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ミッドガーデンの神プレイヤー ― 無課金の俺が伝説の救世主になるまでの軌跡 ―  作者: まさな
第六章 変わりゆく世界

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第五話 帝国兵

 俺はミホ、ナツキ、ユキのパーティーメンバーと共にエリアを移動してダークセイン帝国の近くまで来た。

 〈黒き魔女〉のフェルディア王国滅亡の預言と討伐命令だが、あの大広間の雰囲気からして、最初から計画してあったに違いない。

 準備万端の帝国軍がすでに進軍を始めているはずだ。

 もう一方、リアルの方では小雪が雪代さんと一緒に誕生日祝いの準備をやってくれているだろう。

 ここは帝国兵を倒しつつ深雪をしっかりとゲームで足止めしておかないとな。


「あれだ」


 俺は少し先を指さした。

 黒き獅子の紋章。

 崖の下を帝国旗を掲げた兵の一団が行進していく。


「ちょっと数が多いっスね…。黒いサーコートの騎士みたいな強さだとヤバいっス」


「ま、全員があんな強さってことはねえよ。装備も違うしな」


 ナツキが言う。


「どうするの? リュート」


 ユキが聞く。


「そうだな、まともにぶつかるのはよそう。小手調べに小さな部隊をやってみてからだ」


「それが良さそうね」

「そうっスね」

「ああ」


 みんなが同意してくれたので、孤立している10人ほどの部隊を探し、ぶつかってみた。


 もちろん、背後からの奇襲だ。

 

「ぎゃっ!」

「な、なんだ?」

「て、敵し――」


 あ、弱いわ、こいつら。

 鉄の胸当てを着ている兵士なので強いのかと思ったが、一撃で倒せてしまった。

 倒れた兵はこれもモンスター扱いなのか、ボフンと煙となって消えた。

 ドロップは金だけ。


『〈不確定名:帝国兵〉を倒しました。経験値25と45ゴールドを獲得』


「よし! いいな」


「この兵は名称〈センチネル〉、レベルは10ですね」


 ミホが敵の名称と強さを教えてくれた。

 

