ある部分が他人に評価されないのは、他人がそれに無関心だから。
間に合った~(・_・;
《壁》は触ることができるのだから、《物質生成系》ではないか? と思ったのだが、実際には違うらしい。
小宮山先生によると、この系統の能力によって産み出される物質は、見た目が「生物」か「無生物」かによって変わる。生物がやや透明の銀色、無生物が黒。
で、俺の能力である《壁》は、「色がない」。よって、物質がある、とは判断されない。
――説明を聞いたけど、よく理解できなかった。
とにかく、俺の能力は《異質変化系》。となると、移動先は大講堂。
◆◆◆
生徒全員を収容するのが目的とあって、大講堂はかなり広い。
しかし、内部は薄暗く、ステージ付近がぼんやりと見える程度だ。
壇上に、一人の先生がいるだけで、他には生徒も先生もいない。
なぜか突っ伏している。
俺は恐る恐る声をかけてみた。
「あのう、《異質変化系》ってここでいいんですよね?」
「はわああああっ!?」
寝ていたらしい。
良く言えば、俺たちの担任よりは、よほど熱意に溢れていそうな。
悪く言えば、元気が空回りしていそうな。
ショートヘアがよく似合う、愛嬌に溢れた顔付きだ。
「へっ!? は?」
テンパっている。
大丈夫だろうか、この人。
「あ、君は確か、この間襲われたクラスの――」
「榎本優哉です。能力は《障壁》です。よろしくお願いします」
俺はペコリと頭を下げる。
どうやら有名人になっていたようだ。
「あー、そう。えと、私が今回の審査員を務めます、花田香織です。じゃあ、これから説明を始めますね? 壇上に登ってきてくれる?」
待て待て。俺以外、誰もいないぞ?
「大丈夫。毎年この部門は人少ないから」
にっこり笑って言っているけど、そういう問題じゃない気がする。
「じゃあ、まず能力を見せてくれる? できたら全力で」
審査なので仕方あるまい。
俺は能力を発動する。
目には見えない球体状の《壁》。
俺の位置は常に球の中心になるため、全力で展開すると宙に浮かぶ。ざっと見積もって2メートルほど。
直径が6メートルにもなると、さすがに講堂のステージも狭く感じる。
先生は何やら双眼鏡のようなものを通して俺を見ている。
「ふ~ん……」
思案顔になったかと思いきや、タブレットをスクロールしだす。
「……事前に出してもらった自己評価表を見る限りだと、その能力は、持続するのが最長で5分だったよね? しかも、一度使うと24時間は使えないって。その上、その中に他人を入れることはできない」
「はい」
真実とは言え、改めて先生に評価されるとなんだか悲しい。
「その代わり、物理、能力への耐性は上限なし……」
ぶつぶつと呟きながら俺の能力を評価をする。
「D、ね」
「はい?」
「あなたの能力の評価。いくら上限のない鉄壁を誇っていても、最長5分はマイナスの要素が大きすぎる」
容赦のない評価に、俺はおずおずと尋ねる。
「あのう、それは何段階評価ですか?」
「AからEの5段階評価よ。当然でしょ?」
笑顔でも、酷評は酷評だ。
なんてこったい。
「やっぱり、《障壁》の能力で持続時間が短いのは問題なんでしょうか?」
「そうね。この能力の評価は、時間によるところが大きいから。防御の高さは、全体の2割くらいの評価にしかならないんじゃないかな」
ひっく!!!
なんじゃそりゃ!?
「な、なんでですか?」
「国がそこに重きをおいてないからよ。まあ、持続時間が人並みにあれば、それに他人を《壁》の中に入れて保護ができるなら、間違いなくAだろうけど」
どっちも無理だ。
「自分しか守れないような能力に、社会が高い評価をくれると思う?」
笑顔でボッコボコにされた。
「せめて時間が成長してくれたら、もう少し変わるかもしれないけどねえ」
追い討ちをかけてきた。
「せ、成長性の見込みは?」
「あなた次第ね。この審査じゃ、そこまではわからないから。審査の詳しい内容は、後日届くから」
唯一の希望、と思うべきか?
