表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミッドガーデンの神プレイヤー ― 無課金の俺が伝説の救世主になるまでの軌跡 ―  作者: まさな
第四章 橋を渡れぬ者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/113

第十五話 判決

 あっさりと兵士に捕まっている〈シズマ〉……。

 もちろん、これは作戦のうちだ。


「〈シズマ〉よ、アクデー商工会の倉庫に盗みに入ったこと、相違ないな?」


 裁判長が問う。


「間違いないでござる」


「食料が山積みだったそうだな?」


「そうでござる。大量に麦袋があったでござるよ。脱税していた証拠でござる」


「異議あり! 裁判長、侵入された倉庫にはワタクシは何も入れておりません! 最初から空っぽの倉庫です! 奴らのでっちあげですよ!」


 そう言った後でニヤリと笑うニック。さらっと嘘をつくねぇ。


「嘘でござる! 確かに拙者、この目で見たでござる。動画もあるでござるよ!」


 動画はまあ、プレイヤーは見ることができるのだが、この裁判では通じないか。


「静粛に! 証人は聞かれた事だけ答えるように。〈シズマ〉よ、その盗んだ麦袋はどうしたのだ?」


「街の人に配ったでござる」


「配っただと? なぜだ?」


「それは、みんなお腹を空かせて困っていたからに決まっているでござる」


「その者らの名前は覚えているか?」


「名前でござるか? いや、NPCだったので…」


「シズマ、動画があるだろ」


 俺は助け船を出してやった。


「おお、そうでござる。ちょっとアップしてくるでござるよ」


「あ、おい」


 いきなりログアウトとか…。


「消えた!」

「逃げたぞ!」

「やはり、冒険者、簡単に消え失せるな」


 わぁ。


「静粛に! 申立人、この世界の証人を連れてくるように」


「は、申し訳ございません、裁判長」


 申立人が渋い顔で謝る。

 うーん、これで俺や沙耶が証言台に立つわけにはいかなくなったな。それに、俺とユキで押収した麦袋も出さない方がいいだろう。蒼星騎士団のでっちあげというニック側の主張が真実味を帯びてしまう。

 ちょっとその辺の段取りが取れてなかったな。


「やれやれ、冒険者の無法者にも困ったものよな」


 悪趣味な服を着た男が、数人の貴族の取り巻きと共に姿を見せた。

 茶色と紫の組み合わせって。


「さ、宰相閣下」

「宰相だ」


 その場にいた騎士や兵士が緊張したように姿勢を正す。

 裁判長がちらりとそちらを見ると、宰相は軽く頷いた。


「どうして宰相が…」


 ミルフィがつぶやいたが、異例のことらしい。

 ニックがニヤァと人の悪そうな笑み浮かべたが、どうも嫌な感じだな。


「これは宰相閣下、いかがなされましたか」


 この場を取り仕切る騎士ガウェインが近寄って問いかける。


「なに、冒険者を裁くと言うから、見物しに来たまでだ。私の事は気にするな」


「はっ!」


「では、次の証人を」

 

 次の証人が呼ばれた。

 NPCの騎士が証言台に立つ。 


「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」


 右手を挙げて宣誓。信頼の置けそうな奴だ。


「アクデー商工会は納税をごまかし、兵士の買収もやっております。酒場でアクデー商工会との宴会に参加していた兵士のリストがこれです」


 よし。


「異議あり!」


「却下する。次の証人を」


 兵士が呼ばれた。ちょっと落ち着きがない奴。


「お前は買収されているという容疑がかかっているが、どうか」


「そんなことはしていません! 食事を一緒にしただけです」


「裁判長、この兵士の妻が金のブレスレットをしていたという目撃がございます。申立人としてはその証人を――」


「いや、不要だ。それでは判決を言い渡す!」


 聴衆がどよめき、ひそひそ話を始めた。ミルフィは不安そうな顔。一方の〈神聖緑衣騎士団〉のガウェイン某は満面の笑みだ。


 大丈夫か?

