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闇を狩る者  作者: 池田中務少輔輝里
DARK HUNTER
25/41

『MONSTER』

 先週の野球部の練習試合はシスターのおかげで勝利することができた。本当、シスターって何でもできるんだな。でも、あの後パワーを使ったからといつもの倍の食事を要求されたのには参った。いつもでさえ僕の倍以上は食べるんだから。今日はそのシスターを連れて佐藤の見舞いに来ていた。病室に入ると奴のご家族が来ていらっしゃっていた。


「こんにちは」

「こんにちは」

 互いに挨拶する。


「これお見舞いです」

 来る途中で買った果物を乗せたバスケットを奴の母親に渡す。


「ごめんなさいね。わざわざ」

「いえ」

 事情を知っているせいかどうもぎこちない。そりゃ、女になった男友達の下着を物色してそれが発覚するや口封じに口唇を強引に奪った挙句に、クラスの女子に制裁を加えられて入院となったらぎこちなくもなるわな。佐藤とその家族には大変な不名誉になるので言いたくはなかったけど、そうしたら殺人未遂でみちるが連行され送検され起訴され判決を下され控訴を棄却され上告を棄却され収監されてしまう。息子の不祥事を隠蔽する代わりにみちるを告訴しないという事で司法取引が成立したわけだが、やはりそう易々といつもどおりとは行かないだろうな。気まずい空気が流れる。来るタイミングを間違えたな。向こう側からしたら“悪いのはこっちだけど、だからって何もここまでしなくても”という思いがあるだろう。だから、素直に謝罪できない。手前勝手な話とも思うが、確かにみちるはやりすぎだ。せめて半殺しにしておいたら良かったのに八分殺しだからな。


「具合はどうですか?」

「経過は順調よ。来週には退院できるみたい」

「そうですか……」

 命に別状が無くて良かった。


「今日は来てくれてありがとう。本当ならお宅に謝りに行くべきなのに時間が取れなくて……」

「いいえ、お忙しいのは知っていますから。それに僕はもう気にしてませんから」

「そう言ってくれて助かるわ。それじゃおばさんたちは帰るから後よろしくね」

「はい」

 僕がお辞儀するとシスターもそれにつられて頭を下げる。日本に来て数ヶ月(どこから来たかはしらない)、日本の礼儀も少しはわかってきているようだ。さて、患者の見舞いをするか。


「どうだ?調子は」

「ん?見ての通りだ。来週には退院できる」

 それはさっき聞いた。


「思ったよりも重傷じゃなかったみたいだな。もう退院できるなんて。後遺症とかは?」

「いや、無い」

「だったらやっぱりそんなに重傷じゃなかったんだ」

「いや、というより施術した医師が優秀だったからじゃないのか?」

 そうなのか?


「だと思う。だって俺マジで川が見えたんだよ」

 川?川ならどこにでもあるが。


「いや、三途の川だ」

 まあ、その川も人間誰しもが絶対に見る川だからある意味どこにでもある川だ。


「でもそれは自業自得だ」

「ああ、わかってる。ちゃんと反省しているよ」

 後悔しているだろうとはわかっていた。元は男だった奴の下着を物色したうえに口唇を奪う凶行に走ったんだからな。ちょっと、意味が違う気もするが女なら誰でもいいんだろみたいな感じになってしまう。こいつはそんなに欲求不満だったのか。お年頃と言えばそれまでだが。


「果物切ってやるよ。食うだろ?」

「そうだな。もらうよ」

 椅子に座ってテーブルに置いてあるバスケットからリンゴを取り出してナイフで皮を剥いていった。


「できたぞ」

 カットし終えたリンゴの乗った皿を差し出す。


「さんきゅ」

 リンゴを爪楊枝で刺して口に運ぶ佐藤。それを物欲しげな顔でシスターが見る。


「駄目、これは見舞いに持ってきたんだから」

 すると今度はこっちをジーッと見上げてきた。無駄だ、そんな事したってリンゴはあげな…って勝手に手が動いてる!?


