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ミッドガーデンの神プレイヤー ― 無課金の俺が伝説の救世主になるまでの軌跡 ―  作者: まさな
第二章 二人の距離

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第十一話 ミルフィを探して

2017/3/27 少しだけ修正。

 俺は広場を出て城に向かう。

 ミルフィは白桜騎士団の所属だ。

 一般兵士とは違うエリート集団で、彼女はそこの団長を務めている。

 一冒険者である俺の護衛なんて、普通なら忙しくてできないところだが、そこはゲームだからな。

 今から会いに行っても、門前払いとはならない気がする。


「止まれ! 王城に何用だ?」


 城の門まで行くと、槍を持った衛兵が用件を聞いてきた。


「私は冒険者のリュートと申します。ミルフィーユ様のお見舞いにやってきたのですが」


 すると兵士はすぐに面倒臭そうな顔をしてシッシッと手を振った。


「帰れ帰れ! 聖騎士様にそう簡単に会えると思ったか」


「あの、彼女とは知り合いなんです、せめて取り次ぎだけでも」


 リアルなら絶対しないところだが、俺は食い下がってみる。


「ふん、その手は通用せんぞ。どうせお前は親衛団の一員だろう。ミルフィーユ様はお前らの嫁でもなんでもない、さっさと帰れ」


 くそ…親衛団の信用とモラルは最悪じゃねえか。抜けちゃおうかな。とはいえ、あそこは色々グッズも売ってるし、やたら詳しい人もいて耳寄り情報があるんだよなぁ。極秘のお宝映像がありそうで、まあMGが全年齢対象ゲームと分かっていても、ひょっとしたらという気がしてね…。


