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楽して身に付くのなら、誰も苦労はしない。

すいません、下書きが消失しました。(二回目)


次回更新までには復旧しますので今度は主人公サイドメインで話を進めます。

「『イベント』……?」


「ああ。ねーちゃんが言ってたから間違いはねえと思う」



拳で歓迎されたの?



「それにしても、学校の敷地に病院がなかったらと思うと、ゾッとする」



学校の生徒は、ほぼ缶詰状態の生活を送るため、敷地のなかには病院も完備されている。

最初は風邪か軽い怪我以外は用途が思い付かなかったものだが。


なかったら本当に恐ろしい。



「同感だ。それにしても、マジでイベントってなんだ。入学生は毎年のように先生にボコられてんのか?」



俺の怒気に気圧されながらも、頷いた。



「なんでも、何年か前に、俺たちと同じ年の子供が、学校の先生全員と戦って勝ったらしい。それを聞き付けた軍が、戦力になりそうな子供を見つけた学校に、褒賞金を出すことにしたんだと。その代わり、その生徒は学校卒業してから軍に就職したそうだ」



要するに、先生たちの小遣い稼ぎに付き合わされたのだ。

それと絶対、ストレス発散も混じってる。



「で、毎年それを探すために、あんな一方的なことするのか? 頭おかしいだろ」


「まあ、軍にとっちゃ、戦力の確保は毎年の悩みの種だからな。どんなに厚待遇でも、命の危険が付きまとう仕事は、希望する人は少ないだろうし」



あんな先生たちに勝てる子供なんて、そうそういないだろう。



「ちなみに、なんの能力者だったか知ってるの?」


「俺の姉ちゃんが今年22歳で、1年先輩だったんだって。学校は違うけど、全国的に有名だったから覚えてたみたい。確か、《分子運動抑制》と《超高温》。同じ年に、そんな逸材が出たら、そら軍も期待するわな」


「まさかの二人!? どんな怪物よ?」


「さあ……、姉ちゃんも、顔までは見てないみたいだから」



◆◆◆



「ぶえっくしょい!!!」


「なーんだ誠也(せいや)。風邪か?」


「ええ、そうかもしれませんね。どうです、ソナーの具合は」



とある国の、暗い地下道路。

そこを、二人の男が軽装で歩いていた。


一人は、食事をまともに取っているのか不安になりそうな、ガリガリで三十代後半の男。

一人は、今しがた誠也と呼ばれた、ある程度筋肉の着いた若い――恐らく20代の――男。



「こんなところに人質を閉じ込めてるって。なにやってんでしょうね?」


「それは、行ってみないと分からない。ところで、誠也の方こそ調子はどうだい? 念願の合法幼女を手に入れた感想は」



誠也と呼ばれた男は顔をしかめると、



「……その誤解を生みそうな言い方、止めてもらえませんか」


「あの子可愛いじゃないか。あれを毎日見れるなんて、君は幸せ者だよ? ――と、言っている間に着いたみたい」



彼らが足を止めた場所には、鉄の壁はあっても扉は見当たらない。

ガリガリの男は、迷うことなく、壁の一点を、まるでノックするかのように叩いた。



「ここだ。じゃ、頼むよ」


「了解」



若い男は鉄の壁に触れる。途端にその部分が真っ赤になり、飴細工のように形が変わる。周囲の温度が急激に上がるが、二人は特に意に介す様子はない。やがて、壁に大きな穴が開いた。

