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星の降る世界  作者: 遊羽
3/3

第2話

や、やっとできた。なんかしっくりこないのが残念……。


誤字脱字誤用ありましたらお知らせください。

12/6 国の構造の説明を修正。

 入学してから2か月と半分ちょっと。1年を4分割されたこの学院では、だいたいの講義は四半年で区切られている。クォーター制というやつだ。1クォーターは、あの怪我以外に特筆すべきこともなく順当に終わっていった。まぁあの3週間は、かなり響いたけど無事に単位は取れた。


 2クォーター目、初っ端の授業は「効率的魔力変換学基礎」。こういう系の講義自体は何回かやってきたが、ここにきてやっと専門的な講義が受けられるらしい。


『魔法の基礎はまず魔力を作ることだ。その魔力を生み出すには星力を変換させる必要がある。この講義では、その変換をスムーズに効率的に行うための理論を学び、最終的には……このように5等魔法1発分を2秒以内に変換できるようになることが、目標だ。』


 教壇では、髪も服もカチッと決めた細目の男性が魔力変換のデモンストレーションをしている。レイネスト=リムレーという名で姓からわかる通り貴族出身で准教授のようだ。


 「なぁハルター、今日の午後は暇だよな。ちょっと街行こうぜ!」


 おいおい、まだ講義始まったばっかりだぞ。こいつ……いつも講義真面目に受けてないくせに毎回いい点とりやがってぇ。一篇、痛い目見ればいいのに…………。


 「真面目に講義受けろよ。ったく……。いいけど、僕、午後最後に講義入ってるから5時には帰るよ?」


 「おっけー。じゃあ飯食ってからな!」


 毎回思ってるけど、こいつ断られるなんて思ってないな。まぁ僕も用事あるからいいけど……。なんか釈然としないんだよねぇ。


 「でさぁ、この前ユリアと――」


***


 『――であるから、変換術式の発動中には、魔法はおろか星術も使えなくなる。その無防備な時間を極力消すために効率的な魔力変換を行っていかなければならない。次に――』


 丁度、講義終了の鐘がゴォーンとその身を震わせる。


 『もうそんな時間ですか。では、今日は終わりにしましょう。』


 そう言い残すとスタスタと教室を出ていった。


 や、やらかしたぁー!アルとしゃべってたら講義の内容書き写すの忘れてた……。


 「やべぇ」


 「お、どうしたハルター」


 「いや、書き写すの忘れてたんだよ。やっちゃったよ。誰かに借りるか……」


 「あ、じゃあ、俺の見るか?」


 そう言って、講義内容が書かれた紙が出てきた。


 は!?なんでだよ。お前、ずっと僕と話してたじゃん!


 「は、え、なんでお前、書き写してるの!?絶対書き写してなかったじゃん。」


 「いや、書いてたからね。ハルターが知らないだけよ~。で、いるの?いらないの?」


 「…………いります」


 「はいどうぞ」


 「助かる」


 くそぅ。すごくわかりやすい…………。

 

***


 グリーザ帝国の首都、帝都フェキナガは学院を中心に置いた正八角形をしている。学院を中心にして等間隔に描かれた9つの正八角形を外縁のそれぞれの頂点へ8つの主要道路が走っている。南にある皇宮に向かう道を1番道といい、時計回りに8番道まで割り振られている。9つの正八角形は学院に近い順に1輪線りんせん、2輪線、と9輪線まで続いている。


 上空から見た帝都は蜘蛛の巣型といって間違っていない。ちなみに住所を言うときは、「2番5輪の〇〇さん」といった感じだ。


 学院の周りには、カフェやレストランから鍛冶屋、宿屋に至るまで多種多様な店が構えている。それより南側には貴族たちの住む区域があって、西側には専門店街がある。北側及び東側は下町で平民が主に暮らしている。東側の一番外側はゴーストタウン化していてスラム街になっているらしい。とはいえ、7番道自体は警備もあり行き来するだけなら安全らしい。


 学院の正門から仲良さげに言い合いをしながら出てくる二つの人影があった。


 「もう1時だってのに飯も食えてないのはアルのせいだからな!」


 「わかった。わかったよ。そんな何度も言わなくても……。後でなんかおごるからさぁ」


 本当に反省してんのかよ、アルはぁ!一番前に座ったくせに開始5分で居眠りするから講義1回目から目つけられたじゃないか!しかも、とばっちりでその講師の手伝いさせられるし。はぁ~。


 「エフィナートのプレミアケーキでもおごってもらおうかな」


 学院近くにある人気のカフェの一番高いケーキにアルの顔面が若干ひきつる。公爵家と言えどもお小遣いは限られているのだから当然だ。


 「ぎ、銀貨2枚……。こ、今月、あと金貨1枚しか残ってないのに」


 「アルのお小遣いって月に金貨5枚じゃなかったっけ?何に使ったんだよ。」


 金貨5枚つったらちょっと上の方の平民の年収くらいあるぞ。それを半月で半分以上使うなんて…………。


 「いや、まぁ、そりゃあ、こ、交際費、とか?」


 「セーリエ=ヘルマン嬢とのか?」


 「え!?なんで知って」


 「知らないとでも思ってたのかよ」


 セーリエ=ヘルマン嬢は、オルドール公爵家の派閥に属している侯爵家のご令嬢だ。母親譲りの透き通った碧い髪と父親譲りの翡翠の瞳は、どことなく浮世離れした印象がある。ただ、ビーストタイプなだけあってその戦い方は苛烈で、通常時とのギャップに二重人格かと思うほどだ。ちなみにモデル:ウルフで犬耳が可愛い。


 「え、あの、ユリアには内緒で」


 「最初に言うことがそれかよ。下衆すぎるだろ。泣かすなよ」


 「分かってるよ。一番はユリアだからさ」


 ユリアちゃんはアルがまだ平民の時、近くの孤児院に住んでいた女の子だ。今もその孤児院に住んでいて、アルと度々会っているらしい。


 「知ってるよ。まぁどっちにしろケーキはおごってもらうけどね」


 そう、僕は知ってる。セーリエ嬢の方から近付いてきたこと、派閥上無下にできないこと。そして毎月金貨2枚が孤児院に送られていることを……。


 「よし、この話は終わりっ!さぁエフィナートへいこう!」


 アルはくるっと踵を返しカフェのある方へと歩いていく。僕はケーキの味を想像しながら遅れないようについていくのだった。


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