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どんな計画にも、複数のプランは必要。

 保健室登校の生徒と言えば、無口そうなイメージがある。

 それに、放課後まで残っているなんておかしい話だ。


 というか、なんで保健室に保険教諭がいないんだ?

 不在の札を見て、文句を心のなかで垂れ流しながら、引き戸を開ける。

 が、



「よし、俺の勝ち!」


「くっそう!」



 机を挟んで、二人の男子生徒がいた。

 二人とも体格が似ている。顔も、こう言っては悪いがオタク顔だ。

 しかし、どう見てもトランプをエンジョイしているようにしか見えない。

 ちなみに、ゲーム内容はスピード。



「これで俺の3勝だな!」


「今日は調子悪いなあ。連敗とか久々だわ」



 完全に俺の存在はスルーされていた。

 この人たちが、生徒会が警戒する相手?



「あの~……」


「うん、誰だおまえ?」



 勝った方の先輩が、今気づいたと言わんばかりにこちらを見た。



「生徒会に歯向かおうとしてるのって、先輩方でいいんでしょうか?」



 すると今度は負けた方の先輩が、



「きみ、この間の事件で活躍した生徒でしょ? なに、俺たちと一緒に戦ってくれるの?」


「いえ、違います」



 ええい、面倒な人たちにも面が割れている。



「じゃあ、生徒会の回し者? 最近、一年生を迎えたってきいたけど」


「それも違います」



 そこまで聞いた二人は、眉をひそめた。



「なにを嗅ぎ回ってる?」


「いえ、軍人を恐れない先輩たちの勇姿を見に来たんですけどね。保健室登校だとは思いませんでしたよ」



 この先輩たちは軍人の家族ではないそうだ。

 では、なぜこんな横暴が許されているのだろう?



「俺たちは生徒会の弱味握ってるんだ。あいつらは俺たちの言うことならなんでも聞くんだぜ? この保健室だって、先生を追い出すように生徒会に圧力をかけたのは、俺たちだ」



 ……こっちも思った以上に悪役っぽいなあ。

 なんか聞いてた話と違う。

 太一から聞いた話だと、もう少し敵意や憎しみを抱いているような気がしていたのだが。



「先輩たちって、生徒会とこれから正面衝突するってうわさがありますよね? 実際のところ、どうなんです?」



 一応、確認せねばなるまい。



「え? ああ、そうだな?」



 おい、露骨に動揺してるじゃないですか?



「四月もあと少しで終わりますけど、いつになったら生徒会の椅子を奪うんです?」



 俺の畳み掛けに、二人とも目が泳いでいる。

 もしや、嘘でもついていたのか?

 だとすれば、今すぐにでも太一を解放せねばなるまい。

 あいつの料理は楽しく作った方が美味しいのだから。

 あんな重圧まみれの料理は、もう食いたくない。



「もしそのつもりがないなら、それでいいんです。じゃあ―――」



 保健室を辞そうとした俺を、二人がつかんだ。



「……なにするんですか?」


「計画邪魔しやがって!」



 反射的に、能力を発動せざるを得なかった。

 直後。



「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――――――――――ッ!!!!!!」



 負けた方の先輩の口から、爆音が流れてきたのだ。



 音も、《振動》。

 自身の能力で、音を増幅させている。


 いきなり戦闘か!

 こん畜生!



 ◆◆◆



 〈太一目線〉


 遠くから爆音が聞こえる。

 倉橋先輩が警戒体勢をとりながら



「会長! 今のって……」


「間違いないな。全員、戦闘準備!」



 会長の号令で、全員が能力を発動する。

 だが、様子がおかしい。

 こちらに来る様子がなく、別方向に向かって被害が拡大していく。



「あの、やばくないですか?」



 伊藤が冷や汗を流している。

 昼休みに、学校じゅうに悲鳴が鳴り響く。


 だけど。

 氷室会長は被害の根元を見ながら、





「………………………………へましやがって」






 うん?



 ◆◆◆



 とりあえず、能力を出したまま、廊下に移動した。

 今回ばかりは、逃げてばかりもいられない。

 というか、怒りを覚えていた。

 さっきの先輩たちの態度からして、生徒会襲撃は間違いなく嘘だ。

 そのせいで連日連れていかれた太一のことを思うと、腹が立ってきた。

 さて、どうしますかね。


 片方は俺と同じ《障壁》。当然俺よりも応用が利くので、《壁》を円錐のようにして俺の方に突進してくる。

 さっきの爆音の先輩は、今度は右手で拳を作っていた。その周辺の景色が波打っている。

 ……振動エネルギーを拳から放っている?

