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第四話 聖騎士ミルフィーユと一緒に

 ミルフィーユがパーティーに加わってくれたので、PKの心配は当面しなくていいだろう。

 これでさらに狩られたりしたら、泣く。


 さて……二人が見ているので、できれば格好良く敵を倒したいが。


「お兄ちゃん、のんびりでいいからねー」


 俺が考え込んでいると小雪が声を掛けてくれた。


「おう」


 ま、ゲームだからな。真の目的は新しい妹の小雪と仲良くなることだ。

 知り合って二日目の家族としては上々の滑り出しではなかろうか。


 俺はカッコイイ斬りつけ方を考えるのを止め、ダメージが良くなる斬りつけ方を模索することにした。

 試行錯誤しつつ、その辺にいるスライムに近づいては剣で斬りつける。5や7のダメージ数値が表示されたが、やはりまともに剣が当たった方がダメージが大きい。

 一撃では落ちてくれないが、二撃で倒せる。

 スライムの動きは遅い上に的は大きめなので外すことはまずない。

 敵の反撃は、たまに液体を発射してくるが、ダメージはたった1だし、臭いのを我慢すれば何てことはない。


 四匹目を倒したところでステータスを確認するが、経験値はちゃんと1ポイントずつもらえていた。

 ま、これをパーティー分配で半分以下にすると小数点になってしまうから、最低限が1ポイントなのだろう。切り捨てで無くて良かった。


「リュートさん、よろしいですか?」


 剣も抜かず、その場でずっと待機してこちらを眺めていたミルフィーユが声を掛けてきた。


「ええ、何ですか?」


「差し出がましいようですが、あなたはまだ初心者の剣士とお見受けします。いくつか助言させて頂きたいのですが」


「ああ、それなら気にせず、どんどん言って下さい」


 アドバイス通りにできるかどうかは分かんないけど。できなくても問題ない。


「はい。では、まず一つ目。あなたは屈み込んでの払い斬りをされていますが、縦の振り下ろしも試してはいかがですか。身長の低い敵や低い位置にいる敵はむしろ振り下ろしが有効ですから」


