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《最強》になりえない彼が、《最恐》と呼ばれる理由  作者: 岡部雷
日常も、昔はそうじゃなかったかもしれない
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ラブストーリーは抜け穴と共に(後編)

太陽上ってないから許してください。

 イライラしたことのない人間は、多分いないと思う。

 普段は温厚な人でも、嫌がらせを受けたり、自分勝手な輩に振り回されたら、いい気分にはならない。


 で、今。


 俺のイライラがピークに達しかけていた。



 ◆◆◆



 見事に壁が崩れた。

 配線の無さそうな場所を選んだものの、向こうと行き来ができるほどの巨大な穴が開いた。

 不気味なのは、これだけのことをしたのに、音が異様に静かなことだ。



「え……ちょ……」



 太一も唖然としていた。

 二人を隔てていた壁には、俺のせいで、人間が余裕で通れる大きさの穴が開いた。



「まあ、こっちの方がよかっただろ? ささっと彼女を迎えに行ってこい」



 俺は友人の背中を押す。事故の処理は後でいい。

 が、その必要はなかった。

 西洋寝巻きに身を包んだ彼女が、穴から飛び出してきたのだ。



 眼、福……!




 いや間違えた。

 たった一日会えなかっただけで、こんな風になってしまうのか。


 勢い付きすぎて押し倒してるし。

 これ、戦場から婚約者とか恋人とか夫が帰ってきたときの反応だ。

 両肩が震え、細い両腕でガッチリとホールドしている。

 太一の胸元に顔を埋めて深呼吸していた。



 ……深呼吸?



 俺はこのとき、異常に気づくべきだった。









 10分経過。










 30分経過。










 1時間経過。

 ここで冒頭に戻る。





「いつまで抱き合ってんだこの色ボケどもがああああああああァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!」





 1時間!?

 こいつら正気か?


 共依存かなにかなのか!?


 壁を壊したことに、後悔が芽生え始めていた。


 二人きりならまだいい。

 俺がいるのに、こいつら完全にスルーしてやがる。

 立役者にそれはないだろう?



 ◆◆◆



「わ、わりい」



 俺の絶叫でようやく離れた。

 なんちゅうもん見せつけてくれてんだ。

 怒りのあまり、二人に正座をさせて俺は説教していた。

 彼女がいるわけでもいたわけでもないけれど。



「おまえらなあ、もうちょっと節操ってヤツを考えようぜ?」


「はい……」

「反省してます……」



 というか、二瓶さんに至っては、俺が叫ぶまで、俺の存在に気づいていなかったようだ。

 真実とは悲しい。



「さて、俺も正直思ってなかったけど、予想外に壁がぶっ壊れたなあ。対策はしてるって聞いてたけど、俺の能力程度で壊れるようじゃ、テロ対策なんて絶対無理だろ」



 もしかしたら、二瓶さんのようなワープの能力を妨害するのに特化させて、物理耐性は大して高くなかったのかもしれない。


 問題はこれからだ。

 もしこのまま壁が壊れたことを報告して、それを修理してしまえば、二人はまた会えない日々になる。

 かといって、このまま隠し通せるのか? と聞かれれば、答えはノーである。


 とりあえず、ばれるまでこのままにしておこう。

 次の言い訳は考えた。



 ◆◆◆



「…………」


「どうしました? またなにか、『いいもの』でも見つけましたか?」


「いや。それより今日華(きょうか)ちゃん。明日はうちのみんな、ちょうど暇じゃない? 久方ぶりに打ち上げでもしない? 金は私が出すからさ」


「社長、なに企んでるんですか?」


「秘書の君に言われると堪えるねえ。私、そこまで信用ないかしら」


「その口調やめて、気持ち悪い。どうして急にそんなことを?」


「会社立ち上げて、今日まで自由気ままにやって来たけど、最近はみんな忙しくて、憩いの時間がなかった気がするんだよ。たまにはパーッとしてもいいんじゃないかと思っただけ。お金は私が全額負担するから」


「……やけに優しいですね。本当にそれだけですか? まるでこれから死ににいくみたいな言い方ですね」


「はっはっはー。君たちより先に死ぬつもりはないなあ」








 ……あながち、間違いでもないかもだけど。





 ◆◆◆



「美味い……!」



 過剰とも言えるスキンシップのおかげで、太一の料理術は完全復活を果たした。

 ところがここで、驚愕の事実が判明する。



「え?」


「だから、俺、料理するのに能力は使ってないんだ。それやっちゃうと、味付け薄いって言われるから」


「ぬわんですと?」



 こいつは能力関係なく、天才的な素質を持っていたようだ。

 食後、今後の対策を話すことになったが、



「先生たちが部屋に入ることはないだろうし、ここの壁は、外からは見にくい。ならまあ、しばらくは大丈夫だろ。俺たち以外の人間をこの部屋に入れなければ、それで済むんだから」



 ボッチを強要していることに気づいたのは、夕食後に家に帰ってからだった。



 ◆◆◆



「おまえのせいで、俺、これからお偉方と会わなきゃいけなくなったんだけど? どうしてくれんの?」


〈鶴宮さん? キャラ変わってない?〉


「やかましい。大体おまえが俺の()()に最初から乗ってれば、こんなことにはならなかったのに」


〈つってもさー、私が()()()()()()()()()()()()()と、君ら無職になるよ?〉


「むしろ俺らは暇な方がいいんだよ……」


〈軍人にあるまじき台詞だね〉


「いや、俺元々軍人志望じゃなかったし」


〈ねえ、なんで軍にいるの?〉


「おまえと違って色々あるんだよ!」


〈…………逆ギレ?〉


「おまえだってそうだぞ? 17年一切表に出なかったのに、なんだって急に出てきた?」


〈んー、世界の脅威が目の前に現れたときの顔が気になった。それだけ♪〉


「まったくもう……。ああそうだ。明日辺り、おまえの会社に総攻撃がある。俺は外されたが、多分夕方から夜にかけてだろうな」


〈それ機密情報じゃないの?〉


「喋ろうと喋らまいと、どうせ結果は同じだ。おまえに後で責められるよりは、軍の機密を流した方が、まだましだからな」


〈……ねえ、ホントなんで軍にいるの?〉

次の投稿ですが、ちょっと予定が詰まってるので2、3日は難しいです。

その間には投稿できるよう、全力を尽くしております。


気長にブクマや評価など、お願いします。

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