第十話 ユキの体験
2017/4/10 話数の間違いを修正。
「あなたのこと探してたのよ?」
ユキが双剣を鞘に収めて言う。青いビキニアーマーはそのままだが、今日は下に黒いストッキングを穿いている。
ま、これはこれで色香があるんだが、口には出さないでおこうか。
「俺もだよ」
「フレンド登録しておけば良かったわ。あまりパーティーを組まないから、気がつかなくて」
「ああ、じゃ、フレンドになってもらえるかな」
俺はフレンド申請をユキに飛ばした。
「あ、待って」
『〈ユキ〉さんはフレンド申請を断りました』
「え?」
「私から出してみたいの」
『〈ユキ〉さんからフレンド申請が出されています。承諾しますか?』
「なんだそれ……じゃ、俺も一度断る」
ノーを選択。
「あっ、何するのよ。絶対受けてくれると思ってるところでそれやられると、結構ショックなんだけど?」
「俺も同じ気持ちなんだが。まあいいか。飛ばして良いぞ」
「ああダメ、断られた同一人物には続けて申請できないみたい」
ユキが言う。
「ええ? どうするんだ?」
「知らないわよ。あなたのせいなんだから、もう…」
「それでしたら、一度、二人とも私に出してみて下さい」
ミルフィが言うので、フレンド申請を彼女に出してみる。承諾された。
「これでフレンド同士を紹介という形で申請し直すことができます。ただし、次に断ると日が変わるまでダメですから、注意して下さい」
「分かった」「ええ」
ユキから出された申請を今度は承諾する。
「よろしくね」
「ああ、よろしく」
ユキが手を差し出すので、俺も握手する。細くて華奢な手だ。
「じゃ、先にレアアイテムの分配をしておきましょ。この髪飾り、NPCの店売りで一万ゴールドの値が付いたわ」
ユキが髪に付けている白い羽根の髪飾り。
「じゃあ、五千ゴールドか」
売値の半分の代金を俺が受け取るという約束だった。
「いいえ、過去のオークションの平均落札価格は120万ゴールド、だから60万ゴールドでどうかしら?」
「随分と跳ね上がったな」
「だって、総合評価トリプルAの能力値付きレアよ? 魔法防御も上がるし、軽いから使い勝手が良いし」
「そうか。君が払えるなら、それでいいけど…」
「心配しないで、それくらいのお金は貯めてるから」
『〈ユキ〉さんから60万ゴールドを〈報酬分配〉として受け取りました』
「悪いけど、受け取った受け取ってないで揉めるのも嫌だし、報酬記録は取らせてもらうわね」
「領収書みたいなものか? ならいいけど」
「ええ、特に心配しなくても悪用はできないから。これで前回のパーティーはチャラってことで、いいわね?」
「ああ、いや、俺も水晶玉を鑑定しておかないと」
俺の受け取っている黒水晶も半額をユキに渡さないと公平で無い。
「ああ、要らないわ。水晶って安いから」
「いいのか?」
「ええ。この髪飾りの代わりってことだし、そういう約束だったでしょ」
「まあ、君が良いなら、それでもいいか」
「ええ、それと――」
「どいたどいた! 邪魔だ邪魔!」
数匹のローパーを引き連れて逃げて俺達の横を通り抜けていく魔法使い。ユキが二匹を斬りつけて倒し間引いてやった。
「もう、ここじゃ、話しにくいわね、私の家で話しましょ」
「ん? それって…」
「言っておくけど、始まりの街にある拠点で、邪魔が入らないから、話しやすいってだけ。変な事は想像しないでね?」
「お、おう」
「もう、男って面倒臭いわね……」
ちょっと理不尽な気がするが、藪蛇になりそうなので、黙って俺はユキに付いて行くことにする。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
街に戻ってきた。シロを首輪の中に戻しておく。
「団長」
白い騎士が一人、駆け寄ってくる。
「何事ですか」
ミルフィがやや緊張して聞き返す。
「陛下がお呼びです」
「分かりました。リュートさん、申し訳ありませんが…」
「ああ、こっちは大丈夫」
俺は頷く。PKに対する護衛ならユキで充分だろう。
ミルフィが部下と共に城の方へと向かった。
