ツンデレ≠バイオレンス
能力を使わないパートは早めに切り上げます。
少し早めの投稿です!
「……あいつは軍人の家系だから、家が自衛教育してるんだろ。証拠なんて、いつ出てくるかわからないし」
あの美人だ。すり寄ってくる悪い奴も多かろう。
単純に本人狙いだけではなく、父親や家族の地位が目当ての可能性もある。
「あーなるほどね。てっきり俺は、あんな顔して、裏では盗撮趣味でも持ってんのかと思ってた」
冗談のつもりだったのだが、
「優香がそんなことするわけないだろっ!!!」
思った以上に強く否定された。
太一も「しまった」という顔をしながら、なんとか取り繕うとする。
「ぐ、軍人の家族がそんなことやったら、家名に傷がつくだろ?」
通らない言い訳ではないが、ここまでくるとさすがに怪しい。
「……仲が悪いにしちゃあ、随分と知ってることが多いような気がするなあ、太一くん?」
観念した彼は、がっくりとうなだれた。
そして俺は、事の詳細を知ることになる。
「……あの美人と『付き合ってる』だぁ!? てっきりおまえがストーカーでもしてたのかと思ったよ! 妄想じゃねえだろうな!?」
聞けば、幼馴染だという。
中学生くらいから交際していて、なんと親公認。「確認してもらっても構わない」とまで言い切った。
「ちょっと待て! 昼間に会ったとき、おまえあの子に罵倒されてなかったか!?」
「いろいろあるんだよ……。表向きは、仲が悪いってことにしてあるんだ」
太一は複雑な表情を浮かべていた。
「許嫁みたいな?」
「いや、付き合い始めたのが先だから、ちょっと違う」
羨ましい奴め……!
つまりこの先、彼女とこいつが別れない限り、彼女にアタックする猛者たちは、苦い経験をすることになるのだ。
良かった、惚れなくて。
「……で、なんでそんなコソコソ付き合ってんだ? 説得するのが一番面倒な親が認めてるんだろ?」
こういう場合、親にばれないように付き合うのが普通だと思うの。
「……実を言うと、俺の祖父ちゃんも軍の関係者だったんだ。でも、上司の不正を告発しようとして、逆に嵌められて軍から除籍処分受けてんだ。その家族の俺が、軍の要人の娘と付き合ってるって周りにばれたら、あいつの家族にも迷惑がかかるだろ?」
「おまえ……よくその立場で『付き合いたい』とか思えたなあ。つか、よく許可が降りたな。だって要は反逆者の血縁だろう?」
普通の親なら、大事な娘をそんなやつには預けない。
俺だったら絶対に諦める。
「優香のお祖父さんがいい人でさ、俺のじいちゃんと親友だったんだ。それで、『あいつの孫ならいい』って。まあ、あいつの父親とは、ちょっともめたけど」
太一の話によると、あの美少女の祖父は、軍ではかなり有名な人物らしい。
相当な人格者らしく、誇り高い魂を持つ人だ、と太一は語る。
その目は、まさに尊敬に溢れていた。
「あの人は、一人だけじいちゃんの無実を信じてくれたんだよ。そのあと、じいちゃんが告発しようとした相手は別件で足がついた」
なんだそりゃ?
「……え? じゃあなんで今も隠してんの?」
真犯人が捕まったのなら、冤罪は晴れたはずでは?
「軍ってのは、手落ちは認めないんだよ。祖父ちゃんの措置も妥当ってことで結論が出てる」
うへぇ。
大人の汚い世界じゃないか。
「それに、黒幕が捕まったのは、別件の容疑だけだ。じいちゃんの言おうとしたことは、まだ証拠がないから、ひっくり返せてない。だから俺は、じいちゃんの冤罪を晴らすために、軍にいく。それが終わったら、もう一度あいつに告るつもりだ」
なんだろう。お祖父さんの話を聞いているはずなのに、最後の一文のせいでノロケに聞こえてきた。
「だから、『それまでは付き合ってることは隠しとけ』っていうのが、優香の親父さんの条件。それで、表向きは、俺とあいつは仲が悪いってことにしてある。この頭だって、あいつの親父さんが、俺を殴れなかった腹いせに、『卒業までその頭な』ってバリカンで刈られたし」
……
…………………
「それで坊主頭なのかよ!!!!!!」
今日一番の衝撃だった。
まさか当日に疑問が解消するとは思ってなかった。
「好きでこんな頭しねえよ。俺、野球部とかじゃないし。ただ、あいつの親父さんから、『うちの娘貰うんなら、それくらいの覚悟は当然』って。俺も男だ。頭丸めて認めてもらえるならいいだろ? あいつは気に入ってないみたいだけど」
でしょうねえ! この部屋に入って思ったけど、野球よりバレーボールですよねあなた! 普通にボール置いてあるもん!