「おや、あなたは」


 ちょうど通りかかった平服の男が俺を見て立ち止まったが、その()けた頬には見覚えがあった。前にミルフィと一緒に事情聴取した図書館員だ。


「おお、図書館の」


 名前は知らんけど。


「はい。その節はお世話になりました。何かお困りですか?」


「ええ、城に入りたいのですが、門番がなかなか入れてくれなくて」


「ああ。この方は王宮から【白翼五位勲章】を賜り、聖騎士様のお知り合いですよ」


「なっ! それは失礼致しました!」


 衛兵が焦った顔になると姿勢を正して敬礼した。


「いやいや、ま、気にしないでくれ、顔を知らないのだから無理もない。冒険者のリュートだ。今後ともよろしくたのむよ、君」


 大物風を吹かせて、ポンと門番の肩を叩く。


「はっ!」


「それでリュートさんは今日はお城にどんな用ですか? 私は王城の書庫に行くつもりですが」


「うーん、聖騎士様の顔を見に来たのですが」


 城のどこにいるのやら。


「そうですか。では、宿舎の方ですかね。では、私はこれで」


 図書館員は行ってしまった。

 宿舎の場所も分からないので、その辺の衛兵に騎士団の宿舎を聞いてみることにする。


「それなら、向こうだ。その道を行けば良い」

「どうも」


 広い中庭の石畳の道に沿って歩く。左右には人の手を入れられた茂みが一定間隔に並んでいた。



「パトリシア様ー」

「どこですかー」


 と、何人かのメイドが主人を探しているようだ。

 イベントの気配がぷんぷんだが、俺は今、俺の嫁を探すのに忙しいのでね。

 無視して進む。


「そこの者、お前じゃ、お前」


 幼女の囁き声に振り向くと、青いドレスを着た小学生くらいの子が茂みの中にいた。四つん()いだ。銀髪のツーサイドアップの髪型に、額には宝石をあしらったサークレット。

 ふむ。


「おーい! パトリシアがここにいたぞー!」


 俺はメイド達がいた方向に向かって叫ぶ。


「ば、馬鹿者! (わらわ)が身を隠しているというのに、叫ぶ奴があるか!」


「つっても、あれだろ? お勉強が嫌で抜け出して、かくれんぼしてるだけだろ?」


「ぐぬぬ、いや、宰相が(はかりごと)を部下に話しているのをたまたま聞いてしまってな。追われておるのじゃ」


「うーん」


 そう言えば宰相派と王党派で対立してたんだっけ? とは言え狂言臭いな。


「妾が頼れるのは聖騎士ミルフィだけじゃ。彼女の元へ連れて行ってたもれ」


「乗った!」


『〈緊急依頼(クエスト):ミルフィの所へ連れてって!〉 を受けました。残り時間 一時間。難易度 E。推奨レベル 1以上』


 楽勝だな。


「では、頼むぞ、冒険者」


「はっ、お任せ下さい、パトリシア殿下」


 王女だろうと予想を付けて言ってみる。


「急にしおらしくなりおってからに。まあよい、妾のことはパティと呼べ。ここにいるはただのパティじゃ。王族では無いぞ」


「おう。じゃ、パティ、まずは隠れるぞ」


 兵士とメイドがこちらに向かって走ってくるのが見えたので、パティを茂みの後ろに移動させて隠しておく。

 駆けつけた兵士が俺に聞いた。


「殿下は?!」


「向こうに行きました!」


 俺が指差すと兵士とメイドがそちらに一目散で走っていく。チョロい。


「もういいぞ」


「やるの、おぬし」


「ま、このくらいはな。それで、ミルフィの居場所は知ってるのか?」


「知らぬの」


「そうかぁ…」


「じゃが、魔物のことについて魔導師のマリーンに聞くと言っておったから、そこではないか?」


「マーリンじゃなくて?」


「マリーンじゃ。〈城の東の塔〉に籠もっておる宮廷魔術師で、ま、変人じゃ」


「じゃ、行ってみるか。ちょっとそこで待ってろ」


「妾も行かぬと意味が無いぞ」


「分かってるけど、その格好じゃすぐ見つかるから。すぐ戻るよ」


 先ほど、中庭にシーツが干してあった。そこまで戻り、一枚拝借してパティに頭から羽織らせる。


「これで修道女に見えなくもないだろう」


「ふむ、良かろう。妾は修道女じゃ」


「ま、受け答えは俺がやるから、お前は喋るなよ。すぐバレる」


「うむ」


 〈城の東の塔〉にパティを連れて向かう。途中、兵士がジーッと不審そうに見つめてくるが、俺は堂々と歩いた。


「ここじゃ。マリーンは、この塔の地下におるぞ」


 扉に門番はいなかったので、勝手に開けて俺達は階段を降りた。


「じゃじゃーん、完成ー! 食べても太らないケーキ~!」


 ああ、確かに変人だろうな。

 赤いミニスカとチューブトップにマントを翻らせた魔法使いがケーキを掲げている。

 いいのか? 宮廷魔術師と聞いたが。


「マリーンよ」


 パティが声を掛ける。


「ひゃっ! こ、これはパティ様、ごごご、ご機嫌麗しゅう!」


「安心せい、妾は別におぬしが何を作っていようとも叱ったりはせぬぞ」