「じゃ、こっちよ。私の家は西居住区にあるの」
ユキの案内で西居住区にやってきた。初めて来る場所だ。小さめの住宅が並んでいるが、奇抜な建物も多い。ユキの話では冒険者の所有する家が多いそうだ。
その一角で彼女が立ち止まった。
「どう? ここが私の家よ」
ちょっと自慢げに指し示すユキ。そこには簡素な木の柵に囲まれた庭と、ロッジのような木造建築の家があった。
センスは悪くないと思うが、どちらもちょっと小さい。
「こぢんまりしてるな」
俺は見たままの感想を述べる。
「ええ? これ一千万ゴールドもしてるのよ。文句有るなら、あなたが広い豪邸を買いなさいよ」
「高っ! 何でこんなモノにそんな金額を」
「そりゃあ、高いと思ったけど、気に入ったからよ。家具だって全部プレイヤー職人のオーダーメイドだし」
「なるほどな。いや、ケチを付けるつもりは無かった。俺には到底無理な領域だ」
「分かればよろしい。じゃ、入って」
「お邪魔します」
中はきちんと靴箱がある玄関となっており、そこから居間へ通じていた。
ブーツを脱ぐのが面倒臭いと思ったが、メニューの装備から外してみると一発だった。革鎧も必要無いので装備は全部外しておく。アイテムボックスに入るだけなので持ち歩く必要も無い。
長い毛のカーペットは肌触りが良かった。
「お茶を入れるわ。座ってて」
「ああ」
ソファーに座ってみるが、柔らかい布張りで良い座り心地だ。色はグレーを基調にして落ち着いた雰囲気の部屋。
こういう部屋もなんかいいな。
「どうぞ。あ、紅茶だけど、良かったかしら?」
「いいよ、これで」
一口飲んでみたが、苦かったので砂糖を三杯くらい入れてみる。
ユキがギョッとした顔をしたが、これ、砂糖だよな?
飲んでみると、うん、ちょうど良い味になっている。
「じゃ、本題に入るけど、あなた、あそこで何か見たの?」
ユキが聞いてきた。
「その前に、君は何を見たか、話してくれないか」
「ううん。先にそっちから」
渋るユキはこの様子だと、何か俺と似たような体験をしたのかもしれない。
「じゃ、最初に笑わないと約束してくれるか。あと言いふらさない事」
俺は提案した。
「ええ、約束するわ」
ユキが同意した。
会ったばかりの人間を信用するのもどうかと思うが、髪飾りの代金をきちんと払ってくれたし義理堅い奴だから大丈夫な気がした。
「じゃ、信じるかどうかは君次第だが、全部話すよ。あそこで俺は――」
河原のような場所で母親に会ったこと、さらに額縁の裏にあった封筒のことも伝えた。
さすがに、封筒を見つけた時の話を聞いたユキは表情が一層険しくなる。
「そんなことが…。とても非現実的だわ」
「俺もそう思うよ。ま、小学生の頃の話だから、俺が母さんから伝え聞いたことを、たまたま昨日思い出したってだけなのかもしれない」
「そうだとしても、ミッドガーデンの中であなたのお母さんと出会ったのなら、それは…普通じゃないと思う」
言葉に気を付けながら話すユキは笑わなかった。信用できそうな奴だ。
「そうだな。俺には未だに夢だったのか現実だったのか、ちょっと区別が付かない感じだ」
「ええ。私も、実を言うとあそこで昔に飼っていたメリーに会ったわ。犬だけど」
「そう。その犬は……」
「ええ、私が中学生になったときだから、四年前に寿命が来てた。白の柴犬であまり吠えなくて大人しかったわ」
「どういうことなんだろうか?」
俺は問う。
なぜ、こんな事態が起きているのか。
「さあ…ただ、私の心のどこかにまた会いたいという願望があったんじゃないかと思う」
ユキが漠然とだが答えた。
俺は……。
「ねえ、考えるより、新しい手がかりを探す方が早いと思わない?」
ユキが俺の顔を見て言う。
「そうかもな」
「なら、私に協力して欲しいのだけれど」
「具体的には、何を?」
「そうね、今のところはミッドガーデンのバグ探し、になるかしら」
「時々パーティーを組んで、怪しい場所を探索するってことでいいのか?」
「それでいいわ。私はあなたに、何か特別な原因があるような気がするの」
「俺に?」