変だと思ったよ!
ひとしきりツッコんだ。
「ゼェ……ゼェ……」
「息切れするまでテンション上げなくてもいいのに」
「プっ」
俺は過呼吸になりかけていた。
それにしてもだ。
「今日聞いたことは、とりあえず黙っといてやるよ。あースッキリした」
俺は満足して台所に向かう。洗い物くらいは手伝わないと、本物のタカリだ。
◆◆◆
それからもう少しだけ喋った後、俺は少しだけ寄り道をして、自室に戻っていた。
隣の部屋から、ドッタンバッタン聞こえるけれど、気にしないことにする。
なんか女子の甘えた声が聞こえるような気もするけど、空耳だろう。
さあ、早く寝よう。
……
…………
……そーかー。
あの子の能力使えば、部屋の移動は楽だもんなー。
さっき見て分かったけど、なんとすごいことに、二瓶さんはここの104号室だもんなー。
人前でベタベタできない分、どこで埋めるんだろうなー。
◆◆◆
「で、優香。このボールペン実際何に使ってたんだ?」
「こっそり太一の写真撮るのに使ってただけだよお。ねぇ太一ぃ、なんであの子に喋ったのお?」
「仕方ないだろ、変に隠して余計広がったら困るし」
「太一が墓穴掘るから悪いんだよお。それより、さっき見てたの気付いてた?」
「どっかに『門』作ってたんだろ? 笑い声漏れてたぞ」
「ごめんごめん。ねーそれよりもさー、はやく太一のご飯食べたいんだけど」
「分かった分かった。ちょっと待ってろ」
……なんて会話が交わされていることを、俺は知らない。
◆◆◆
「おう、太一……どうした?」
翌朝、学校の中を太一と一緒に歩いて回ろうと思っていた俺は、玄関から出てきた彼を見てそう言わざるを得なかった。
目の下に大きなクマを作っていた。
「ちょっと夜更かししてな。アハハ……」
俺は太一に手招きする。
そして耳元で
「……窓、開けてただろ。聞こえた。おかげで俺も寝不足だ」
太一はギョッとして、慌てて104号室のチャイムを鳴らそうとするので
「いや、カマかけただけだ。ただ、以外とドッタンバッタンしてるのは聞こえるから。こっちはマジだ。友人として今のうちに教えといてやる」
「優哉ァ……冗談きついぞ……」
トーンがマジだった。
これは二回目が許されないタイプだ。
「で、実際は?」
俺は、この手の話は好物な方だ。
上がる口の端を押さえながら、気分はラブコメ読者である。
「おまえが想像してるのよりは、たぶんよっぽど薄っぺらいと思う」
太一の反応は淡白だった。
「ちょっとしゃべって、飯食って、また夜通し喋ってただけだから。今日あいつは起きてこないと思う。元々夜型だし」
本当に薄かった。
キスくらいはしているものだと思ったのだが。
「優香だって子どもじゃないからさあ、その手の知識はあるんだけどね。ただ、いざ実践しようとしたら、恥ずかしさで自爆するタイプだ」
「太一さん、太一さん」
「うん?」
「聞いた俺も悪いんだけどよ、その情報は彼氏として喋ったらまずいやつだぞ?」
太一は見て分かるレベルで動揺した。
「そ、そうなのか」
なるほど。
今まで隠してきた分、その手の会話に慣れてないのか。
ならばやめておこう。
実際、この数十分後に、それどころではなくなるのである。
次回、ようやく能力出てきます!(遅い)
ブクマ、評価お待ちしてます!
次回を7月19日投稿します。