 接近戦にするつもりか。


 俺に先手を打たせないためか、二人同時に俺の方に飛んでくる。



 さて。

 しかし、非常に悲しいことに、俺の異能力の戦闘スタイルは、キックやパンチなどの攻撃は一切できない。


 なにせ手足より先に、展開した《壁》が相手に触れるのだから。つまるところ、俺が攻撃に転じる場合は総じて―――



「「ごはっ!?」」



 10割、体当たりである。

 大きめのボールが当たると思ってくれればいい。

 ただし、二人に当たった部分には、強い弾性を付加したので、二人は廊下の橋まで見事に吹っ飛んだ。

 一人は打ち所が悪かったのか、気絶した。


 さて、全力展開していることを思うと、残り時間は2分30秒といったところか。



「くっそ、なんでおまえがくるんだよ!」



 違和感しかない台詞だったが、今は気にしている余裕がない。

 《障壁》の先輩が、円錐状の《壁》を細く、短くした。

 例えは悪いが、三角帽を手に嵌めたような状態だ。

 それが両手。


 向こうの狙いは、《障壁》の弱点だろう。

 この能力は、なにもなければ長時間の維持が可能だが、ダメージが蓄積すると、短時間で《壁》は壊れてしまう。


 また、俺のように全方位に展開してる場合、「点」の攻撃を食らうと、それだけで崩壊する場合もある。

 もし俺が相手の立場でも、同じ選択をするだろう。



 だからこそだ。



「うわああああああああああっ!!!!!!」



 俺は、自分の《壁》を最大限に硬質化させる。




 ゴキュリ。



「ぎゃあああああああああああっ!? な、なんてことしてくれんだあああああ!?」



「知るかボケぇ! おまえもだし巻き玉子地獄味わうかぁ!?」



 俺の能力の、唯一のアドバンテージ。

 絶対防御!


 砕けたのは、相手の《壁》。

 ただし、勢いだけはよかったので、無防備になった両手で思いっきり俺の《壁》を殴ったのだ。

 ちなみに、俺の《壁》は、コンクリートを越える硬さだ。

 それを素手で殴ればどうなるか。

 想像には難くない。


 が、ここで能力が切れてしまった。

 しかし、問題はない。



「先輩方よ、なにを企んでいるんですかぁ?」



 俺は、手を押さえて踞っている先輩にゆっくりと近づく。



「俺も不必要な争いはしたくないんですよ。全部、吐いてもらえますよね?」



 先輩は、カチカチと歯を鳴らしながら



「わ、分かった! で、でも俺たちの頼みも聞いてくれ!」


「吐いたらね」



 ◆◆◆



 あれだけ大規模になってしまったので、当然、他の生徒や先生の目についた。仕方ない。怖い大人たちがゾロゾロとこっちにやって来る。

 しかし結局、壊れたものは特になかったので、先生たちも俺や先輩たちを怒ることはしなかった。

 いいのか? それで。


 それにしても。

 生徒会のあの眼鏡。とんでもない野郎だった。


 あの先輩二人は、生徒会に逆らっていたのではなく、むしろ奴隷のような扱いを受けていたようだ。



「ひ、氷室会長から、『生徒会に逆らうフリをしろ。そうすれば安全は保証してやる』って命令されただけなんだ! それ以外は、本当になにも知らないんだ!」



 どうやら、雰囲気だけを醸し出せばいい、ということだ。

 要するに、氷室の自作自演。

 問題は、目的だ。


 校内で起きた問題の解決、という功績がほしいなら、むしろなにも起こさず、平和な学園を維持すればいいだけの話だ。

 俺個人としては、悪役をやっつけるヒーロー像に溺れているのでは? と考えた。


 ただ、それだと1年生である二人を巻き込んだ理由が不透明だ。

 なにもあの二人を呼ばなくても、生徒会には十二分に戦力があるのだから。



「で、そっちのお願いは?」


「俺たちが生徒会にやられる前にやられたってばれたら、どんな目に遭うか分からない! なんとかしてくれ!」



 割りと無茶な頼みではある。

 が、一つアイディアが浮かんだ。



「……生徒会に名乗り出ろと。まあ、それもいいかもしれませんね」



 今日はもう、異能力は使えない。

 さて、行きますか。



 ◆◆◆



「……君があの二人を?」


「ええ。言いがかりをつけられたので」



 生徒会の面々は、異様な雰囲気に包まれていた。

 なんだかんだ言いながら、会長以外は本気で警戒しているようだ。

 ただし、張本人である会長は、涼しい顔をしながら、俺に対する聴取を始めた。


 視界の隅の方に、俺を凝視している伊藤と太一が映った。



「生徒会に対する反抗勢力を潰したんですけど、これって謝礼とか出るんですか?」


「おい、おまえ」



 なんかヤンキーのような女の先輩が、俺の胸ぐらをつかむ。



「……ぶちのめされてえのか」


「アンリ、やめておけ」



 会長の言葉に、渋々ながらも従って、俺は解放された。



「まあ、冗談はさておき。これで、こいつら二人が生徒会にいる理由はないですよね? いくら生徒会の仕事とはいえ、四月も下旬に差し掛かろうとしているにも関わらず、全く授業を受けられないのは、学校としておかしくないですかねえ」



 交渉にしては、まずい言葉のチョイスであることは分かっている。

 それでも、俺は怒りを抑えることができずにいた。

 ここに来るまでに、考えた。



 氷室の今回の自作自演には、一体どんな目的があったのか?




ちょっとでも面白いな~と思って貰えたら、ブクマ、評価などを頂けるとモチベーションになりますので、よろしくお願いします。


次回は8月21日更新予定です。

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