第二話 忘れていた冒険者ギルド
「おう、サンキュー」
俺がレーニアに預けていた宝石のガーネットとマラカイト。
結果は……。
【名称】 深緋の腕輪
【種別】 腕輪
【材質】 ミスリル、ガーネット
【効果】
防御基本値+30
防御率+2%
平均防御力+1
無効化+2%
魔法抵抗力+10
炎耐性+20%
【耐久】 10000/10000
【重量】 1
【総合評価】 B
【解説】
宝石をはめ込んだ腕輪。
炎除けの力が込められている。
誰にでも扱える軽さ。
防御できる範囲は非常に狭い。
〈装備可能〉
【名称】 淡緑の腕輪
【種別】 腕輪
【材質】 ミスリル、マラカイト
【効果】
防御基本値+30
防御率+2%
平均防御力+1
無効化+2%
魔法抵抗力+10
毒無効
【耐久】 10000/10000
【重量】 1
【総合評価】 CCC
【解説】
宝石をはめ込んだ腕輪。
毒除けの力が込められている。
誰にでも扱える軽さ。
防御できる範囲は非常に狭い。
〈装備可能〉
ふむ、それなりに効果があるが、ブラックオニキスの時より性能が低いな。
前は『宝石師ベティとの合作』みたいな記述が解説にも出ていたのに、これには無い。
「ごめん、これでも【傑作】と【大成功】で出来は良い方だから。前よりはランクが落ちちゃうけど」
「ああ、いいよ。それなりに使えそうだ」
さっそく俺は二つとも腕にはめて装備してみる。
試しに剣を振ると、左腕にはめている二つの腕輪がぶつかってカチャカチャと音を立てるのが気になった。
「お兄、二つだけの方が良いんじゃない?」
小雪が言う。
「そうだな」
敵によって装備を変えてもいいだろう。ひとまず炎耐性の深緋の腕輪はブレスの敵が出てくるまでアイテムボックスにしまっておくことにした。
「じゃ、レーニア、代金はいくらになるかな?」
「うん、出来にしても前より安くしてあげたいから、二つで20万でいいよ」
「わかった」
レーニアに代金を20万ゴールドほど払った。それでもまだ15万ゴールドほど持っている。
今の俺はちょっとリッチだぜ?
「また宝石を見つけたら持って来てね。ベティも大粒の方がやる気が出るって喜んでたし」
「ああ、ベティにもお礼、言っておいてくれ」
「うん、言っとく」
「じゃ、お兄、今日はどうしようか」
「そうだなあ」
レギン師匠の姿が見えないが、たぶん、工房で待ち構えているのだろう。
またしばらくしたら壊れた剣も直したいし、行くつもりだが、今日は違うところが良いな。
それに、クラン戦の真の報酬がまだだ。
「そう言えば、小雪、一日デート券の話って…」
「ん? ああ、お兄、うちのクランが優勝してるし、MVPも取ってるから、大丈夫だよ。ミルミルのデート券はもらえるはずだから」
「お、おう。でも、アイテムボックスに入ってないぞ?」
肝心のデート券が。
「ああ、ふふっ、冒険者ギルドで受け取れるはずだよ」
「おお、なんだそうか、ふう」
「ぱねぇ…、ぱねぇっス」
ミホがこちらに顔を背けて拳に力を入れているが、お前だったか。
掲示板で愛だのなんだのと余計な事を言いおって。
無言で後頭部に素手ベアクロー! ビシッ! ビシッ!
「あうあう、ごめんなさい、ごめんなさい」
「お兄、女の子の髪を乱しちゃダメだよ」
小雪がヘアブラシを取り出すと、一振りで綺麗にしてしまった。この辺はVRか。
「ありがとう、小雪ちゃん」
「じゃ、俺はギルドに行って来るぞ」
「あ、待ってお兄、私も報酬、受け取りに行くから。ミホちゃんも行こっ、沙耶さんも」
「私はもう受け取っているから、あなたたちだけで行ってらっしゃい」
沙耶に見送られ、まだ受け取っていない蒼星騎士団のメンバーと共にぞろぞろとギルドへ向かう。
「おい、見ろ、《蒼星騎士団》の奴らだ」
「スゲーよな、まさかあの《ワルキューレ》に勝っちまうとは」
通りの冒険者やNPC達が俺達を見て感心している。
「小雪、そんなに《ワルキューレ》ってのは強いのか」
俺は気になったので聞いてみた。
「強いね。一番多く優勝してるし、いっつもランキング上位に出てくるもん。人数も一番で、数万人はいるんじゃないかな?」
「そんなにか」
「と言ってもですねぇ、あそこは報酬目当てで参加してるだけの下っ端と、中心メンバーとの差がかなり大きいですよ」
ミホが言う。
「そうか、まあ、そんなもんだろうな」
「あそこはリーダーの面接なんて無理だろうし、そんなもんだろうね。初心者でも入れるし」
「大きな声じゃ言えないですけど、最近はPKメンバーでも裏口加入できるって噂っス」
大規模な組織になればなるほど、構成員の差が激しくなるのは当然のことだ。
《ワルキューレ》は来る者は拒まずという方針のようだし、ミホの言う裏口はともかく、色んなのがいるのだろう。
それにしても、ミホちゃんはミッドガーデンの中だとよく喋るな。
