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《最強》になりえない彼が、《最恐》と呼ばれる理由  作者: 岡部雷
日常も、昔はそうじゃなかったかもしれない
17/115

ラブストーリーは抜け穴と共に

今回少し長いので前後に分けます。

なお、この話は少しだけ、時系列を遡ります。


順番としては、

休校1日目→新生活の下準備

休校二日目→ラブストーリーは抜け穴と共に〈前後編〉

休み明け→(日中)偶然も重なりすぎると怪しまれる。、ある部分が他人に評価されないのは、他人がそれに無関心だから。(夜)無駄な前振り


という感じです。

ややこしくなってすみません。

 食欲に抗えなかった俺は、休校二日目の昼、こっそり部屋を抜け出して隣を訪れていた。

 以外にも警報などな鳴らず、俺は約1日ぶりに美味い飯を食べようと思っていたのだが。



「どうした!?」



 俺は太一の御膳を目の前に、叫ばずにはいられない。



「このわずかの間に、何があったんだよ!」



 相手は答えない。

 しかし、俺は問い詰めねばなるまい。

 これは、生死に直結する問題だ。



「何で飯がこんなに()()()んだ!?」



 怒っているわけではない。

 あまりの味の変化に、不安と恐怖を覚えただけの話だ。

 メインのおかずは煮物なのだが、ビックリするほど美味しくない。

 あの繊細な味付けはどこへやら。おぞましいまでにしょっぱい。

 具材は所々固いし、別人が作ったと言っても信じるレベルだ。



「え、そうか……?」



 本人は心当たりが無さそうな顔をしているが。

 俺はとりあえず主食と汁物を頬張るが――



「ごはぁっ!?」



 出汁が入っていない味噌汁って、こんなに美味しくないのか?