「楽勝か。ならドンドン倒して行こう」


「お、やっちゃうっスか」

「おし!」

「まあいいけど」



 今度は全身鎧(フルプレート)の騎士が混じっている百人ほどの部隊。

 他の部隊に気付かれるのは覚悟の上だ。

 どのみち俺達冒険者はログアウトすればセーブポイントまで一気に戻れるので、フィールド上で囲まれる心配は無い。


 今度も背後から奇襲するが。


「何事だ!」

「敵襲!」


 さすがに、向こうも態勢を整えて反撃してきた。


「おおっ?」


 俺に剣を振り下ろしてきた騎士がいたのでこちらも剣で防ぐが、そこそこの力があった。

 斬りつけても剣で弾かれて攻撃が通らない時がある。3回のダメージを当てて倒せたが5回の攻撃回数を必要とした。

 俺が騎士を倒し終わった時にはみんなが他を全滅させていたので、楽勝と言えば楽勝だけど。


「今の騎士は〈ナイト〉、レベルは20っス」


「もっと大きな部隊でも余裕そうね」

「もっと歯ごたえのある奴とやろうぜ。アタシはカルマは上げたくないし」


 俺はこのくらいの敵が良いかと思ったが、ナツキはもっと強い奴がお好みらしい。


「じゃ、ナツキのカルマが上がらない程度のそこそこを探してみるか」


 もう少し規模の大きな部隊を探す。相手はパッシブでこちらが近づかない限りは襲ってこないので、探し回るのはそれほど難しくなかった。


「お、リュート、あそこに騎兵がいるぜ。ちょっとやってみよう」


 ナツキが馬に乗った騎士を見つけた。ちょっと強そうな気もするが、数は5騎だけ。


「よし、やるぞ」



 またまた奇襲。ぶつかってみて気付いたが、こいつら、馬と騎士のHPが別々だ。

 最初に俺は馬を斬っていたので、騎士が自分の両足で立った時にちょっとビビった。


「おおっ?! いてっ!」


 やられた。ダメージは22ポイント。一割くらいのダメージを食らう。集団に囲まれるとヤバそうだ。


「ふう、倒した…」


「楽勝楽勝」


「ちょっと強かったっスね。こいつらは〈キャヴレイ〉、Lvは30っス」


 馬に乗った騎士はワンランク上か。


「このくらいのレベルならカルマも上がらないと思うけど」


 ユキが言う。


「いや、まだまだ。もうちょっと歯ごたえのある奴とやろうぜ!」


 ナツキはまだ物足りない様子。

 ま、ゲームだしな。付き合ってやろう。


「よし、じゃ、次だ。ただし、部隊は少数にしておくぞ」


「「了解!」」



 黒マントを着けた騎兵がいる部隊を見つけた。鎧もなんだか立派だ。

 強そうだが、黒マントは一人だけで、後は普通の騎兵や兵士なので、なんとかなるか?


 みんなで頷き合って、奇襲してみた。


「前衛下がれ! 騎兵は左右から囲め!」


 おお、黒マントが兵に指示を出している。隊長ってところかな。


 俺のレベルだと苦戦しそうな気がするので他の雑魚を相手にする。隊長はナツキが一人で相手をした。


「くっ、こいつ、強い!」

「回復は任せるっス!」


 他の雑魚を一掃した後で、俺がバリアやファイアソードなどの支援魔法を使ってやり、ようやくナツキが倒した。


「やー、あいつ、腕前も凄かったぞ!」


 興奮気味のナツキは楽しそうだが。


「今のは〈ハンドレッド・キャヴレイ〉、Lv45っス」


 百騎長か。


「じゃ、ナツキ、この辺で妥協しとけ」


 俺は言うが。


「うーん、もう一声。パーティーなんだしさ、一番強い奴を見ときたいじゃん」


「ええ? それ、ボス級になるんじゃないのか…?」


「ボスなら私が気配のスキルで分かるから、その時は中止しておきましょう」


 ユキが言うので、次で最後という約束にして、探してみる。


「いたっス。強そうなのが。ユキさん、気配はどうっスか?」


「ボスでは無いわね。ただ、ちょっと強そう」


「よし、じゃ、全員でやろうぜ!」


「死に戻りしそうなら逃げるからな」


「おう」


 奇襲を仕掛けたが、部隊の真ん中にいる強い奴には届かないので、普通の戦闘になった。


「ええい、相手は手練れの冒険者、すぐにここに援軍を集めろ!」

「はっ」


 おお、仲間を呼ぶタイプか。

 そうはさせじと俺が騎兵の伝令を一人倒したが、一人は取り逃がしてしまった。


「くっ、こいつ、ヤバい! ミホは近づくな」


 ナツキが言うが、早くもHPを半減させてるし。


「逃げるぞ」


「待って、やれるわ。【氷絶死獄乱舞(コキュートス)!】」


 ユキが必殺技を使った。ゴブリン戦を思い出してヒヤリとしたが、問題無く敵を全滅させることができた。


「さすがっス! ユキさん!」

「やるなあ」


「まだ敵の援軍が来るぞ」


 騎兵が土煙を上げながらこちらに走ってくるのが見えた。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「お兄、準備できたよー」


