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修行はそれぞれ 前降り

異能力と一口に言っても、その種類は多岐にわたる。


この間のカテゴリー分けだって、生物で例えるなら哺乳類か爬虫類の違いと同じレベルだ。

そこからさらに分岐して、最終的にはかなりの数になる。

そうなればもちろん、限りなく似ている能力者だって出てくる。

例えば、同じ炎を扱う能力者の場合、その規模や、炎の温度の違いで選別される。


俺の《障壁》も、一度に複数枚の《壁》を展開できるか、形状は変えられるか、耐久ダメージはどのくらいか。持続時間はいつまでか。

調べる項目はたくさんある。この能力は、応用性が高ければ高いほど、高評価を得られるのだ。


ところが悲しいことに、俺は《ダメージ耐性》以外は、あまりにも融通が利かないという理由で、低い評定をつけられている。



◆◆◆



「えー、では本日から、このクラスも異能力の訓練カリキュラムが始まります。伴って時間割りにも少し変更がありますので、各自端末をしっかり確認しておいてください」



生徒会の茶番劇の翌週。四月も下旬に入り、入学式の事件に関する一切に、ようやく蹴りがついたらしく、やっと異能力の訓練が始まった。

なんだろう、かなり遠回りをした気がする。


思い返せば、入学前から、異能力を使う場面はまともなものではなかった。

大半が『ぶっ飛ばした』か『吹っ飛ばした』で終わっている。


まともな訓練さえ受ければ、この能力ももうちょっとマシなものに――――!















◆◆◆



「……ならなかったねえ。まあ、厳しい条件の中で、要素が一つ成長したこと、そして新たな応用を見つけたことは、悪い収穫でもないだろうけど」


「ええ、まあ……でも、訓練の中身聞いてて意味あるんですか? 内容はご存じでしょう?」



青年は壁掛けの時計に目をやる。

時刻は昼の1時を回っていた。お互いの目の前にあった食事も、今は器を残すだけだ。

鶴宮は自身のグラスに、アイスティーのおかわりを注ぐ。

これで4杯目だ。



「あるよ。だって君は、訓練を受ける()から、それだけ事件を起こしてるんだから。上達に比例して、君の周りで起きたトラブルもレベルが上がっていく。訓練でも、何かしてるかもしれないじゃないか?」


「お言葉を返すようですが、生徒会の茶番、あれ絶対、あなたが発案でしょう?」


「まあね。しかし、僕の計画が()()()()()()のせいで妨害を受けるとはね」



青年は大きくため息をつく。



「今となっては、あそこまでムキにならないほうが良かったと反省してますよ。おかげで、()()()()()になりましたし」



鶴宮は青年を見据えると、



「君はただでさえ、問題分子だ。それがまともに能力を使いこなせるようになったせいで、前代未聞の事件を三つも起こしている。全く、どんな神経してたらこんなこと実行するんだか」


「だから反省してますよ……」



青年の声は尻すぼみになって、壁に吸い込まれていく。



「君にとっての不運は、自身の生まれにもあるかもしれないね」



◆◆◆



未来でそんな会話をしているなんて、このときの俺は知らない。

午後からのカリキュラムを心待ちにしながら、太一たちと昼食を囲んでいた。



「やっぱ、系統別にやるのかなあ?」



宇田川が笑いながら箸を振った。



「なんだよ、おまえ知らないのか? 今日、〈直結型〉と〈範囲型〉かで分けるんだよ」


「なにそれ?」



宇田川は眉をひそめた。



「え、知らないのか?」


「俺の実家、山奥だからさあ。ネットとかまともに整備されてねえんだよ。それに、俺の周りには能力者なんて誰もいなかったし。だから俺、異能力の情報ってあんまり知らないんだ」


「入学してから、調べる時間はあっただろうが」



そう言われてしまうとそうなのだが、なにせ



「端末の使い方がいまいち分かりづらい。家にはパソコンもなかったし」



太一も含め、周りの人間が固まっている。

田舎者に対する評価なんてそんなもんだ。

宇田川は我に返ると



「筋金入りのアナログ人間なんだな……、本は? 学校の図書館」


「……一応探したけど、そんな項目なかったぞ。ん、でもあれか? 表紙の色だけ違う二冊の本があったな。目次が一緒だったから、片方しか読まなかったけど」



宇田川には思い当たる節があったようで、



「もしかして、本のタイトル、『異能力全集・上下巻』じゃないか?」


「うん」


「それ、型別に記載してるんだよ……。内容が一緒なのに上下になってる時点で気づけよ」



ほっとけ。

しかし、ここで太一が思いがけないことを言う。



「でも、それなら朗報があるぞ? 多分、おまえ〈範囲型〉だ。お悩みが一つ、解決すると思う」


「え?」



彼が言うには、「能力が完成している」そうな。



「通りでおかしいと思ったんだ。そりゃ〈直結〉と〈範囲〉のこと知らないなら、そう卑屈にもなるわ」


「世間知らずで悪かったな……」



なるほど、向こうとしては、俺は常識を知った上で、あんなことを言ったと思ってるらしい。


希望が見えたのはいいが、一つ疑問が。



俺の能力を評定したあの先生は、どうしてそのことを言わなかったのだろう?



◆◆◆



「今となっては、その理由も分かるだろう?」


「分からないことはないですが、これ以外の事情の複雑さが事態を面倒にした気もしますけどねぇ……。『システムの切り替え』、『当時の軍の内部事情』、『俺の能力』。まあ要素はそれ以外にもあるでしょうけど」


()()が表舞台に姿を現したことで、世界情勢がひっちゃかめっちゃかになったからねえ。君のすさんだ青春時代は、あれのせいだと言っても、過言ではないかもしれない」



青年は気まずそうに目をそらす。



「そうですかねえ……、例え、《社長》の介入があのタイミングではなかったとしても、俺は同じ青春を送っていた気がしますよ」


「そうかい? なら、話を少し進めようか」



鶴宮は10杯目の紅茶に手を伸ばす。

この人、尿意とか感じないのだろうか。



「調べた限りでは、君の能力における、()()の成長イベントだからね」



鶴宮の目の色が変わる。

貫くような、鋭い視線。



「最強になれない君は、どうしたのかな?」

さて、主人公どこまで行けるのでしょうか。


ちょっとでも面白かったら、上のブクマ登録や、下を開いて文章、ストーリー評価のほど。

よろしくお願いします!


次回は8月26日、更新予定です。

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