「おいしい!」

 それはよかったね。あまりにも可愛いから無意識に手が動いてしまった。だーめ、これ以上はあげないよ。よせ、そんな目で僕を見るな。無駄だぞ、そう何回も同じ手に……しまったぁ、またしても手が勝手にぃ!結局、リンゴはほとんどがシスターの口に入った。


「す、すまん…見舞いに持ってきたのに」

「いいよ、気にするな」

 佐藤は笑って許してくれたが、そろそろシスターの食い意地の悪いところを是正してやらないとな。


「学校の様子はどうだ?」

「別にいつもと一緒さ」

 そうだ、ここ最近夜間の学校に警備が厳しくなっているらしいよ。教師だけでなく、警官も警戒にあたっているみたい。


「何かあったのか?」

「ううん、特に事件があったわけでもないし」

 うちの学校は夜間の校内への進入を厳に禁止している。未遂であっても停学という厳しい処分が下されるのだ。学校の周囲には教師が巡回していて、その厳重な警戒ぶりは常軌を逸していた。


「前から気になってたんだけど、どうしてうちの学校はあんなに警戒厳重なのかな?」

 そうかと思えば昼間は比較的オープンだったりする。


「人体実験が行われてるって噂もあながち本当かもな」

 そんな噂があるの?


「はっ?お前が持ってきた噂だろ」

 そうだっけ?


「まあいい。うちの学校って急な転校が多いだろ?それは転校したとされる生徒が、実は夜の学校で人体実験に使われているって噂が一時期流れてたんだ。二人で笑い飛ばしていたじゃないか」

 そういう噂が流れるのも無理はない。学校側は僕らに何の説明もしないからな。僕の脳裏にボーイッシュな赤組の女の子がよぎった。彼女も急な転校でいなくなった。親しい友人にも何も告げずにだ。


「どうした?考え込むような顔して」

「いや、何でもない。僕の知っている女子も急に転校したから気になっただけ」

 人体実験……まさかね。明るく元気な娘だった。まさかとは思うが、もし本当に人体実験に使わられたとしたら……。


「なあ、まさかお前学校に忍び込もうなんて思ってないだろうな?」

「ふぇ?な、なんだよ、いきなり」

 びっくりしたなぁもう。


「悪い事は言わないからやめておけ。バレたら最悪退学だぞ」

「わかってるよ。それくらい。ん?どうしたのシスター?」

 僕の服をぐいぐいっとシスターが引っ張ってる。


「退屈だから病院の中を探検してきていい?」

「駄目。おとなしくしてろ」

 病院は探検するようなところじゃない。シスターは「ぷぅ」とふくれてしまった。確かにここでじっとしてるのも退屈だよな。


「待合室に本とか置いてあるから、それを読んで待っててよ」

「うん、わかった」

 くれぐれも騒々しくするなよ。シスターは「はぁい」と出て行った。佐藤が話を続ける。


「とにかく、夜の学校で何があるか知らないけど俺たちには関係ない事だからな」

 関係ない……。確かに急な転校が多いのと夜間に学校の警戒が厳重な事に繋がりあると言う確証は何一つ無い。でも、この二つはどうも関連しているような気がしてならない。勘働きというものかな。勘……まさか女の勘とかじゃないよな?刑事の勘でも刑事じゃないし…。


「うん…そうだよな。わかったよ」

 気にはなるけど、佐藤の言うように僕たちには関係ない事だ。でも、夜の学校で一体何が起きてるんだろう。まさか、サバトとかじゃないだろうな。まあ、小難しい話はこのくらいにして、先週の野球の試合の事を話してやろう。僕の劇的なサヨナラホームランのあたりを少々脚色したりもして。そうこうしているうちに日が暮れてきた。そろそろ帰ろう。


「じゃ、来れたらまた来るよ」

「ん?もうこんな時間か。途中で暗くなるな。姫前に来てもらったらどうだ?」

「どうして?」

「女の子が二人で帰るには最近物騒だからだよ」

 みちるも女の子なんだが。まあ、みちるならチンピラの5、6人は返り討ちにしそうだけど。


「いいよ。なんか夜は忙しいようだし」

 バイトでも塾でも無いようだけどさ。何か知らないけど、ここんところ徹夜続きみたいだよ。どうしたの?と訊いても曖昧な返答が返ってくるばかりだ。あんまり隠し事とかしない娘なのに。特に僕が女の子化してからは、男子は聞けないような事まで言ってくるので困る。そのみちるが返答を濁すとはよほどの事情があるのだろう。だから僕は敢えて深くは追及しなかった。


「とにかく、心配はいらないから」

「本当に大丈夫か?」

「大丈夫だよ。何をそんなに心配してるんだ?」

 確かに最近物騒だよ。女の子の首無し死体が発見されたりしてさ。だからって、そんな事ばっかし言ってたら僕らはいつまでも家に帰れないじゃないか。


「じゃ帰るからな」

「お、おい、待て…」

 なおも佐藤は僕を引き留めようとしたが僕は構わず病室を出た。さて、シスターは大人しくしてるかな?


