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闇を狩る者  作者: 池田中務少輔輝里
DARK HUNTER
35/41

『DATE1』

 前々々回、辛うじて命拾いした僕は安堵する間もなくみちるから爆弾を落とされてしまった。佐藤と付き合えだって?まさかみちるも正気を失っていたなんて…。一晩明けてみちるの頭も冷えたかと思ったら、学校で顔を合わせるなり


「佐藤に告った?」

 ときたもんだ。


「ううん」

「どうしてよ。佐藤が気づいたら告白しなさいって言ったでしょ」

 みちるの筋書きはこうだ。自分を守ってくれた佐藤の男らしさに胸がキュンとなった僕が奴をただの友達じゃなく異性として意識するようになる。でも、それは無意識に僕が奴に抱いていた感情でようやくにして自分の本当の気持ちに気づいて佐藤に想いを伝えるというものだ。ツッコミどころが満載だ。僕が奴にキュンってなることは有り得ないし、奴を異性と見たことは一度もない。これが僕の本当の気持ちだ。


「男と付き合うなんて絶対に嫌だ」

「あんたの身の安全のためなのよ」

 僕と佐藤が付き合っているって知ったら他の男子も諦めるはずだというのがみちるの論だ。


「まあ佐藤の体には無数の風穴が開くことになるだろうけどね」

 愛する女のために死ねるなら男の本望って奴よとみちるは続けた。愛する女ね。佐藤には僕に無理矢理キスした前科があるから少なくとも好意は持っているだろう。身を挺して僕を守ってもくれた。


「付き合うならみちるとの方がいいのに」

「バカ。嬉しいけど女の子同士は…ね」

 だったら男同士も問題じゃないの?


「あんた、いい加減自分が女だって自覚持ちなさいよ」

 そんなこと言っても女の子になりきるなんてできない。そりゃ、女の子よりも女の子らしいバディだし、いっちょまえに生理まである。いらんのに。それでも、たとえ体が100%女の子だとしても男と付き合う?それは因果律そのものへの反逆だ。僕はずっと健全な男の子だったんだ。それが女の子になったからって、はいそうですかと男の矜持を捨てられるかってんだ。


「男と付き合うなんて絶対に嫌だ」

 僕はさっきと同じセリフを繰り返した。僕の頑なな態度にみちるもハーッとため息を吐いて


「だったらせめて付き合ってるフリはしなさい?あんたに悪い虫がつかないようにするためなんだから」

 あいつらはハエや蚊よりも性質の悪い害虫なんだからとクラスメートを虫扱いするみちるだが、言っていることは正しい。昨日みたいな事を思うと捨て駒は必要だ。みちるがいつもいてくれるとは限らないし。


「わかったよ。そうする。でも、付き合うつもりもないのに告白ってどうなのかな?」

 それは相手に失礼じゃなかろうか。


「それもそうね。昼休みにでも三人で話しましょ。あ、ちょうど佐藤が来たわね。伝えてくるわね」

 その後、佐藤が怯えた様子で僕のところへ来て


「俺、姫前に何か怒らせるようなことをしたかな?」

 なして?


「昼休みに話があるから顔を貸せって言われたんだ。お礼もしたいとかって」

 確かにみちるからそう言われたら誰でも怯えるな。


「大丈夫だ。僕も一緒にいるから」

 すると佐藤はホッとした顔になった。


「お前がいてくれたら安心だな」

 そうかな?


 昼休み。僕らは屋上に行って話をすることにした。みちるがあーだこーだ言うと佐藤は承知したと頷いた。

「話はだいたいわかった。俺とこいつが付き合うフリをすればいいんだな?」

「そう。あくまでフリよ。変な気を起こしたらろくでなし三男坊みたいに顔面を変形させて鉄仮面が欠かせない顔にしてやるから」

「わかってるよ」

「あと、遺言書は書いておきなさい。生命保険にも入った方がいいわね」

 どうしてとは佐藤は聞かなかった。自分が捨て駒としての役割しか期待されていないのを承知しているようだ。いい心がけだ。


「ちょっといいかな?姫前ちょっと」

「なによ?」

「いいからちょっと」

 佐藤がみちるをつれて何かゴニョゴニョ言ってる。二人だけで話すのは感心しないな。僕に聞かれたくない内容みたいだ。あ、話が終わったみたいだ。みちるがチラっとこっちを見た。なんだろう。


「わかったわ。あの娘の様子を見ると難しいと思うけど、その方があの娘のためだもんね」

 何を言ってるんだろう。


「でも、無理矢理手籠めにしようなんてしたら、あんたを土ん中に埋めて男子全員に鋸を引かせるからね」

「わかってるよ」

 何が話し合われたんだろう。


「さて、めでたくあんたたちは晴れて恋人同士になったわけだけど」

 恋人…。なんか他に言いようがないかな?仲のいい友達とかさ。たとえフリでも男と恋人って…。僕ら以外は本当の恋人だって思うわけだよね?そんな僕の不満を知ってか知らずかみちるはどんどんと話を進めていく。


「恋人同士に見せないといけないから昼は一緒に食べる事。あんた、佐藤に弁当作ってるけどこれからは教室で食べなさい。皆に見せびらかすようにね。あんたが食べさせてあげるってのもいいわね」

 いわゆる“あーん”ってやつだな。男なら憧れるシチュエーションだ。


「待て、それは勘弁してくれ。そんなことしたら俺の命がない」

 佐藤が全力で拒否する。みちるも納得したようで


「それもそうか。いまでもあんたを刺したくてしょうがない連中がいるもんね」

 そんな奴らがいるのか。高校生にしてそれだけの恨みを向けられるとは業の深い奴だ。


「佐藤ってそんなにひどい奴だったんだ」

 がっがりだ。


「…お前のせいだろ」

 ?佐藤がなんか呟いたようだけど聞き取れなかった。


「まあいいわ。お弁当のことは取り消しね。代わりにそうね…」

 代案を思案するみちる。たいてい、ろくでもないことを思いつくんだよね。


「やっぱデートは欠かせないわね。佐藤あんた次の休みまでにデートプラン考えなさい」

 ほら来た。何が悲しゅうて男とデートしなきゃならんのさ。


「フリだけよフリ」

 貞操を守るためには我慢も必要か。でも、なんだかなあ。


「そろそろ教室に戻らなきゃ。そうだ、あんたたち腕を組んで教室にもどりなさい。仲の良いバカップルに見えるわよ」

 バカは余計だ。佐藤がボソッと呟く。


「姫前、お前本当は俺を殺させたいだろ…」

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