直後、遠くから大人数が走る音が通路に反響した。



「どうします? 相手は恐らく武装してますが」


「俺が相手するよ。君だと殺しかねん」



二人の会話が終わらないうちに、銃を持った数名が、通路の左右から挟み撃ちにする。



「人一人奪還するのに、俺たちが出張るほどのことですかね」


「そう言うなよ。人質はきっと今も不安だろうから」



誠也は穴の奥を見据えると、地面を蹴る。



「――――おっと、君たちは行かせないよ?」



追いかけようとした彼らの前に、ガリガリの男が立ち塞がる。

しかし丸腰だ。



「ちょっとごめんね――――」



彼は、少しだけ、申し訳なさそうに。

足で地面を踏みつける。




瞬間、大地震が彼らを襲う。

立っていられないほどの揺れに、彼らは一旦、逃亡を図る。

しかしそれでも。

這いつくばって逃げようとしても、動くことすらままならない。

そのうち、通路の壁にヒビが入り始めた。

崩れる恐怖に戦きながら、彼らは命からがら逃げていった。



「ふう……」



一仕事終えた男の脳内に、別れた相方からの恨み声が鳴り響く。



〈ちょっとぉ、二郎(じろう)さあん、揺れがこっちまで来たんですけど?〉


「あ、すまん。人質は?」


〈見つけましたけど、今の揺れでビビって大泣きしてますよ。どーしてくれんですか?〉



二郎は、見えない相手に頭を下げた。



「すまん。悪いけど、そのまま出てきてくれるか? ここの地下通路、思った以上に脆かった」


〈……この仕事終わったら、飯おごってください〉


「すまん」



◆◆◆



病院を後にした俺は、あと数日は、異能力の訓練が再開できないと悟っていた。


怪我そのものよりも、プライドをへし折られたショックで、数人がちょっと危ない状態になっていた。

俺のクラスの女子に至っては、布団に潜り込んで怪しい笑い声をあげていた。


俺が気絶している間に、一体何が?



「とりあえず、ご飯を食べろ。食欲がないのは分かるけど、食べないでいると体は持たねえ」



本当に、太一と知り合っていなかったらどうなっていただろう。

俺の体を配慮してか、夕飯は雑炊だった。

はあ、染み入る。



「二瓶さんは?」


「捕まったけど、最後の方だった。ただ、集中力が途切れて、《門》を先読みされて捕まったから、ちょっとすねてる」


「可愛い」


「うん?」


「まあでも、そっちは捕まえた後はなにもしなかったんだろう? こっちは捕まえるためなら手段は選ばないって感じだぞ」



あれは、強力な異能力を持つ生徒を探しているようには思えなかった。

だって本気だったもん。



「明日も異能力の訓練、時間割りには入ってるけどさ、絶対無理だろって思うんだよな」



正直、高をくくっていた。

まともに動ける生徒、俺だけだし。



「どうかなあ……?」



太一は苦笑いしながら、雑炊を口に運ぶのだった。



◆◆◆



地下で人質奪還が進行しているなか、地上では。



祐一郎(ゆういちろう)、もうすぐ二人が戻ってくるみたいだから、確認が終わったらデカいのを頼む」



祐一郎と呼ばれた男は、まさに筋骨隆々と呼ぶにふさわしい体格。どこからみてもTHE・筋肉。

もう片方は、やややせ形だが、地下にいる一人ほどではない。

むさ苦しい男と、気弱な男の組み合わせに見える。



「任せろ。全く、12歳の子供を誘拐するなんて糞みたいなことしやがる」


「まあ、そう怒るなよ。無事は確認したみたいだから」



二人のいる場所は、地下通路の入り口。

一見すると、ただのトンネルにしか見えない。入り口には、現地語で〈立ち入り禁止〉を表すロープが張られている。

やがて暗闇の中から、少女を抱き抱えた誠也と二郎が現れる。



「あいつらはまだ中だ。頼んだぞ祐一郎」



誠也の呼び掛けに、彼は



トンネルの入り口を、巨大な氷で塞ぐことで答えた。



「これでしばらくは出てこれんだろう」



祐一郎は懐から携帯電話を取り出す。



「ああ、もしもし。人質は無事です。犯人グループは出入口を封鎖したので問題ありません」



ところが。

その壁を、今にも壊そうとしている集団がいた。

中にいた犯人グループである。


銃で壁を撃ったり、どこぞから持ち出したつるはしで削ってみたり。

色々と試してはいるものの、どれも巨大な壁を壊すには至っていない。

それを見かねたのか、優男が動く。



「あー、俺ちょっと説得してきます」



彼は氷の壁の前まで行くと、自身の異能力を発動する。

数分とかからないうちに、あれだけうるさかった音が鳴りやんだ。

笑顔で優男が戻ってくる。



「物分かりのいい人たちだった~」



祐一郎はため息をつくと、



「でなきゃ困る。あの氷は、性格に言うと個体窒素だからな。今爆発したら洒落にならん。あれは後で俺が責任をもって処理するから、しばらくはあのままにしておいてくれ。それと――――」



彼は、再び端末を耳に当てると



「すみません()()()さん。話の途中で。ええ、ええ。はい。問題はありません。地元警察に犯人たちを引き渡したら、すぐに戻ります。また《社長》が面倒を起こしたんでしょう? はい。そっちのほうも、すぐに片付けますから」

本当、すみません……( ノ;_ _)ノ


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次回は8月30日更新予定です!

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