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ミッドガーデンの神プレイヤー ― 無課金の俺が伝説の救世主になるまでの軌跡 ―  作者: まさな
第二章 二人の距離

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第八話 バグ

 地下墓地の黒いゴーストを倒した。


「やったぁ! やりましたね、センパイッ! もー、格好良すぎですぅ!」


 真衣は無邪気に飛び上がって喜んでいるが…。


「おいおい、基本経験値ゼロて…しかも報酬がMVPまで全部ポーションって、なんやねん!」

「ニャハハ、思いっきりバグニャー。良かったぁ、レアの討伐報酬を取り損ねたと思ったニャ。ププッ」

「あれだけ痛い思いしたのに、ゼロ…? あのダメージの痛覚変換も何かおかしかったですよね?」

「くそっ、鎧が壊れたのに、これじゃ大損だぜ。ま、ジョブポイントは美味しかったが…」


 加勢してくれた冒険者の四人はやはり異常に気付いていたようだ。

 このゲーム、バグが多いのだろうか?

 俺はそう思ったのだが、関西弁の侍は腕組みをして首をひねった。


「なんや、ミッドガーデンのバグは珍しいなぁ。オレはベータ時代からこのゲームやっとるけど、バグらしいバグは最近まで見た事ないで?」


「アタシもこんなの初めて見たニャ」


「ま、しゃーないな、ここはオレが代表して運営に報告しとく。手に入れたポーションは使わん方がええで。後でなんかと交換してくれるやろ」


 関西弁の侍が手続きしてくれるようだ。面倒だから助かるね。カーソルの所を見ると〈虎徹(こてつ)〉という名前だった。


「頼んだニャー。バイバイニャー」

「自分もコンティニューしてきます。乙でした」


 HPゼロだった冒険者の二人は、死に戻りでこの場から消え去った。


「誰か、アンノウンのジョブって知ってるか?」


 生き残りの一人が聞いた。三日月刀を持った剣士風の男だ。

 俺も気になったので片手を上げて言う。


「あ、俺もそれ、さっき取りました。何かは分かりませんけど」


「アンノウンって。けったいやなぁ。ま、たぶんバグやからジョブチェンジはせんほうがええで。まずは運営に確認や」


「面白そうだ。ちょっとチェンジしてみるか」


 剣士が言う。

 ええ?


「やめとけって」


 〈虎徹〉が止めるが、俺も止めた方が良いと思う。


「まあまあ、物は試しだろ。ちょっとこの剣、持っててくれ。鎧も脱いでっと」


「自分、どないなっても知らんで?」


「どうにかなったら、どうせ巻き戻ししてくれるだろ。よし、チーェンジ、アンノウン! お?」


 見た目は何も変わっていないが。


「どや、なんか変わったんか?」


「うーん、げげっ、このステータスは…! 全部1じゃねえか!」


「ははー、そりゃおもろいわ。それでプレイしてみ。ほれ、剣」


「くっ、装備不可だ。ってか、重っ! うおおお、歩きにくいぃ!」


 黒のインナーだけになった男が歩こうとしているが、スローモーションがかかってるし。

 うわぁ。


「こんなんでプレイできるか!」


「せやから言うたやん。さっさと元に戻しや」


「ああ。なっ! 能力不足でソードマンにジョブチェンジできませんって出るぞ…」


「ぎゃははは、それ、巻き戻しなかったら、自分、アンノウンのままやな!」


 最悪だな。レベルが上がっても能力値が上がらなかったら、ずーっとそのまんまになりそう。


「おいぃー。くっそ、じゃ、さっさと通報してくれ。ログアウト!」


「はいはい。今、メッセージを打ってと…よっしゃ、動画付きで送ってやったから、これで間違いないやろ。ほんなら、巻き戻しも入るかもしれんから、あんたらもレベル上げはもう止めといた方がええで。じゃあな」


 〈虎徹〉も今日はもう冒険を止めるつもりらしい。階段へ向かっていく。


「じゃ、俺らも今日はもう上がろうか」


「そうですね。あ、センパイ、私とぉ…フレンド登録してもらえますか?」


 上目遣いでモジモジしながら言ってくる真衣。


「お、おう、もちろん」


 美少女声優の上月真衣とお友達。これはあとで目覚ましボイスでも頼んで……いやいや、俺はあくまでミッドガーデンの一プレイヤーのフレンドとしてだね――


「後でボイスメッセージ入れておきますね。目覚まし用とか、セ、ン、パ、イ」


「くっ、ありがとう!」


 よく分かってるじゃないか…さすがは人気声優、まだ若いのにしっかりしてるなぁ。地道にこんなところでファンの心をわしづかみなんて、なんてあざとい子!

 あとで主演作品のアニメDVD、anozamaで注文させて頂きます!