◆◆◆
教室に戻ると、何名かはすでに戻ってきていた。
審査は終わった順に戻っていいことになっているので、これからはフリータイムだ。
「おう、榎本、どうだった?」
声をかけてきたのは、先日の事件で先生に立ち向かっていった生徒だ。やられたけど。
彼の名前は宇田川文和。
改めて対峙してみると、身長は170ある俺よりも高く、筋肉もがっしりとしている。
レスリング選手のようだ。
眉濃いな~。
「暫定でDだった。最低評価じゃなかっただけましだ」
「そっか……俺、暫定でBだった」
少し申し訳なさそうにしている。それは雰囲気で察した。
いくら実戦で負けたとは言え、あれは相手が悪すぎた。
きちんと審査すれば、それくらいの評価は出るだろう。
「でも、榎本があの先生やっつけてくれたんだろ? もっと評価されたほうがよくね?」
彼の気遣いは非常に嬉しいが、〈能力の評価〉と〈実戦での評価〉は違う。
しかも、俺が倒したわけじゃない。気絶していた彼は、まだ詳細までは知らされてないようだった。
あーあ、しんどい。
俺は、自分が先生を倒したわけではないことを伝えた上で、
「こればっかりはしょうがねえ。まあ、鍛えるのはこれからだし、そっちに期待するよ」
どうなるか、まだわからないけど。
「そう言えばさ、桐山が伊藤にまたけしかけたらしいぜ?」
桐山って誰だ、と思ったが「また」と言っているということは、あのポニテガールだろう。
全身が細く、太一と同じタイプの体つきだ。
「《無効化》相手に?」
「それが、審査担当してる先生が、《能力無効系》の能力者を連れて、あっちこっちの審査会場を回ったみたいなんだ」
宇田川はそこから先は語らなかったものの、だいたいの予想はつく。
恐らく、審査しているその場で、伊藤たちに《無効化》をさせたのだろう。
《無効化》以外の人間からすれば、大事な審査を邪魔されたわけだ。
怒る理由にはなるだろう。
でも、先生たちの間では話がついているに違いない。そうでなければ、そんな暴挙は許されない。
「で、どうなったの?」
「桐山が異常にキレたみたいでさ、朝と似たような感じになった。ただ、それで二人とも、先生たちに怒られてた」
今朝は、逃げる伊藤を桐山さんが追いかけて、追い付いたと思ったら能力を無効にされたのだ。そのお陰で、制御を失った大量の水が、慣性にしたがって、軌道上にいた俺の背中を直撃したわけだ。
俺や他人の服が吸った水は、彼女の能力で取り除いてくれた。
が、伊藤はそのままにされたせいで、午前中からジャージだた。
「それで、二人で放課後草むしりだってさ。いくら罰でもさ、あんな可愛い人と二人きりって、羨ましいよな」
宇田川が鼻の下を伸ばしている。
だが、それを聞いた俺としては、一つ気になる点があって。
「二瓶さんっているじゃん。あの人も可愛いよな?」
それとなく振ってみた。
他の女子には申し訳ないが、顔面だけなら二瓶さんは別格すぎる。
「う~ん、確かに美人だよ。認めよう。ただ……」
「ただ?」
「なんか男にスッゲェ甘えてそうな雰囲気あるじゃん? だから見てても損した気分になるんだよなー。付き合ってるやつとかいるのかも」
今日一番の恐怖は、変態じみた観察眼を持つ彼だった。
◆◆◆
全員が無事に戻ってきたが、桐山さんだけは憮然としていた。
対して伊藤は、ジャージまで濡れていた。
出席番号順で席が並んでいるため、俺の斜め後ろが伊藤だった。
「ジャージ、貸そうか?」
「まじ? 助かるわ~! 明日洗って返すから!」
ちなみに、この後。
またちょっとしたことで点火してしまった、伊藤と桐山さんの喧嘩により、俺のジャージは修復不可能なレベルでボロボロになってしまうことを、このときはまだ知らない。
一回着ただけだったのに……。
なんとですね、700PVを越えました!
なぜこんなに中途半端な数字なのかと言いますと、500でだすつもりだったのが、いつの間にか過ぎてたんです。
ご覧になってくださって、本当にありがとうございます!!!
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