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ミッドガーデンの神プレイヤー ― 無課金の俺が伝説の救世主になるまでの軌跡 ―  作者: まさな
第二章 二人の距離

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第二話 装備を買いに

 真衣ちゃんの握手の感覚を思い出して余韻に浸っていると、ミルフィが鎧姿に着替えてやってきた。


「お待たせしました、リュートさん」


「ああ、今日もよろしく」


「ええ…」


 なんだかミルフィの元気が無い様子。


「どうかした?」


「い、いえ」


「そう。あ、悪いけど、小雪に今日は装備品を紹介してもらう約束だから、それまでちょっと待っててくれる?」


「はい。いいですよ。ちなみに、つかぬ事をお伺いしますが……」


「ん? なに?」


「リュートさんは上月さんの事がお好きなんですか?」


「えっ、いや、まあ、好きだけど」


 透明感のある声質に加え、演技力もあるからな。歌も上手いし。


「…そうですか…」


 なんだかミルフィがさらに落ち込んだ様子。


「声優としてだけどね」


 誤解されそうな気がしたので言っておく。


「声優……、バードやアクターの事ですね。ああ、ファンとして?」


「そうそう」


「なるほど」


 ミルフィが少し元気になった様子。

 それって――




「お待たせー! お兄ちゃん」


 ちょうど小雪がログインしてきた。


「おう」


「じゃ、今日は装備品を買う予定だったね。ボクの知り合いに腕利きの鍛冶職人さんがいるから、任せて!」


「それはいいが、金は…?」


「はい、それは私が預かってきました。お二方に王立図書館の館長から事件の解決への謝礼として五百ゴールドと本を一冊、王宮の方からも褒美として千ゴールドと【白翼五位勲章】。それから〈白桜騎士団〉からも捜査と事件解決にご協力頂いたお礼に五百ゴールドと〈手拭い〉を」


 ミルフィが硬貨のズッシリ入った袋を渡してくれた。


「おお、ありがとう」


「ありがとー。合計二千ゴールドだね。これで良い装備が買えるよ、お兄ちゃん、やったね!」


「ああ。布の服なんてまだ初期装備だもんなぁ」


 よくこれでボスを倒せたもんだ。


「うん、ホントそう。じゃ〈蒼き星の剣屋〉にゴー!」


「おー!」

「はい」


 俺とミルフィと小雪の三人で店に向かう。

 〈蒼き星の剣屋〉は〈南の商業区〉の一角にあった。クラン加入者やフレンドはこの王都のどこからでもワープできるそうだが、俺が道順を覚えるために徒歩で向かう。


沙耶(さや)ちゃんはねえ、クランのリーダーさんでもあるんだよ。だから、クランのメンバーが作ってる道具なんかも取り扱ってるし、お店レベルやランクもトップクラスだよ」


 小雪が歩きながらこれから紹介してくれるという鍛冶屋の話をした。


「そりゃ凄いな。俺に合う武器があるといいけど」


「うん、初心者向けの剣も作ってるから大丈夫。オーダーメイドもやってるけど、今は気にしなくて良いかな。武器の使い勝手や自分の好みが分かるのってある程度は馴れてからだし」


「ふむ」


「初心者は短めで軽めの剣をオススメしますよ。重ければ威力は増しますが慣性で扱いにくくなりますし、筋力が無くてはスピードも出ません。長い武器は間合いで有利ですが、それだけで重くなりますし」


 ミルフィが武器の重さについても説明してくれた。


「そーそー。槍だと狭い場所は振り回せないし、斧は重いし、鎖鎌やハルバードなんて実戦で使える気しないもんねー。カテゴリ別の熟練度もあるから」


 小雪も言う。

 ま、最初は剣が良いだろうな。他の武器は使うにしても余裕が出てからで。


 たくさんの店が建ち並ぶ通りに出た。店先には様々な武器や鎧が並んでいる。目を引くのはゴツそうな武器や蛍光色の武器だが…世界観に意外に馴染んでいるのが不思議だ。


「そこの十字路の角だよ」


 小雪が指差した。その店だけ大勢の冒険者が集まっている。


「すみませーん、グレートアックスはもう売り切れでーす。次の入荷は来週になりまーす」


「くそっ、昨日買っとけば良かったな。仕方ねえ、修理頼むわ」


「毎度!」

 