「ふふっ、ではではー」


「おう、またなー」


 戦闘は避けたいので、その場でログアウトする。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 翌朝、セーラー服の小雪と一緒に登校。


「へー、お兄ちゃん、そのマイちゃんって子と仲良くなったんだ」


「ああ、まあな」


 真衣が声優というのは内緒だ。俺が上月真衣のファンだというのも内緒だ。

 なぜなら、兄としての威厳を保たねばならぬ。


「やるねえ、お兄、一回パーティーを組んだだけでフレンド登録ってなかなか無いよ?」


「あー、いや、一度、別のところで会ってたりするんだが」


「ああ、そうなんだ。レベルも同じくらいなら良かったね。また一緒にパーティー組んでもらえるだろうし。ごめんねえ? ボクもお兄ちゃんと組みたいんだけど」


「いや、小雪は俺よりずっと上だろ。無理しなくても良いよ」


「うん、ありがと、無理ってわけじゃ無いけど。エリックやレーちゃんって基本が生産職だからボス戦は手伝ってあげたいんだよねえ」


「ああ。あの二人は俺の知り合いだし、良くしてやってくれ」


「うん、分かった。それより、経験値ゼロのボスってやられたねー」


「まあ、レベルはボーナスの方で上がったんだけどな。このゲーム、妙にレベルが上がりやすいのな」


「い、いやいやいや、そーじゃないよ!? あれはお兄が特別なだけで、普通は一年で三つか四つくらいしか上がらないよ」


「そんなもんか。じゃあ、バグだから、またレベルダウンさせられそうだな」


「うーん、それもどうかと思うけどねえ。あ、運営さんがってことだけど。しっかりして欲しいよね」


「まあな」



「よっ、小雪」


「あ、なっちゃん、おはよー」


 ポニーテールの長身の子が挨拶してきた。小雪と同じセーラー服を着ている。瞳の色は違うが、昨日ミッドガーデンで会ったナツキだろうな。


「本当にお前の兄貴だったんだな…」


 ナツキが俺を見て言う。 


「ええ? もー、そう言ったし? あ、じゃあ今度からパパって呼ぼうか?」


「「 やめい! 」」


「ぷぷっ、気が合うねー、二人とも」


「そんなんじゃないだろ。それにしても、一緒に登校なんて、仲良いんだな、お前ら」


 ナツキが言う。


「うん! ねー?」


「ああ、まあな…」


 ちょっと照れくさい。


「へえ、ま、いいや。じゃ、行こうぜ、小雪」


「うん。じゃ、お兄ちゃん、またねー」


「おう」


 二人を見送る。


「はあっ!? 血が繋がってない!?」


 ナツキが再婚の話を聞いたようで大声で驚いてたが、あんまり話さないで欲しいなあ。

 あと驚きすぎだろ。




 学校に到着して、下駄箱を開ける。


「なにっ!?」


 俺は思わず声を上げてしまった。

 そこにはなんと可愛らしいピンクの手紙の封筒が。


 すぐさま左右を見回す。

 よし、オーケー、誰にも見られてない。

 慎重にブツを観察する。

 表には何も書いてない。

 手にとって裏返してみたが、ハートのシールで封がしてあるだけで、差出人も書いてなかった。


 思えばここまで十六年、暗く華の無い人生だった。

 そう、今日までは。

 だが、諸君、僕はもう昨日までの僕とは違うのだよ。

 すまないね。ひがまないでくれたまへ。


 自分の顔がにやけないよう、顔に力を入れて注意しつつ、素早く何気ない風で封筒を鞄に入れておく。

 クラスの連中に見つかったら最後、絶対からかわれるだろうからな。

 それは勇気を振り絞って告白してくれたまだ見ぬその子に対して失礼というものだ。

 中身を開けるのは家に帰ってからにしよう。

 

 しかし、いったい、誰が――?


「おはよう、水沢君」


 後ろから声を掛けられて俺は焦った。


「あ、ああ、おはよう、委員長」


「んん? どうかしたの?」


 こいつか!?

 いや、委員長は真面目でクールなタイプだ。恋愛にうつつを抜かすタイプじゃない。中学の時からの知り合いだが、特に俺と親しいわけでも無い。

 ストレートなセミロングの髪の文学少女で、チタンフレームの眼鏡はおしゃれっ気が無いが……合格だ!

 ひょっとしたら毎日俺への恋を密かに募らせていたのかもしれない。すまない、委員長、俺は気付いてやれなかったね。


「委員長、俺――」


「あ、悪いけど、水沢君、あなたは恋愛対象としては無理だから、私に対して変な妄想や希望的観測は抱かないでね?」


「ぐっ! お前、なんだよ、無理って。あと、まだ何も言ってないのに、それは失礼じゃないか」


「ええ、ごめんなさい。でも、あなたの目が怪しかったから。まるで愛おしそうに運命の恋人を見つめるストーカーのような気持ち悪さだったわよ、今」


「そ、そうか、気のせいだ」


「ええ、ならいいけど」


 どうやら違ったようだ。いかんな。少し冷静になろうじゃないか。

 俺は気を引き締めて教室に向かった。

竜人が浮かれています。大目に見てやって下さい(;´Д`)

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