「こうして、お姫様は王子様と結ばれる事となりました。めでたし、めでたし」

「……」

 シスターは待合室に置かれていた絵本を朗読していた。


 ------


 帰宅途中ですっかり日が暮れて夜となった。佐藤が入院している病院から僕の家までの間に民家が少なく人通りもまばらな箇所がある。ために犯罪も発生しやすいエリアでもある。普段は何気なく通っていた道だが、佐藤のせいでちょっと意識してしまっている。まあ、シスターがいるなら人間が何人襲って来ようと物の数ではない。人間ならね。幽霊だったらどうするか。難しい問題だね。シスターだから除霊はできるか。いや、このシスターは格好だけのなんちゃってシスターだった。それに日本の幽霊に西洋の十字架が効くかは不明だ。やっぱし、念仏でしょ。えっと、確か南無妙法蓮華経だっけ?ちょっと練習しとこう……。


「きゃあああああっ!!」

 まるでホラー映画で美女が得体のしれない何かを目撃したかのような悲鳴。ま、まじで出た!?待て、まだ人間の可能性もある。いきなり暗闇から下半身丸出しの男が出てきたらそりゃ悲鳴をあげるわいな。

どうする?逃げるに決まってる。シスターの手を引っ張って走ろうとしたが遅かった。向こうから来たのだ。なんで来るんだよ。


「た、たすけてぇ!」

 よほど怖いものを見たのかこれ以上ない恐怖しているのがわかる顔して女性が走ってきた。となるとただの変質者じゃないな。結論から言うと、変質者どころか人間ですらなかった。


「どうしたんです?」

「あ、あ、あれ、あれあれあうあうあ…ば、ばばば……」

 何を言ってるかわからない。


「すいません。落ち着いて話してくれませんか?」

 女性の状態を見るに、できれば聞かない方が身のためな話だろう。深呼吸させて気持ちを落ち着かせる。


「で、何があったの?」

 僕が訊く前にシスターが訊いた。


「化け物…化け物がいたのよ!」

「はっ?」

 化け物?何言ってんだ?


「本当よ!本当に化け物が出たのよ!」

 多分、夜だから何かと見間違えたのだろう。よくある話だ。


「違うわよ!見間違いでタクヤが切り裂かれたりしないじゃない!」

 タクヤって誰?どうでもいい話だがオジサンの教師たちが格好いい男性アイドルの例えとしてキムタクを出すことが多いが、そりゃあんたらの世代では凄かったかもしれないけどさ、僕ら世代に対してキムタクを出されてもピンと来ないんだよ。しかし、切り裂かれたとは穏やかではないな。


「とにかく、ここは危ないからどこか交番にでも行きましょう」

 シスターには彼女の鞄を持ってもらう。と思ったらシスターが珍しく真剣な顔をして女性を見ていた。


「どうしたの?」

「この人、人間じゃない」

 はっ?何言ってんだよ。人を指差して失礼じゃないか。すいませんね、と女性に謝罪しようと彼女の方に顔を振り向かせた時だった。女性の顔が額からひび割れていたのだ。


「!」

 あわてて女性から体を離す。顔だけでなく全身からひび割れている。こういうのを化けの皮が剥がれると言うのだろうか。やがて、姿を現したのは両手が鎌となっている化け物だった。化け物は右手の鎌を大きく振り上げた。


「危ない!」

 鎌はシスターに振り下ろされた。咄嗟に左手を出してシスターを庇うが、代わりに僕の左手が貫かれた。


「ぐっ!」

 化け物はそのまま僕の左手を塀に磔にして今度は右手を左の鎌で貫いて塀に釘付けにした。左右の手を塀に拘束され逃げるに逃げられない状態となった。


「な、なんなんだよ、こいつはっ!」

 いつからこの町はこんな非常識な奴が徘徊するようになったんだ?佐藤が言うようにみちるに迎えに来てもらったら良かったか?いや、みちるでも人外を相手では分が悪い。


「せめて、片方の手が使えたら……」

 まさか、アレを使う日が来ようとは……。多分、一生使わないだろうなと思ってたら人生わかんないもんだね。いままさに絶好の使うタイミングだ。ただ、両手がふさがっている状態では使いたくても使えない。ここはシスターに助けてもらおう。