「おっと」
前を見ずにミホちゃんを見ていたら、誰かとぶつかってしまった。
「チッ、いってぇなあ。どこ見てやがる。オレ様は《ワルキューレ》だぞ?」
「すまない、悪かった」
こちらが悪いので謝っておくが、なんだかチンピラみたいなのがいるなあ。
「なあに、アレ。気に入らないなぁ」
小雪がガニ股で歩いて行く男を見てムッとする。
「前はこうじゃなかったのに、柄の悪い人が増えてますねぇ。NPCの店の人も愚痴ってたっス」
ミホちゃんが言うが、困ったもんだね。
少し歩くと靴と翼をデザインした看板が見えた。冒険者ギルドだ。
「そう言えば、お兄、冒険者ランクはどこまで上げたの?」
「いんや、一つも上げてないぞ」
小雪が聞くので俺は肩をすくめる。レベルの方は上げまくったが、クエストやら他のことはあんまりやってないな。
「えー? 報酬の良いクエストも受けられるから、上げた方が良いよ」
「そうか」
「今回の優勝で確実に上がると思うっス」
「へえ、それはありがたいな」
中に入り、空いているカウンターへそれぞれ向かい、NPCの受付お姉さんと話す。
「はい、《蒼星騎士団》の〈リュート〉さんですね。話は伺っております。冒険者ランクがFからCに上がりました。おめでとうございます!」
『冒険者ランクが上がりました』
『Eランク昇進ボーナス、ポーション5個セットを入手しました』
『Dランク昇進ボーナス、鉄のショートソードを入手しました』
『Cランク昇進ボーナス、レッドリザードの盾を入手しました』
「うっ!」
すでにそれより良い装備を持っているので、ありがたみが無い。
売るか…。
「今回のクラン対抗戦の優勝報酬とMVPは王城で授与されることになっています。王城の方へお越し下さい」
「ああ、そうですか」
どうせならここで受け渡しして欲しかったんだが、仕方ない。
「やったー、レアエッグ、ゲットー!」
向こうのカウンターで小雪が喜んでいるが、あれ? 俺だけか。
ひとまず、報酬を受け取ったみんなと合流した。
「へー、お兄は王城へ呼ばれたんだ。そう言えば、前にも沙耶さんは王城に呼ばれてた気がするなぁ」
小雪は、武器のロッド、レアエッグ、百万ゴールド、魔力のかけら五個、レアアイテムのリボンをもらったらしい。
「リュートさんはこれにMVP報酬の上乗せっスよ。おめっ!」
「おめでとー、お兄ちゃん」
「おめでとう」
「おめっとさん!」
みんなもお祝いを言ってくれた。
「ありがとう。じゃ、今からちょっくら行って来るよ」
「あ、ボクも付いてくー」
「わ、私も…いいですか?」
「おう、行こう」
小雪とミホを連れて王城へ向かう。
「おお、あなたは。ささっ、国王陛下がお待ちです。お通り下さい」
今日は門番がすぐに通してくれた。ちょっと気分が良いね。
「って、あれ? どこに行けば良いんだ?」
城の階段を上がったところで、迷った。
「玉座の間だと思うから、マップだと向こうだねー」
小雪が城のマップを持っていたので助かった。まあ、誰かに聞けば分かるんだろうけど。
「ここで宝箱を開けまくったら、どうなるんだろうな?」
俺は素朴な疑問が浮かんだので聞いてみた。
「うん、フツーに捕まるよ。攻略に書いてあった」
「ほー、そうか」
「ま、まさか」
「いやいや、聞いてみただけだぞ、ミホちゃん」
「ふう」
他のゲームならともかく、愛しのミルフィを悲しませるわけには行かないのだ。
城の廊下を進み、途中で衛兵の案内が付いた。
「では、お入り下さい」
観音開きの巨大な扉が自動的に開き、赤い絨毯の道を俺達は真っ直ぐに進む。
大広間には大勢の貴族と騎士達がずらりと整列して立っていた。
え? なんか凄いな、おい。
こういうの、緊張するんだけど…。
「あれが今回の優勝者だそうだ」
「随分と若い」
「優れた鍛冶職人にはとても見えぬな」
「だが、冒険者とは得てしてそのようなものよ」
「数万を超える武具をたった数日で打ち上げたと聞く」
「いったい、どのようにしたらそのような事ができるのやら」
「敵に回したくないものよな…」
ひそひそと貴族や騎士達が囁いている。
みんな笑顔というわけでは無い。
どうも向こうも緊張している様子だ。
やだなぁ、こういう雰囲気。もっとシンプルに「おお、リュートよ、あっぱれである! 褒美を遣わすぞ」みたいな小学生向けのゲームでいいよ。
リアルにすれば良いってもんでも無いね。こーゆーの。
しかも、小雪もミホも雰囲気に飲まれたのか、一言も喋らなくなってるし。んもー。
「気にすんな、たかがゲームだ」
俺は言う。
「そ、そうだね」
「は、はい」
まだ硬くなっているが、幾分かは緊張が取れた様子。
玉座の近くまできた。
すると右脇から――
「よく来たのぅ、〈リュート〉」
青いドレスを着た幼女が、大人びた喋りで声をかけてきた。