「ありがとうございます! あざーっす!」


「ところで、ミルフィはここに来ておらぬのか?」


「ああ、昼過ぎに一度、来てましたけど。地下墓地で変なゴーストと戦ったそうで」


 マリーンの話だとミルフィは無事に復活できたらしい。ほっとする。


「うむ、負けたと大騒ぎになっておったな。あやつのことじゃ、落ち込んでいるであろうから、今一度、激励の言葉を掛けてやろうと思ったのじゃが」


 この幼女、意外にまともな王女かも。


「あー、確かに落ち込んでましたけど。今は城の書庫じゃないですかね」


「そうか、邪魔したの」


「いえいえー」


 怪しげな材料や薬品、呪文の巻物が散乱していたが、また後で来てみるか。呪文、教えてくれればめっけものだ。

 塔の外に出て、今度は書庫に向かう。



「ここから行くぞ。秘密の近道じゃ」


 パティが通路のカーテンをはぐると、小さな入り口があった。


「あんまり部外者にそういう所、教えないで欲しいんですが」


 俺はちょっとビビる。


「構わぬ。おぬしが王家に仇なす者であれば、とっくにしっぽを出しておろう」


「お見それしました」


「ふん。王位継承権を持てば、嫌でも権謀術数に(さと)くならざるを得ん。さっさと姉上が結婚相手を見つけて子を産んでくれればいいのじゃが……待て」


 前を行くパティが歩みを止めた。この狭い通路には燭台が無く、壁の隙間から差し込む明かりだけが頼りだ。掃除はしてあるのか、埃っぽくは無い。


「どうした?」


「しっ」


 パティが口元で指を立てるので、こちらも黙って聞き耳を立てる。


「――いや、しかし、あの聖騎士殿が負けるとは、相手はよほどの高位の魔物か、単に油断していたか……いずれにしても我らとしては願ってもない展開ですな、クロマック閣下」


「口を慎め、トリマーキー。聖騎士の評判が落ちるのは一向に構わんが、地下墓地は王城の裏庭、そこで強力な魔物が出たとなれば、ゆゆしき事態ぞ。あそこから外に魔物が出てきたことは無いとはいえ、油断はできぬ」


「はあ、まあ、それは確かに。冒険者に倒させましょうか?」


「そうだな。あ奴らなら、何度死んでも蘇る。飲まず食わずで平気な魔物と同じで気味の悪い事よ」


「まったくですな」


 クロマックとトリマーキーという名の男が二人、壁の向こうで話をしている様子。しかし、王国の騎士であるミルフィが必死に戦っていたというのに、どうにもいけ好かない奴らだ。


「陛下は冒険者共を利用できるとお考えだが、そう上手く行くとは思えぬ。いずれ王宮に楯突く増長した反逆者も現れよう」


「なんと! ううむ、しかし、それでは、奴らを倒す手立てが……」


「なぁに、当てはある。だが、そのためには準備が必要だ。〈南の遺跡〉の調査を急がせろ。冒険者を使っても構わん。奴らにはアレの価値など分からぬのだからな。せいぜい高値を積んでやれ」


「ははっ」


「ふふ、これで後は『光の巫女』さえ探し出せば、我々が勝者だ」


 ドアの音がして二人とも部屋の外に出て行ったようだ。



「クロマックめ、どうにもきな臭いことを考えておるようじゃの。後で父上にご報告しておかねば」


 パティが言う。

 この情報は小雪や守には話してもいいかもしれないが、他の冒険者や掲示板はちょっとダメだな。宰相が高値を出すとなれば、冒険者全体に不利となるようなことでも取引する者が出てくる気がする。


「こっちじゃ」


 秘密の通路を抜け出て書庫の扉を開ける。

 ここはそれほど広くない部屋で、本棚には古びた本が収められていた。


「ああ、パティ殿下」


 白い軍服姿のミルフィが俺達を見て本を閉じた。


「やはりここにいたか。では、大儀であった。お前は下がって良いぞ」


「はっ」


「申し訳ありません、リュートさん、あの魔物について少し調べたいので、今日は別の者に護衛に行かせます」


 ミルフィが言う。


「分かった。まあ、今日は護衛は要らない気がするな」


 この後〈氷花〉と約束通り、サシのデュエルで遊ぶ予定だ。白桜騎士団の護衛を連れて行っては勝負にならないだろうし。


「そうですか」


「ふむ、おぬしら知り合いであったか?」


「ええ、殿下。この間申し上げた、図書館の魔書を倒した冒険者というのは、この方ですから」


「ほほう」


「まあ、俺はラストキルだけだけどね。じゃ、また」


「ええ」


「リュートと申したな、また妾を訪ねてくるが良い」


 パティがそう言ったが、王女相手にそう簡単に取り次ぎはしてくれないだろう。

 不敬かもしれないが、了承したとばかりに手を軽く振って二人と別れた。


『緊急依頼(クエスト)を達成しました。報酬:無し』


 報酬は無かったが、ま、何かのフラグだろうな。

 とにかくミルフィが無事で良かった。

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