「おお、なるほど」


 上手く命中させること、ダメージの大きさだけを意識していたが、攻撃動作(モーション)が自由なVRゲームだ。斬り付けの向きもあったな。


「あっ! ごめーん! お兄ちゃん! そういうスタイルが好みかと思って」


 小雪がアドバイスできなかったことを悪く思った様子。


「いいよ。俺も聞かなかったしな」


 笑顔で言う。


「でも、小雪、これからは遠慮せずに言ってくれ。だって俺達、家族だろ?」


 なーんてことを続けて言えればカッコイイ兄貴なんだろうが、ちょっと俺にはハードルが高い。

 そのまま黙って言われた通りに縦切りの振り下ろしでスライムを斬ってみる。


「おお? 一撃か」


 こちらの方がダメージが出るようだ。なんだよ…。


「ごめーん」


「いいって」


「二つ目ですが、背後からだけでなく、正面からも攻撃して敵に馴れておかれた方が良いでしょう」


「あ、そうだね。お兄ちゃんはもう攻撃のセオリーは分かってるみたいだけど、いつも敵の背後を取れるとは限らないし、間合いの感覚は練習しておいた方が良いよ!」


「分かった」


 今度はあえてスライムの進行方向の前に立ち、正面から突っ込みつつ斬ってみる。


「うおっ!?」


 目測を誤ってしまい、スライムに体当たりになってしまった。

 ぶよんっと冷たいゼリーに当たった感触。弾き返されたが俺もスライムもダメージはゼロ。


「あー…」

「ふふっ」


 今のはちょっと格好悪かった。


「ドンマイ、ドンマイ! よくあることだよー。たまにスキルも生えるし。【体当たり】とか」


「いや、俺はそれ、欲しくねえし」


 相手がトゲトゲや固い敵だと、こっちもダメージがありそう。


「あはは、でも、剣士系なら取っておいた方が良いよ。ボクは【ヒップアタック】、実戦で使えるから育ててるし」


 実戦……。小雪が制服姿で誰かにお尻を連打でぶつけている姿を想像してしまった。


「あっ、実戦と言っても、リアルじゃないよ!?」


「分かってるって」


 気を取り直してもう一度チャレンジ。今度は上手く行った。


「もう一度だ」


 スピードに乗って斬りつけると、スライムの残した白い煙を突っ切る形になるので、疾走感があって気持ちが良い。

 さらに全速力で駆け込んで突きで倒す。



 ピロピロリーン! と電子音が鳴り、メッセージが表示された。


『スキル【ダッシュ斬り】を会得しました!』



「おお、なんかスキルが取れたぞ」


「あ、うん、特定のモーションをやると取れるよ。他にも【回転斬り】や【突き上げ】や色々有るから試してみて。レベルが足りないとダメなときもあるけど」


 小雪が教えてくれたが、背の低いスライム相手に突き上げはちょっと無理そうだ。

 回転斬りを試してみたが、メッセージは出ない。


「あー、それ一度に複数の敵をやっつけないとダメなんだ、ゴメンゴメン」


「ああ、それだと、この狩り場じゃ無理そうだな」


 スライムが集まるのを待っていたら日が暮れそうだ。


「そうだねー。あっ、模擬戦ならできるよ! お兄ちゃん」


 小雪が言い、メッセージが表示された。


『〈小雪〉さんからデュエルを申し込まれました。条件:無制限デスマッチ。承諾しますか?』


 条件がちょっとおっかないが、模擬戦ならたぶん、ダメージはゼロで死ぬことは無いだろう。承諾する。


「それでは、私もですね」


『アディショナル・デュエル! 〈聖騎士ミルフィーユ〉からもデュエルを申し込まれました。二対一の不利な戦いです。承諾しますか?』


 承諾する。


「じゃ、ボク達は攻撃しないから、どんどんやっちゃって」


 小雪が言う。


「いいのか? 痛みは?」


「大丈夫、大丈夫! ちゃんと受けるから」

「心配には及びません」


 ま、レベルもこの二人の方がずっと高いか。



「じゃ、行くぞ!」


「ばっちこーい!」

「どうぞ」


 体をひねって反動を利用しつつ、回転しながら斬る。

 二人はロッドと剣で綺麗に俺の剣を受け止めた。


 だが、何も起きない。


「お兄ちゃん、片足だけで立って、もっと回転を付けて」

「後ろまで斬らないと【回転斬り】とは言えませんね」


 二人が指摘してくるが。


「ええ? 難しいな。それだと無理かも」


「まあまあ、やってみてよ」

「失敗してもいいですから」


 それならと、もう一度試す。軸足がブレてしまい、これも上手く行かない。


「お兄ちゃん、お手本を見せるから、ちょっと見てて」


 小雪がそう言って、その場でロッドを回転しながら振り回した。くるくると三回転くらいして片足のまま停まる。


「おおー」

「綺麗な三連撃ですね。お見事です」


「えへへー。コツはね、当たんなくても良いから、バレリーナのつもりで」


「ああ、なるほど」


 もう一度、その場で回転する。小雪とミルフィーユが自分から間合いを詰めてくれ、キンキンと剣がぶつかる。


 ピロピロリーン! と電子音が鳴り、メッセージが表示された。


『【回転斬り】を会得しました!』


「取れた!」

「やったぁ!」

「おめでとうございます」


 ついでに、【突き上げ】【ジャンプ斬り】【切り返し】【受け流し】も会得。

 スキル多いな。

 【連続斬り】や【受け殺し】など難しいものもあり、ちょっと無理そうだったのでそれはまた今度ということにした。


「今覚えたのはオート・モーション・スキルで、TP…テクニックポイントがあれば自動で自分の体が動くよ」


 小雪が説明してくれたが、なるほど、これならスポーツが苦手な俺も戦闘で派手な動きができそうだ。


「リュートさん、攻撃技の【薙ぎ払い(スイープ)】を使ってみて下さい。剣士の基本技なので、役に立つと思いますよ」


 ミルフィーユが言ったが、そう言えば最初から持っているスキルがあったな。

 鎧を着込んで盾も持っているミルフィーユに構えてもらい、念じてTPを消費し、斬り込む。


 シュパッといつもの振りより素早く鋭い攻撃ができた。


「良い踏み込みですね。さらに磨きを掛ければあなたの強力な技となってくれることでしょう」


 ミルフィーユがニッコリ笑って褒めてくれた。チッ、AIのお世辞だと分かってるのに、その気になっちまうぜ。




「おい、そこ! それ以上近づくな」


 野太い男の声が後ろからして、振り返ると数人の白い鎧の騎士が近くにいた。その騎士達はさらに別の冒険者を牽制している様子。

 ミルフィーユの部下か? さっき警備に戻ると言って去って行ったはずだが。


「なんだよ、いいじゃんか、別に。ミルちゃーん、オレっちとパーティー組んでくれYO!」


 軽装の革鎧のチャラそうな茶髪剣士が馴れ馴れしく手を振ってくる。


「ええい、神聖なイベントの邪魔だ、排除しろ!」

「「 了解!!! 」」

「うわ、待て、何をしやがる」


「ううん…そこの冒険者(・・・)のみなさん、味方同士、仲良くお願いしますね」


 ミルフィーユが困り顔で言ったが。


「冒険者?」


「あー、あれ、コスプレだよ。(まぎ)らわしいなぁ。ほら、カーソルが青だし」


 小雪が言う。


「えっ!? あいつら全部プレイヤーなの?」


 そっくり同じ白い鎧を着込んでいたので気付かなかった。


「うん、名前、なんて言ったかなぁ。要はミルちゃんの親衛隊で、騎士団ごっこをやってるクランがあるんだよ」


 まあ、ミルフィーユがアイドル並みに可愛いのは認めてやるが、そこまでやるか?


「くっそ、お前ら、スリで鍛えたオレ様を舐めんなよ! 【次元(ディメンション)すり抜け突撃】!!!」

「笑止! その程度で我ら〈聖女親衛騎士団〉の鉄壁の守りを破れるとでも思ったか! ブロック・フォーメーション・ファイブ!」

「「「ヤー! 了解!」」」


「……小雪、言って良い?」


「うん」


「スゲぇ、やりにくい」


「だねぇ」


「も、申し訳ありません……」


 縮こまって、斜め下に目を伏せるミルフィーユが妙に人間臭かった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



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〈ミニ攻略情報〉


ステータスのBCとは?


  HP 67 / 67  

  MP 10 / 10  

  TP  2 / 8

→ BC 1 / 100



ブレイブ・チャージの略。

勇気を溜めて力を爆発させることができる。

敵を攻撃したりダメージを受けると

少しずつ溜まっていく。

BCゲージが100%になると

全能力値が一定時間2倍に。

さらにHP、MP、TP、状態異常がすべて回復する。

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