「ええ。だって、もうバグに二回も出くわしてるでしょう? メタリック・ミュータントにしたって私は今まで一度しか会ってなかったわ」
そこまで明確な違いとも思えないが、多少、集中して引いている気もする。
「分かった。君の役に立てそうなら、手伝うよ」
「ありがとう。でも、タダでと言うのは悪いわね。何か個人クエストとして報酬を付けましょうか」
「いや、別にそんなのはいらないよ。ただ、時々パーティーを組んで、一緒に遊んでくれればそれでいいかな」
「それはいいけど…」
少し困った様子のユキは気にしすぎだ。俺は話をまとめておくことにする。
「じゃ、決まりだな。俺としては可愛い女の子とプレイできるんだから、それだけでも報酬だと思うぞ」
「えっ、あ、ああ…ナンパが目的だったわけね?」
「ナンパって程でも無いけど…」
ユキは嫌がるだろうか? 深雪もナンパは毛嫌いしてたが、ううん、ちょっと失敗したか。
「それが目的ならナンパでしょ。ま、いいわ、ミッドガーデンの中だけでなら、しばらく付き合ってあげる」
「おお。マジで?!」
「もう、あんまりそっち方面で期待してもらっても困るのだけれど…」
「分かった、普通のパーティープレイでいいよ」
「ええ。それなら問題無いわ。ああ、でも、私、そんなに社交的でも無いから」
「ま、俺もだけどな」
「ええ? よく言うわね。バグゴーストを倒した時にミルフィーユとマイと組んでたくせに」
「いや、ミルフィーユはPKされたら付いて来ただけだし、君だって今まで時々はパーティーを組んできただろう?」
「それはまあ、そうだけど。でも、ナンパ目的じゃ無いわ」
「俺だってそうだっての」
「どうかしらね」
「ええ?」
「ふふっ」
笑ったユキは俺を少しからかったようだ。
なんだろう? 暖かな春の予感がする――。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
[リュート]
HP 238 / 238
MP 191 / 191
TP 176 / 176
BC 32 / 100
【総合レベル】24
【クラス】新人冒険者
【ランク】F
【ジョブ】魔法騎士
【ステップ】見習い
【カルマ】
ノーマル
ニュートラル
【筋力】 60
【敏捷】 54(+1)
【耐久】 50
【器用】 48
【知力】 53
【魔力】 63
【交渉】 30
【容姿】 34
【幸運】129
【装備】
鉄のショートソード+2
レッドリザードの革鎧(茶色)
レッドリザードの小盾(茶色)
レッドリザードのブーツ(茶色)
【攻撃力】105(+22)
【防御力】96( +20)
【素早さ】72(-2)
【魔法攻】90
【魔法抵】95(+6)
【所持金】600,265ゴールド
【勇名】 1300
【経験値】121,464
【Next】20,536
[所持スキル]
初級技Lv1 (必要TP 2)
【薙ぎ払い】
【剣士の基本技】
【パリィ】 New!
中級技Lv1(必要TP 4)
【呪文短縮】
【タイムアクセル】【兜割り】 New!
上級技Lv1(必要TP 10)
【不屈の精神☆】
特級技Lv1(必要TP 25)
【第六感☆】
伝説級技Lv1(必要TP 50)
【怒濤の見切り★】【神懸かり★】
初級呪文Lv1(必要MP 2)
【ファイアボール】【バリア】
【アイスニードル】【ライト】 New!
中級呪文Lv1(必要TP 4)
【エンチャントソード】【ナイトメア】【ロックフォール】
【ウインドエッジ】【サモン・ゴーレム】New!
[アビリティ]
【金属装備可能術式】
[称号]
(既存称号非表示)
[所属]
〈聖女親衛騎士団〉
[所有アイテム]
ヨモギ草(12枚)
エリクサー(3本)
ファンクラブ冊子
〈聖女親衛騎士団〉のバッジ
白翼五位勲章
学問のすすめ
〈白桜騎士団印の手拭い〉鍵
《上月真衣ちゃんのサイン色紙★》鍵
宝石〈マラカイト〉
レア・スキルエッグ
《黒い雲水晶★》
苺プレッツェル New!
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