 繁盛しているようだ。


「グレートアックスって貴重なのか?」


 小雪に聞いてみる。


「んーん、そんなこともないよ? あんまり使い手がいないから置いてる店も少ないけど、王都のNPCの店にもちゃんと売ってるから」


「この店は安いのか?」


「んー、普通?」


 じゃあ、なんで…。


「武具は作り手の魂が()もるとも言われています。同じ形のショートソードであっても鍛え方、微妙な長さや重心の位置で使い勝手や攻撃力が変わるのです。だから、名工の品となればそれだけで品薄となり破格の値段が付くのですよ。誰しも(おのれ)の命を預ける武器には金を惜しみません」


 ミルフィが俺の疑問に答えてくれた。


「ああ、なるほど」


 それなら良い武器が買えそうだ。 


 



「お兄はこっちだよ」


 並ぼうとしたら小雪に手を引っ張られた。そのまま横のドアから店の中に入る。


「あれっ?」


 俺は思わず周りを見回した。

 中は外よりもずっと広い。ホテルのラウンジのようになっており、さらに向こうにはテラスもあった。

 外の敷地と店の中のマップは完全に別で独立しているようだ。

 ソファーでたくさんの冒険者がくつろいでいたが、数人が俺達に気付いて手を挙げた。


「よう、小雪」

「こんにちは」

「おーっす」


「こんにちは! 沙耶さん、いる?」


「ああ、ギルマス部屋だよ」

 