 米は芯が残っている。おまけに炊き上がりにムラがある。

 自分が作ったとしても、食いたいと思えない。

 彼の実家が食堂だと聞いていたが、こんなものを出されたら、店の評判は地に落ちるだろう。



「マジで何があったんだ……」



 太一は黙っている。

 となれば、答えは一つ。



「二瓶さんと喧嘩でもしたのか?」



 が、彼は首を横に降る。



「じゃあなんだ? ガキ作ったとか言わねえよな? そこまではやってないと信じてるぞ?」 


「その方がよかったかもなあ……」



 oh……



「しっかりしろ太一いいいぃぃぃ!!! ダメだ! この年齢で子どもはダメだ! 色々苦労する!」



 俺は肩を掴んで前後に揺さぶる。



「え? なんだって?」



 まともな会話が成立しないほど、どうやら精神的に参っているようらしい。

 これじゃ飯が不味いわけだ。


 ならばここで一肌脱ぐのが、友人としての務めだろう。



 ◆◆◆



「『会えなくなった』?」



 ややこしいことに、こいつらは自分達の交際をひた隠しにしている。

 人目を忍んでいるため、公衆の面前ではイチャイチャすることも叶わない。

 だが、二瓶さんの異能力《転移門》は、実質ワープだ。

 玄関もベランダも通ることなく、お互いの部屋を行き来していたはずだ。



「それが、使えなくなっただあ?」



 おかしな話だ。

 ワープ系の能力は、「点」ではなく「線」で表現される。「起点の座標A」から、「移動先の座標B」の間に、線がある形だ。

 その線上に、伊藤のような《無効化》の能力者でもいない限り、能力が使えないなんてことはあり得ないはずだ。

 仮にいたとしても、それを避ける()()を描けばいいだけだ。

 物理的な障害は、意味なしと考えて問題はないはずだ。


 だが実際、できなくなったらしい。

 お互いのベランダの窓を開けて試したものの、やはり無理だったそうだ。


 ベランダから移動すればいいのでは? と提案しようかと思ったが、それは監視カメラに映るのでアウトだ。



「なんか、能力を使っての出入りだけできなくなってるんだよな。俺の能力は普通に使えるし」



「そうか。でも、二瓶さん本人が使えないって訳じゃねえんだよな?」


「ああ。それは確認した。だから、変わったとすれば建物の方だ。たぶん、この間の事件で警備を強化したんだろ。去年まではこんなことなかったみたいだから」



 事件が恋路を邪魔していた。

 むむう。


 どうしたものか。



「おまえの《壁》ってさあ、この壁ぶっ壊せないか?」



 とんでもないことを言い出した。

 ストレスでヤバくなってる。



「おまえの親に修繕の請求行くぞ? つか喋ってないのは、たったの2日だろ? 今までだってそういうときあったんじゃねえのか?」



 一度冷静になってもらわないと、法律的にブラックなゾーンを突っ走りそうだ。



「まあ……そういうときは……ないわけじゃなかったけど……」


「ええいはっきりしやがれ、こん畜生!」


「今のあいつの状況がわかんねえんだよ! こういう急な事態に慣れてねえんだ!」



 ただのアホだった。



「人生なんてそんなもんじゃろがぁーーーーーーーーーーー!!!!!!」



 たった1日会えない程度で、俺の食事事情は風前の灯だ。



「いや、そうじゃなくて……」


「ああ!?」


「あいつ、寝るとき一人だと眠れないから……」




 ……

 …………






 ほう。



「添い寝か?」



 太一は黙って頷いた。

 男女付き合いがどういう形であれ、俺は他人のことには口を出さないでいるつもりだったが、今回ばかりは言わせてほしい。



「なんだその羨ましい状況はぁ!!!!!!」



 密着してて耐えるこいつの精神力はとにかくとして。



「で、何? このままだと二瓶さんが睡眠不足になって、成績が落ちるとでも言いたいのか?」


「それもある」



 ……「も」ってなんだ。



「まあいいや。結局のとこ、《転移門》のエネルギーは壁を通過するはずなのに、それができないって話だよな?」


「だから、そう言ってるだろ」



 ふ~ん。



「まあ、壁を壊していいなら、方法はある」


「え!?」



 頼むから、希望に満ちた眼差しを向けるな。


 ともあれ、合法的に壁をぶっ壊すアイディアが閃いたのも、また事実である。



「そんかわり、先生にちょっと怒られるけどな」



 ◆◆◆



 若手教師、小宮山は新任直後から、てんてこ舞いだった。

 大量の雑用は、まあ予測していた。

 ところが、前代未聞のテロリストの襲撃により、学校に苦情やら、マスコミからの取材やらの電話がひっきりなしに鳴りまくっていたのである。

 軍はもう、『対策はした』と言って、それ以上の質問は許さなかったらしい。

 おかげで、お鉢がこっちにほぼ全て回ってきていた。


 ところが、彼にとって一番の災難は、生徒からもたらされることになる。



「おい小宮山センセ! 生徒から内線が来てる。悪いがい相手してくれ!」



 携帯、その他二つの受話器を抱えた教頭が、器用にマイクを押さえながらこっちを見ていた。

 繋がる内線電話の受話器からは、男子生徒の声が聞こえてきた。



「はい、どうしました?」


 〈あのお、先日のテロリストなんですけど、もう捕まったんですか?〉


「ああ。捕まったよ。気になってた?」



 すると、相手は一泊おいて、



〈うちの寮って、物理耐性は大丈夫なんですか? この間みたいに、怪力の相手が来て壁が壊されました、じゃ怖くて眠れないんですけど〉



 真っ当な質問だった。

 確かに、事件が起きるまでは、学校の()()には、とある企業によって対策がされていたものの、内部の建物までは適用外だった。

 その理由は、膨大なコストである。なにかペンキのようなものを塗るとは聞いていたが、1グラムでウン十万円もするのだから驚きだ。

 ただ、今回は緊急事態のため、その企業の厚意でなんと無料で提供されているともっぱらの噂である。



「大丈夫だよ。その点も、既に改善は終わってる。壁の物理的な破壊もできないように、強度も増してるから」


〈じゃあ、試してもいいですよね?〉


「試す?」



 意図を組みかねた小宮山は、おうむ返ししてしまった。



〈壁をぶっ壊す実験してもいいですか? 自分の能力で試さないと、納得できないです〉



 小宮山は少しイラッとしてしまった。

 この事が、後に彼の運命を大きく変える。



「あのねえ、おまえもう今年16になるんだろ? やっていいことと悪いことの区別くらいつけろや!」



 つい怒鳴ってしまった。

 ところが相手は、怒るでも、泣くでもなく。



〈先生は、あの教室にいたんですか?〉



 淡々と、冷静だった。



〈俺はいました。あのときは大勢だったから良かったですけど、一人の時に襲われたらどうすればいいんです? 対策したんだったら、その証拠を見るくらい構わないでしょう?〉



 しまった、と思ったがもう遅い。

 会話の内容は全て録音されている。

 せめて生徒の名前を聞いておくべきだった。

 不安に刈られている生徒に追い討ちをかけたなんてことが知れたら、折角教師になったのに、クビになってしまう。



「……分かった。責任は俺がとるから、遠慮なくやれ」



 彼には、自信があった。

 壁は、絶対に壊れない。それは確実な()からの情報だから。



 ◆◆◆



「――よし、太一。ちょっと下がってろ」



 内線を切った俺は、二瓶さんの部屋側の壁あたりにある、太一の家具をどけた上で、能力を発動する。

 部屋の高さも考え、《壁》の半径は1メートルほど。



「な、なにするつもりだ?」



「ああ? 決まってんだろ。ぶっ壊すんだよ」



 そのための電話だ。

 壁の強度確認。被害者クラスの生徒が言ったのだ。いくら先生でも無下に否定できない。

 もし壊れなかったら、「ああ、良かったです」と言えばいいし、もし壊れたら「ちゃんとしてくださいよ」で済む。

 俺が必要としたのは、あくまで「壁を壊す()()()」だ。

 どういう結果になるにしろ、この壁への攻撃はきちんとした理由がある。

 それだけあれば、十分だ。



 俺は、後ろ半分に弾性を、前半分を硬質化させる。

 そのまま後ろに下がって、壁で反発させる。












 綺麗に穴が開いた。


 ダメじゃん!

主人公の最恐伝説、実はこれが記念すべき第一話です。


後編は8月6日、更新予定です。


続きが気になったら、ブクマなどお願いします。

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