 この裁判長と取り仕切ってる〈神聖緑衣騎士団〉が買収されていたら、負けるんじゃないのか、この裁判。


「まずいですよ、沙耶さん。異議を申し立てて、押収品を出した方が」


 キースが心配したようで言う。


「いいえ、それはダメよ。今は成り行きを見守りましょう」


 全員が裁判長の次の言葉を待った。


「被告人ニックとアクデー商工会を有罪とする! ニックは投獄の上、一千万ゴールドの罰金とし、アクデー商工会は一ヶ月の営業停止処分!

 現在所持している鉱物素材についてはすべて没収とする!」


 ひょっとして無罪かとも思ったがやはり有罪。罰は軽めかもしれないが、有罪となった以上、同じ事は繰り返せないだろう。

 それに素材を失ったアクデー商会はクラン生産対抗戦のランキングを大きく下げるはずだ。


「おおっ!」


 聴衆も期待していたのか、声が上がる。


「そんな。トリマーキー卿! あれだけ献金したワタクシをどうして有罪にするのですっ!」


「し、知らぬ! ええい、早くその男を連れて行け!」


 太った貴族が慌てていたが、相当な賄賂を受け取っていたのだろう。  

 ミルフィと騎士達が彼に厳しい視線を送る中、俺達は安心して王城を後にした。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「お兄、アクデー商会をやっつけたみたいだね!」

「やったな! リュート!」


 〈蒼き星の剣屋〉のラウンジでは小雪達が待っていた。


「ああ。俺じゃ無くて裁判長や王城の連中が、だけどな」


「そんな事は無いでござる!」


「うおっ!」


 しゅたっと俺の背後に立つシズマ。お前、途中で逃げたみたいになってるから、指名手配されてるんじゃないのか?

 あと、俺の近くに着地すんな。


「リュート殿の計画で上手く行ったでござる! 拙者、その知謀に惚れ惚れしたでござるよ!」


 どこに知謀の要素があったのか、俺としては首をひねるばかりだが、まあいい。


「色々面倒そうな事も片付いたようですし、ここからは鍛冶職人の時間ですね」


 灰色の髪の優男、レギンがにっこり言うが。


「レギン、ひょっとして俺を助けてくれたりした?」


 俺は聞いてみる。

 アクデー商会の倉庫の前での戦い。あそこで加勢してくれた見えない味方はコイツではないのかと思ったのだ。


「はて、何の事でしょう?」


 とぼけている風でも無い。実力から言って、レギンくらいの強さなんだがなぁ。


「レギンが色々、鍛冶のコツを教えてくれたぜ!」


 レオンが相手をしてくれていたらしい。ま、NPCだから放っておいてもいいんだろうけど。


「レギン、リュート君、その件で少し話があるわ。ギルマス部屋まで来て頂戴」


 沙耶が言う。


「分かりました」

「よろしいですとも、蒼星のアンキャリエ」


 沙耶の執務室に入り、紅茶とケーキをご馳走になる。このガトーショコラがまた、んまんま。


「あ、そうだ。すみません、沙耶さん、せっかくもらった剣なんですが…」


 俺は折れた剣をテーブルの上に出す。


「あら、もう壊れたなんて、よほどの使い方をしたみたいね?」


「トワイライトの刺客に襲われて、一撃で破壊されてしまって」


「ああ。護衛を付けておくべきだったわ。配慮が足らなくてごめんなさいね」


「いえ、それはいいんですが」


「この状態だと、新しく作った方が早そうね。いいわ。また作ってあげる」


「お待ちを。その剣、私に預けてもらえませんか。リュート君もついでに、ね」


 レギンがウインクして言う。


「それはいいけれど、あなたはリュートに何をさせようというの?」


「何も。ただ私は彼に最強になって欲しいのですよ。それが彼の望みでもあります」


 彼? ああ、俺のことか。別に最強でなくてもいいんだけども。

 ただ、もらった武器を無様に破壊される強さでは情けないか。 


「……いいわ。魔剣を作るまでは、大目に見ましょう」


 沙耶はレギンとはすでに少し話をしている様子。


「ふふ、これはどうも。契約成立ですね。今後ともよろしく」


 レギンが手を差し出し、沙耶が握手した。ひとまず、ここへレギンが滞在していても問題なさそうだ。

 さて、鍛冶用の素材の延べ棒もたくさん手に入ったことだし、また作るか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