは命の恩人。まあ、優香ちゃんはそこまで計算した上でやってるんだけどね。これで親父は、優香ちゃんのお祖父様とお母様に叱られて半年の謹慎。これで一番厄介な奴を封じ込めることには成功したの」



 二瓶さん児童にしてはスペック高すぎやしませんか!?

 そこも気になったが、もっと気になったことがある。気軽に語っているが、犯罪に巻き込まれているのでは?



「……それがもう一個の誤算。うちの家族が潜り抜けてきた修羅場の中では、中の下くらいね。あたしが生まれる前から両親は色々苦労したみたいだし。だから、実を言うと避難の準備は万全だったんだ」



 殺されかけて、中の下?



「軍から追放された奴の末路なんて、もっとひどい。うちらがこうして普通に生活できるのは、優香ちゃんのお祖父様が色々と援助してくれたお陰。たった20年くらい前でも、それが原因の一家心中が珍しくない時代だったんだよ。もっとも、援助に関しては爺さん同士の秘密裏の関係だったから息子であるグラサンはうちらの正体分かってなかったけど」



 思った以上にやべー背景だった。

 純愛…………と呼んでいいのか? これは。



「で、最終的に許可が降りたのは二人が中三の頃。もうその頃には優香ちゃんのお祖父様とお母様から許可が降りてたんだ。親父は最後まで反対したんだけど、娘を助けてもらった借りがあるから嫁と父親にこっぴどく締められてね。あれは傑作だった」



 二瓶さんの父親に対するヘイトが尋常じゃない。

 まあ、殺されかけたのだから当然か。

 しかし二瓶さん、見た目以上にヤバイ人だった。そこまでして手に入れたいか。



「あたしも最初はマセガキくらいにしか思ってなかったんだけど、あの執着のレベルは君の言うとおりカンスト通り越してる」


「……どうして二瓶さんはあそこまで太一にこだわるんでしょうか? 最初は一目惚れだったんですよね?」


「最初はね。でも太一を観察するうちどんどん中身に惚れちゃったんだって。我が弟ながら確かに性格の良さは否定できないからねぇ。見た目よし、性格よし、おまけにうちの家族のなかでも飛び抜けて料理の才能がある。主夫にするには優良物件でしょ?」


「一家に一人欲しいというのは同意しますがね……」



 ここで舞子さんは身を乗り出してきた。



「で、本題に戻りたいんだけど。あの二人、親の目を離れてタガ外れてない?」


「なぜ俺が知ってると思うんです?」


「君の部屋、あの二人の隣でしょ? だったら夜中とかなにやってるか聞こえてこない?」



 完全にゴシップ好きのおばさんにしか見えない。

 とは言われても、俺が知っているのと言えば。



「添い寝と、あとは抱きつき方がスゴい、くらい、かな…………」



 知りうる情報全てを出してみたが、不満そうだった。



「……なーんだ、あたしはてっきり理性なんかとうになくしてると思ったんだけど。でもこの年で伯母さんにはなりたくないなあ。自分の子供もいないのに」


「その点は大丈夫じゃないでしょうか? こういってはあれですが、二人を見てると純情ラブコメみたいで面白いですよ? でも時々、熟年夫婦のような以心伝心を感じますね」



 俺の感想には満足したのか、鼻息が少し荒くなっていた。



「そっかそっか。まあ、これからも愚弟と未来の花嫁を頼むよ。あいつ、結構君のこと頼りにしてるみたいだからさ。もし粗相したら、容赦なくぶん殴ってもらって構わない」



 ◆◆◆



 翌日。

 恐る恐る教室を覗くと、宇田川が相変わらず目を血走らせていた。眠れなかったのか、隈が出来ている。



「よう宇田川、おは――――――!?」



 拉致された。奴は自身の《身体強化》を朝から全力で使っている。

 え? え?

 男子トイレに連れ込まれた。誰もいないのを確認すると、宇田川が口を開いた。



「なあ、優哉。おまえ、二瓶さんと付き合ってんのか?」



 昨日今日で一番答えづらい質問が来た。



「な、なにゆえにござるか?」



 おっと言語がおかしなことに。



「二瓶さんから、男の臭いがするんだよ……鼻の奥にこびりついて取れねえんだよぉ!」



 ついこの間まで「赤井様ぁ!」とか言ってた奴には見えない。

 頼むから近寄るなむさ苦しい。



「あー、ちなみに言っとくが俺じゃねえぞ。気のせいじゃないか?」


「いやぁ、間違いねえ。この連休が明けてはっきりした。週が開けると、二瓶さんから漂う男の臭いが強くなってやがる……!!!」



 割りと欲望に流されるままだなー、くらいにしか思っていなかったが評価を変えよう。こいつ変態だ。



「おまえじゃねえなら、一体誰だって言うんだよ! 連休の間、俺は観察していたが二瓶さんが男子の部屋に行った形跡はねえし、誰か男が彼女の部屋にはいるのも見てねえ! あの清らかな体を抱き枕にしてる野郎はドイツだあああああああああああああああああああああああ」



 …………舞子さん、すみません。

 あなたの弟にピンチです。

状況的にかなり不味いです。はい。

異能力でどうにかできるのでしょうか。

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