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闇を狩る者  作者: 池田中務少輔輝里
DARK HUNTER
39/41

『DATE5』

本当にいいのか?僕は尋ねた。僕としてはデートが終わって家に帰れるのは嬉しいが佐藤的にはそうではないはずだ。今回のために映画の前売り券まで買ったぐらいだ。


「なんかこのまま続けてもうまくいかない気がしてな」

初っ端でいきなりのトラブル発生だからな。でもそれは佐藤のせいじゃない。それに奴は痴漢から僕を助けてくれた。まあ助けなくても自分で痴漢を殴ってやったが。しかし、男を惹きつけるという己の美貌にウンザリする。ロリコンが己が教義を捨ててまで僕に痴漢してくるんだからな。可愛いに越した事はないが、ここまでは必要ない。他の女子からしたら自意識過剰だと思うのだろうか。

まあそれはさておき、このまま帰るのも気が引ける。せっかく出てきたんだからデートじゃなく友達同士で遊びに来たことにしよう。


「だったら久しぶりにゲーセンに行かないか?」

ゲーセン?そういや確かに久しぶりだな。えと…最後に二人で行ったのは…僕が女の子になる前だ。本当に久しぶりだ。よし行こう。久しぶりの対戦だ。腕がなるぜ。

結論から言うと僕は完敗した。大敗した。惨敗した。なぜだ?ゲームの腕前は僅かながらでも僕が上だったはずだ。


「お前、なにか不正してないか?」

疑惑の目を向ける。


「してねーよ」

納得いかない。


「お前、最近ゲームしてないだろ?」

そう言えばそうだな。ゲームはシスターが夢中になっている。


「ブランクだよ。俺は定期的に来ていたからな」

なんで誘わなかったんだよ。


「姫前に止められていたんだよ。お前の身を案じてな」

みちるはどうも僕に対して過保護が過ぎるようだ。まあいいや。楽しんだんだし帰るか。


「もう帰ろうぜ。まあ、最後に夕焼けが綺麗な丘に行くだけなら行ってもいいけど」

「いや、夕日が綺麗な丘じゃなくて夜景が綺麗なレストランでディナーをと思っていたんだが」

どこだよそれ。ホテル?お前の身分でそんなレストランの予約がよく取れたな。みちるが?さすがはお嬢様だ。


「それキャンセルできるのか?」

「もうしてあるよ」

手際がいいな。でも、残念って顔してる。本当は行きたかったんだな。ここで一人で行けば?と言うほど僕は空気を読めない人間ではない。


「なあ、お前さえよかったら今晩はうちで食べないか?」

「うちってお前の家か?」

そうだよ。姉さんとシスターがいるから二人っきりじゃないけど、僕の手料理だ。


「お前が作るのか?」

別に意外じゃないだろ。毎日、弁当を作ってきてやってるじゃないか。


「いいのか?急にお邪魔しても」

それもそうか。姉さんに連絡しておこう。多分、ウェルカムだと思うけど。


「もしもし、姉さん?こうこうこうで…うん…

そういうわけで…え?いやそれは…待って!」

切れた。


「どうした?」

「今日はシスターとどっかで泊まるから二人で食べなさいって」

「は?」

うん、意味わかんないよね。どっかで食べてくるから二人で食べなさいならわかるが泊まるって今日は帰らないってこと?あ、ラインが来た。姉さんだ。


『女の子が一人でいるのは危険だから佐藤くんに泊まってもらいなさいね。ファイト!』

僕の安全を図るなら姉さんがいた方がいいと思うが。それにファイトってなに?佐藤と対戦しろと?何の対戦だ?佐藤に泊まってもらえっていきなり言われても佐藤だって困るだろう。


「佐藤、今晩お前うちに泊まれるか?」

「は?」

「姉さんがお前に泊まってもらえって。僕一人だと心配みたい」

「いや…それはちょっとまずいんじゃないか。いろいろとな」

「?」

なにがまずいんだ?うちに泊まるのは今日が初めてじゃないだろ。


「それはお前が女になる前だろ。さすがに女の子が一人でいる家に泊まるのはな」

それもそうか。僕たちまだ高校生だもんね。


「泊まるのは姉さん達がいる時にして今日は晩ご飯を食べて遊ぶだけにしよう」

「でも、女の子を一人にするのもな」

どっちだよ。そりゃ近頃、物騒な事件が多いけど。首刈り事件とか壁埋め事件とかミイラ化事件とかさ。


「心配ならみちるに来てもらうから」

その方が佐藤がいるよりも安全だ。


「そ、そうだな。姫前なら安心だな」

そう言う割にはがっかり感を漂わせているのはなぜだろう。

というわけで、今晩はご飯を一緒に食べるだけになった。献立は何にしよう。


「なにか食べたいものある?」

「そうだなぁポトフがいいな」

ポトフか。カブを買わないとな。帰りにスーパーに行こう。


帰宅。鍵を開けて玄関に入る。


「ん?どうした?」

佐藤が外に突っ立ったまま中に入ろうとしない。


「いや、ここに来るのはあの時以来だなって」

あの時とは佐藤が僕のパンツをポケットに忍ばせて、それが僕に露顕するや口封じにキスした時の事だろう。それで奴はみちるの制裁を受けて入院したのだった。トラウマにもなるわな。


「大丈夫だよ。僕の部屋には絶対に入れないから」

「そ、そうだな。アハハハ」

笑いで誤魔化しながら佐藤も家に入った。


「ご飯の支度するから居間でテレビでも見てて」

「何か手伝おうか?」

「いいよ。できたら呼ぶから」

「ああ、わかった」

佐藤を居間に通して買って来た食材を台所のテーブルに置く。実はポトフは作るのが初めてだ。だからスマホで作り方を調べる。食べたことはあるので何が入っているかぐらいはわかる。ふーん、ポトフってこういう風に作るのか。早速やってみよう。その前に着替えよう。スカートのままだと中が見えないように気をつけないといけないから面倒くさい。自分の部屋に行き、服とスカートを脱いで下着だけになる。さすがにもう自分の見ても何にも思わない。でも、他の女の子の裸を見るのはなんかいけない気がする。僕も女の子に裸を見られるのは恥ずかしい。男になら見られてもいいのかって?うーん、見られるのは嫌だけど、それは恥ずかしいからじゃなくて身の危険を感じるから。あの時は本当に怖かった。佐藤がいなかったら僕はどうなっていたかわからない。そう思うと佐藤には感謝しないとね。


「……」

なんだろう。何かの気配を感じる。それも人の気配じゃない…。あれ?前にも似たような感覚に襲われたことがあったような…。気のせいかな?気配はすぐに消えた。やはり気のせいか。


着替え終えてキッチンに戻ると佐藤に出くわした。どうした?


「いやトイレに」

そうか。


「着替えてたのか?」

そだよ。いまから作るからもうちょっと待ってて。


「急がなくていいぞ。焦ってケガしないようにな」

素直に他人を気遣えるところが佐藤の良いところだ。そんな奴でも理性を失う時があるので注意が必要だが。さて、作り始めるか。小説まあ漫画もそうだが、料理をしていく過程を省いてすぐにできた事にできるから便利だ。ほらできた。他にもいくつかおかずを作ったよ。佐藤を呼んで食べよう。

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