「ありがと。じゃ、行こう」


 廊下を進み、『執務室』とプレートがあるドアを小雪がノックした。


「どうぞ」


 中から色っぽい女性の声がして、小雪がドアを開けた。


「きたよー」


「ああ。いらっしゃい、小雪ちゃん、さあ、三人とも入って」


 漆黒のドレスを着た黒髪ロングの女性がニッコリ笑って俺達を迎え入れてくれた。

 前髪ぱっつんのゴスロリ美人だ。


「こっちが沙耶さん、クラスは刀工(アンキャリエ)。で、これがうちのお兄ちゃん」


「ふふ、お噂はかねがね。どうぞよろしく」


「はあ、どうも。リュートです」


 手を差し出されたので握手する。刀工というけれど、普通の女性の手だった。

 胸元が大胆に開いているので、視線がどうしてもそちらに吸い込まれるが…。


「コホン、お兄ちゃん、どこ見てるのかな?」


「い、いや」


 慌てて俺は顔を背ける。


「ああ、ごめんなさい、男子高校生には少し刺激が強すぎたかしら? うふふ」


「もー、沙耶さん、わざとだよね?」


「さあ、どうかしら? 私がいつもこんな感じの服装なのはあなたも知っているでしょう?」


「それはそうだけど…やっぱり服、変えて」


「ふう、仕方ないわね」


 そう言うと沙耶は一瞬で胸元が隠れたドレスにチェンジした。

 その方が俺としても落ち着ける。


「ありがと」


「ええ。リュート君はサイドコアは最近買ったのだったわね?」


「ええ。デスクトップのRPGはそれなりにやってきてますけど」


「旧型か……。なら、慣れてくるまで重い武器は止めた方が良いでしょうね。魔法剣士だそうだけど、魔法メインで行きたいの?」


「ええと、いや、剣と魔法、両方使えればなと」


 俺は迷いつつ答える。


「中途半端ね。まぁいいでしょう。金属を使わない鎧なら魔法も阻害しないから、敏捷値が下がらない革鎧(レザー)でいいのではないかしら?」


 小雪も横で頷いているのでそれでいいだろう。


「じゃあ、それでお願いします」


「ええ。じゃ、剣と盾と鎧にブーツも更新で、予算はどれくらいかしら?」


「全部で二千ゴールドで」


「なら、この辺かしらね」


 沙耶がウインドウを開くと、空中に装備がいくつも出てきた。

 革鎧でも材質が違うようで黒色や赤色や灰色がある。革の表面の模様は見覚えがある。五センチくらいの正方形が連なったもの。ワニ革だ。

 本物志向の革だな。


「お兄ちゃん、これがいいよ。そっちの黒クロコダイルじゃなくて。すべすべのが良いよ」


「ん? ああ」


 小雪が指差した革鎧には正方形の模様は無い。


「ふふ、ボコボコしてるのは竹班(たけふ)って言うのだけれど、防御力にはほとんど影響しないわよ」


 沙耶が言う。

 なら、後は材質だけだな。

 〈材質:バジリスク〉というのを見つけたが、1500ゴールドとちょっとお高い。

 防御力は高いが、剣や他の装備もセットで買うつもりなので、もう少しランクが低い方が良いな。

 〈材質:レッドリザード〉というのは1200ゴールドでちょうど良い感じだが、赤色は派手すぎて落ち着かない感じ。


「うーん。これの茶色って無いんですか?」


「ああ、色は自由に変えられるわよ。じゃ、茶色がいいのね?」


「ええ」


 沙耶が刷毛を取りだしたかと思うとさっと一振り。色が茶色になった。


「サイズは自動調整だけど、動きやすさは感覚に個人差があるの。引っかかるようなら削ってあげるから、言ってね」


 沙耶がそう言うのでひとまず鎧を装備して剣を振ってみる。胸の部分は叩くとコツコツと音がするくらい固いが、特に邪魔にならない感じ。


「大丈夫です」


「はい、決まり。次は盾ね」


 盾は一回り大きなサイズの樫の木にレッドリザードの革を貼り合わせた物。これは200ゴールド。

 ブーツもレッドリザードで統一し茶色にしてもらう。値段は100ゴールド。


「じゃ、剣の予算はこの辺りになるわね」


 半数近くがグレー表示になり、予算内で選べる物が手前に来た。


 その中でシンプルなショートソードが何となく目に入った。

 〈鉄のショートソード+2〉と表示されている。


 俺は手に取ってみたが、初期装備より少し重いものの、長さは同じくらいで使いやすそうだ。


「じゃあ、これで」


「待って。剣は他のもいくつか振って、比べてみた方が良いわ」


 沙耶がそう言うので、少し長めの物や、幅広の剣も試してみる。


「ああ、こりゃダメだ」


 持っただけで明らかに重量があるのは振り回すのに苦労しそうだ。

 長いのも的を出してもらって試し切りしてみたが、かえって当てにくい。


「やっぱりこれで」


「そう。魔法剣士のあなたならそれでいいのかもしれないわね。じゃ、小雪ちゃんの紹介だから、1800ゴールドにオマケしてあげるわ」


「いいんですか?」


「いいわ。材料費はちゃんと上回ってるもの」


「どうも」

「ありがとー、沙耶ちゃん!」


「どういたしまして。そちらの聖騎士さんは何か買っていく?」


 沙耶がミルフィに聞いた。


「いえ、今日のところは遠慮しておきます」


「そう、残念。ああ、リュート君、うちのクランに入りたいなら、歓迎するわ」


「ああ、いえ、今のところはちょっと…」


「そう、まあ、どれかに所属してた方が良いと思うけれど、他のクランも見て決めればいいわ。うちに入らなくても、小雪のお兄さんなら装備品は色々融通してあげる」


「どうも」


「うちのクランは生産品のほとんどをカバーできてるからお得なんだけどなあ」


 小雪が残念がって言うが、俺は今のところあまりメリットを感じない。


「また今度な」


「うん。じゃ、沙耶ちゃん、またね」


「ええ、また装備が欲しくなったらいらっしゃい。いつでも待ってるわ。いつでもね」


 沙耶はミステリアスな笑みを浮かべた。




[リュート]

【装備】

鉄のショートソード+2

レッドリザードの革鎧(茶色)

レッドリザードの小盾(茶色)

レッドリザードのブーツ(茶色)


【攻撃力】47(+22)

【防御力】40( +20)

【素早さ】32(-2)

【魔法攻】44

【魔法抵】34(+6)




小雪のスキル【鑑定 Lv3】による鑑定結果


【名称】 鉄のショートソード+2

【種別】 剣

【材質】 純鉄

【効果】 攻撃力+22

【耐久】 500 / 500

【重量】 3

【総合評価】 A

【解説】

 高度に精錬された鉄を用いた短剣。

 鉄は特定の不純物との合金でより強い鋼となるため、

 鋼が作れる名工は普通ここまでの純度にしない。

 そこに作り手のこだわりが感じられる一品。

 〈装備中〉




「えっ? じゃあ、鋼の方がいいじゃん!?」


「ま、そこは値段だろうな……」

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