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ミッドガーデンの神プレイヤー ― 無課金の俺が伝説の救世主になるまでの軌跡 ―  作者: まさな
第四章 橋を渡れぬ者

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第十七話 一期一会

「そ、そんなに出しちゃダメよ…」


 深雪が震える声で俺に言う。


「なんで?」


 俺は問う。濃厚な白濁の液体を欲望のままに絞り出しながら、食べ頃の熟れた苺の上にぶっかける。

 とろーりと赤い果肉の上を垂れていくミルクは実に官能的だ。


「なんでって、そんなに出したら――」


 そのまま絶句して、ただじっと俺を見つめる深雪。


「もう、お姉はほっとけばいいよ。お兄、ボクのにもかけてー。いっぱいね!」


「おう、いいぞ。それそれー」


「やーん、美味しそう~」


 小雪の器の上にもたっぷりとかけてやる。この練乳は兄の愛情だ。チューブは一本丸ごと使い切って当然。

 大丈夫、まだ二本買ってある。


「「じゃ、頂きまーす」」


 スプーンで、ワガママに育った大ぶりの苺を掬ってパクッと。


「「 んー!!! 」」


 何とも言えないミルキーな甘さと苺の風味が優しく舌を包み込む。

 至福の瞬間だ。


「やっぱ苺はコレに限るな!」


「だね! 牛乳も美味しいけど練乳が最高ー!」


「信じられないわ…あなたたち」


 連休中、親父と雪代さんは仲睦まじく苺狩りに出かけたりしていた。

 深雪が行きたがらなかったので、俺も小雪も苺狩りはパスした。

 お土産の苺を仲良く三人で食べているわけだが、何も掛けずにそのままかじりついている深雪は人生の楽しみ方を知らないようだ。



「昼飯は、うどんでいいか?」


 俺は二人に聞いた。冷蔵庫に牛肉があったので、冷凍庫にストックしてある冷凍うどんを使って手軽に肉うどんとしゃれこみたい。


「悪くは無いけど、ちょっと味気ないわね…」


「ええ?」


「はーい! ボク、ピザがいい! せっかく出前オッケーなんだしさあ。普段、食べない物にしようよ」


「お、おう」


 時々コンビニやスーパーのピザを食ってる俺としては小雪の豊かな食生活に衝撃を受けてしまう。


「どうせなら鰻重やお寿司にすればいいのに」


 深雪がボソッと言うが。


「じゃあ、全部、頼んじゃう?」


 小雪が小悪魔の笑みを浮かべた。


「「 ダメ 」」


 さすがにそれは、兄として姉として、受け入れられない。うちはそんなお金持ちではないのだ。


「えー?」


「ピザにしておこう。それでいいだろ?」


「うん!」


 メニューを話し合い、俺が注文して、三人で食べたがちょっと味がスパイシーすぎた。

 やっぱり自分で作る方が良いな。


 さて、ゲームをやるか。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「やあ、リュート君。さあ、今日も張り切って始めようか!」


 爽やかな笑顔でレギン師匠が言うが。


「飽きた」


 俺はハッキリと言う。


「うん? 何かね? もう一度、言ってもらえるかな」


「飽きた!」


 ここ三日間、ずっと鍛冶打ちをしていたのだから当然だ。〈蒼き星の剣屋〉の工房に籠もりきりだった。

 すでに鍛冶職人の二次職の中堅まで来ている。




[リュート]


HP 234 / 234 

MP 197 / 197  

TP  182 / 182

BC 99 / 100


【総合レベル】25

【クラス】新人冒険者(ルーキー)

【ランク】F

【ジョブ】鉄打ち職人(ブラックスミス)

【ステップ】中堅 New!

【カルマ】

 ノーマル

 ニュートラル


【筋力】 72 

【敏捷】 55(+1)

【耐久】 51

【器用】 49

【知力】 54

【魔力】 64

【交渉】 31

【容姿】 34

【幸運】133



【装備】

ミョルニル

バジリスクの革鎧

バジリスクの小盾

バジリスクのブーツ

ミトン

虚ろの腕輪



【攻撃力】247(+150)(+118↑) New!

【防御力】133( +61) 

【素早さ】76(-2)

【魔法攻】101(+10) 

【魔法抵】116(+26) 


【所持金】354,765ゴールド

【勇名】 1300 

【経験値】123,465

【Next】18,535



[所持スキル]

初級技Lv1 (必要TP 2)

(魔法剣士系の既存技は非表示)

【舌先三寸】【力持ち】【鍋打ち】

【剣打ち】【鎧打ち】【盾打ち】【装具打ち】【細工打ち】【峰打ち】New!



中級技Lv1(必要TP 4)

【呪文短縮】【タイムアクセル】

【十六連打☆】【職人魂】【修理】

【研磨】【剛力】 New!


 (以下の技は非表示)


 (呪文非表示)


[アビリティ]

【金属装備可能術式】

【所持重量無制限】


[称号]

 (既存称号非表示)


[所属]

〈聖女親衛騎士団〉

〈蒼星騎士団〉


[所有アイテム]

 ポーション(10個)

 エリクサー(2本)

 ファンクラブ冊子

 〈聖女親衛騎士団〉のバッジ

 白翼五位勲章 

 〈白桜騎士団印の手拭い〉(Locked)

 《上月真衣ちゃんのサイン色紙★》(Locked)

 毒消しポーション

 ミーグの着ぐるみ☆

 アーモンドチョコ New!