 帝国兵を倒していると、外部音声のアイコンが出た。誕生日パーティーの準備が整ったようだ。


「じゃ、いったん昼休憩にしよう」


「ええ」

「そっスね」

「飯か」


 アイテムはドロップしていないので分配もせずにそのままログアウトする。


 ベッドから起きて部屋を出ると、ちょうど深雪も部屋を出てきた。


「なに?」


 俺の視線を深雪が気にした。


「いや、何でも。行こう」


 階段を降りて台所に行くが。


「「「 お誕生日、おめでとう! 」」」


 クラッカーを鳴らす小雪達。


「ええ? もう、そんな派手にしなくたっていいのに…」


「いいじゃん。家族のビッグイベントだよ、お姉」


「そうだぞ。水沢家はこういうやり方だ。ガハハ」


 親父が臆面もなく言った。ここ数年、派手なパーティーなんてやってないが、そこは俺も黙っておく。 


「じゃ、座って座って。ロウソクもあるから、カーテン、閉めないと」


 雪代さんと俺でカーテンを閉めて、ホールケーキのロウソクに火を付ける。

 二段ホールケーキとは豪華だな。


「来年からは三本くらいでいいわ」


「お姉、そこは、来年は彼氏とするからって言わないと、ひひひ」


「ええ? もう。その話はいいから」


 ちらりと俺を見た深雪がロウソクを吹き消す。


「よっ!」

「おめでとー」

「「おめでとう」」


 拍手して盛り上げ、カーテンを開け、ケーキを切り分ける。手羽先やフライドポテトやサラダもある。

 ノンアルコールのシャンパンも親父が栓を開け、ポンッといい音を立てて栓が飛んだ。


「じゃ、深雪ちゃん、父さんと母さんからのプレゼントだ」


「ええ? ありがとう。開けていい?」


「もちろん」


 深雪が開けて見ると銀色のちょっと高級そうな腕時計だった。


「わー、いいね!」


「これ、高かったんじゃないの?」


「いいえ、そんなに高くなかったわ」


 雪代さんが答えるが、大人の高くないってどの程度だろうな。


「そう、ありがとう」


「パパー、ボクも誕生日は腕時計がいい!」


「よーし、じゃ、小雪のプレゼントも腕時計にしてやろう。竜人もそれでいいな」


「ああ、まあ、いいけど」


「あら、違うのが良いなら、言って良いわよ、竜人君」


「いやー、特には。腕時計で良いよ」


「お姉、ボクからのプレゼントはこれね、はいっ!」


 小雪が包装してある小箱を渡す。


「ありがとう」


「早く開けて開けて!」


「びっくり箱じゃないの?」


「んもー、お誕生日にそんなのするわけないじゃん。お姉はひねくれすぎ!」


 ぷりぷりして怒ってみせる小雪。

 ユキが箱を開けたが。


「ああ、へぇ…」

「ほう、指輪か」

「あら、いいじゃない」


「どう? 気に入ってくれた? お姉ちゃん」


「まあ、そうね。学校は無理だけど、休みの日に付けるわ。ありがとう」


 割と気に入ったようだ。


「俺からはこれだけど…」


「まさかこれも指輪じゃないでしょうね?」


 露骨に警戒する深雪。


「いやいや。違うよ。開けてみてくれ」


 俺のプレゼントは群青色のハンカチだ。


「あ…」

「あら、いい色ね」

「ハンカチか、いいんじゃないのか、使いやすくて」

「ボクはアクセサリーがいいって言ったんだけど、お兄は無難だからこれがいいって」


「ど、どうかな?」


 俺はちょっと緊張して聞く。

 気に入らなくても良いが、受け取れないとか、すぐ捨てるのは勘弁して欲しい。


「う、うん、ありがとう。大切に使うわね」


 深雪は照れたような声を出すと、ハンカチをしっかりと大事そうに握りしめた。

 おお、良かった。悪くなかったようだ。ほっとする。


「えー? なんかボクのより凄い反応が良いし。やっぱお姉とお兄はセンスが地味だよねー」


「うるさいわよ、小雪。派手なら良いってものでも無いでしょう。それに、あなたのプレゼントも嬉しかったから」


「そ。じゃあいいけど。で、肝心の彼氏のプレゼントは何だったの?」


 小雪が聞くが、その彼氏って俺のことだったからなぁ。


「ええ? それは内緒よ」


 深雪も言うに言えず、ちょっと不機嫌そうにごまかす。


「あ、ひょっとして今夜のホテルご招待だったりして!」


「ええ?」


「むむっ、明日は学校があるし、遅くなるのはダメだぞ」


 親父が反対するが。


「もう、小雪の冗談だから。ホテルに行く予定なんて無いわ」


「そ。じゃあ、その話はそこまでにして、食べましょ」


 そこは雪代さんが取りなして、美味しい食事となった。

 久しぶりの笑顔の食卓かもな。

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