 道のりは長かった…。

 いったいどれだけの武器と防具を作ったか、覚えてない。

 無茶苦茶たくさん作った。というか、作らされた。

 イベント難易度が高いだけあって、おだてが上手いレギン師匠に乗せられてホイホイと…。


 マイハンマーの質も良かったことが災いした。

 橋で襲われた時に助けてくれた少年ソラ。

 彼からもらった『ミョルニル』という小さめの金槌だが、気分転換に装備してみるとやたら強かった。

 威力は鉄のハンマーの倍以上。どうせショボいアイテムをくれたんだろうと思っていたが、後でお礼を言っておかないとな。


 変な名前の金槌だが、エリック曰く、北欧の古い言葉で"粉砕"を意味し、雷神トールの使ったハンマーだという。

 教えてくれたエリック自身はアイテムの名前を聞いて難しい顔をしていたが、この世界のアイテムは自分で作った物には好きに名前が付けられるからな。

 『聖剣エクスカリバー』でも『魔剣レーヴァンテイン』でも好きに付ければ良い。

 ただ、このハンマー、【高熱付与】されていて素手だと熱くて握れない。手袋(ミトン)が必須の欠陥品だ。


 だがしかし、毎日、工房に籠もりきりで装備ばかり作っているとさすがに飽きる。

 それに、ミルフィの一日デート券がどうにも取れそうに無いと先が見えてしまったのがモチベーション低下の一番の理由だ。

 さすがは有名なクランリーダーの三次職、たった一本しか武器を作ってないのに、うちの中ではMVP評価は確実ときた。


 ま、生産職の諸君、頑張ってくれ。

 俺は君らのために、素材を取ってくることにするよ。



「よしっ、リュートに勝った! うおおおお!」


 目に隈まで作って張り合っているレオンが全身でガッツポーズを決める。

 ま、小学生相手に本気を出してもね。

 それに、こいつは二次職のマスターだ。作業が雑とは言え、俺よりも良い武器が作れる。【十六連打】と【サモン・ゴーレム】で作る数は上回ることができても、評価ポイントでは負けてしまうのだ。


「レオン、プレイを始めてたった一週間の奴に勝っても自慢にはならないぞ」


 メンバーの一人が笑って言うが、何年も続いているようなMMORPGで初心者がベテランにすぐ勝てるはずもないか。

 とはいえ、次の生産戦があれば勝てる気がする。ふふ、いつか見てろよ、レオン!



「じゃ、そーゆーコトで、ちょっとエスザールまで買い付けに行ってきます」


「ああ、頼むよ、リュート。ちょうど鉄も少なくなってきてるし、今日がクラン戦の最終日だ。ラストスパートで順位を少しでも上げておかないとな」


 キースが頷く。小雪やナツキなど素材集めに狩りに出ているメンバーも多い。そこは役割分担だ。

 ちなみに現在の蒼星騎士団の順位は8位。クランは全部で十万以上あるというのでこれでも結構凄いと思うのだが、みんなはどこか気が抜けたような感じだ。

 今回は素材が手に入りづらく、素材の確保ができる大規模クランに有利なルールだそうだ。


「仕方ありませんねぇ。じゃあ、帰って来たらラストスパート、期待してますよ、リュート君」


 レギンも折れたので俺もそれで妥協することにして、外に出る。NPCだからか、レギンはこのクラン戦には参加しない様子。指導だけだ。


「ありゃ? ミルフィが合流してこないか。まあいいや」


 いつもなら俺の行動に合わせて護衛に付いてくれるミルフィだが、今日は出てきてくれない様子。

 ちぇっ。


「ご安心めされい! 拙者が護衛に付くでござるよ!」


「ふおっ!?」


 しゅたっと、外に出たところで〈シズマ〉が俺のすぐ背後を取って着地するし。オマエは呼んでねえ!

 あといきなり俺の背後に立つなっての。心臓に悪い。

 そもそも忍者とは隠密行動を旨とすべきで、目立っちゃダメだろ。なんだその派手な白装束は。

 だいたい、お前は護衛に付けるほど強いのかと。


「護衛つっても、クラン戦の最終日、みんな生産に躍起になってると思うが」


「甘いでござる。どこも不足気味の鉄素材を何とかして手に入れてやろうと必死でござるぞ? エスザールの炭鉱街を出たところで『命が惜しくばその鉄を置いて行け』なんていう喝上げが起きているそうでござる」


「そうか。でもま、死に戻りでも行けそうだけどな」


 ロストの確率はあるが、大量に買い込んでいれば、全部消えるなんてことも無いだろう。


「それでも、死なないに越したことはないでござるよ」


「道理だな。じゃ、行くぞ、シズマ」


「承知!」


 いちいち暑苦しいなぁ。

 俺はコイツの索敵能力は全然信用していないので、首輪を地面に置いてシロを出す。


「ワン!」


 鼻が利くのか敵の察知は早いし、戦闘中は敵の注意をそらしてくれたりとクレバーな相棒だ。


「あー、でも明日から学校か…。ちょっとかったるいな」


 こうして〈始まりの平野〉を歩いていると、ずっとミッドガーデンをやっていたくなる。


「かったるくても、友達に会えれば良いでござろう」


「ま、俺の友達はエリックとかだからなぁ。それを言うならミッドガーデンで会ってるし」


「拙者もミッドガーデンでは得がたい友と仲良くなれたでござる。リュート殿、もちろん貴殿も拙者の大切な友達でござる」


「うわ、お前よくそんな恥ずかしい事を堂々と言えるな…」


 言われたこっちが恥ずかしくなる。不覚にもきゅんときた。白い忍者のくせに。


「一期一会でござるからな。恥ずかしかろうとなんだろうと、言うべき時に言っておかないと、二度と言えないこともあるかもしれないでござるよ」


「どうせまた明日か明後日に会うだろ」


 大袈裟な奴だ。だけど、俺は母さんに『俺は大丈夫だから』って言いそびれたな…。

 ここでまた会えれば良いんだが。

 たとえ、偽者であったとしても。もう一度。

 俺はそう願っている。

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