「シスター、助けてよ!」

 不思議な力を持つシスターなら、こんな化け物をやっつけるなんて造作も無いはず。と思いきや


「どうやって?」

 どうって、こいつをブッ飛ばすとか僕をテレポートさせるかとかだよ。ひとまずこの拘束を解きたい。いい加減手が痛いんだよ。


「無理、だって私は自分で戦ったりはしないし、人をテレポートさせる力も無いもん」

 私にできるのは人を変える事だけと胸を張って答えるシスター。何をそんなに偉ぶってるんだよ。こうなったら自力で抜け出すしかない。この化け物はさっきタクヤという人が切り裂かれたと言った。多分、その犯人はこいつだろう。凶器は両手の鎌だ。その鎌は両方とも僕の両手を突き刺して使えない状態だ。となると、僕を切り裂くにはどっちかの鎌を抜くしかない。その時にアレを使って一気にケリをつける。だが、奴の武器が両手の鎌だけと判断したのは早計だった。奴の額に長い触角が二対ついているのだが、その先端が僕の方に向けられたと思ったら突き刺すかのようにのびてきたのだ。


「いっ!?」

 咄嗟に頭を下げて間一髪かわしたが、音で後ろの塀に穴が開けられたのがわかった。化け物は触角を塀から抜き取ると今度は僕の心臓に狙いを定めた。やばい、今度はよけられそうにない。その時だった。


「そこまでよ!」

 得体のしれない化け物を前にして一切の恐れや躊躇いを感じさせない頼もしい口調とともに現れたのはみちるだった。でも……


「逃げて!」

 僕は叫んだ。いくらみちるでもこんなのと戦ったら殺されてしまう。しかし、みちるは逃げる気配は無い。


「いますぐその娘を離しなさい。あたしが相手になってあげるわ」

 そんなの聞き入れてもらえるのか?すると化け物は意外にも素直に僕を解放してみちると相対した。


「よりによってその娘を襲うなんていい度胸ね」

 言いながらみちるは円盤状の物体を手に取って、それに棒状の何かを差し込んで胸の方に持って行った。次の瞬間、僕は目を疑った。


「密着!」

 というみちるの掛け声で、円盤状の物体が細かい粒子となってみちるの全身を包んだのである。って密着?密着って…。それはともかく、みちるの全身は一瞬光に覆われて光が治まった後、みちるの服がすっかり変わっていた。どう変わったかって?


「愛と正義の戦士、ダークハンターみちる!」

 このみちるの台詞から想像してほしい。それまで呆然となっていた僕はこの台詞とポーズで目が点になった。それから僕は自分の口を手でおさえた。


「ぷ、ぷぷぷ…」

 笑いをこらえるためだ。愛と正義の戦士って…。愛って何だよ、愛って。それと幾多の傷害と殺人未遂を繰り返してきた人間が正義を語るか。もっとも、悪党単体が殺した数よりも正義の味方が殺した数の方が遥かに多いのは紛れもない事実だが。しかし、あの衣装はもっと若いもんに着せるものだと思う。みちるはそんなのに躊躇がない娘だったんだな。てっきり僕よりも大人だと思っていた。僕だったら人前でなら可能な限りあんな格好にはなりたくない。僕の場合、生粋の女の子じゃないという事もあるだろうが。だが、少なくとも僕だったらいちいち相手に自分の名を宣伝するかのような口上は控えるし、ましてや愛だの正義だのといった余計な枕言葉をつけたりはしない。これが小学生くらいまでなら微笑ましいが、中学生になるとさすがに「うわあっ」となるし、ましてや高校生にもなってとなると…。みちるの家系にとっては末代までの恥となるだろう。そういや、みちるの家は兄弟姉妹が多いって聞いたけど皆みちるみたいな趣味があるのかな。一度も会った事がないからわからない。まさか、全員そろって変身とかは無いよな?兄弟姉妹がそろってさっきのみちるみたいな名乗りをするところを想像すると…ダメだ笑いがおさえきれなくなる。何とかおさえないと、みちるに知られたら確実に殺される。僕は笑いをこらえながらシスターに視線を送る。すると僕の視線に気づいたシスターはこちらの意図を読み取って、顔を横に振るという否定のジェスチャーをした。


「シスターじゃない?」

 じゃ誰なんだろう?さっきの円盤状の物体も似ているけど形が違う。円盤じゃなくてドーム型で先端にレバーがついている。え?戦いの方はどうなってるかって?みちるが優勢だな。ライトブレードという光の剣で化け物の両手を斬り落としている。だが、化け物にはまだ触角がある。化け物は触角の先端でみちるを刺し貫こうと連打を浴びせている。みちるはそれをかわしながら触角を切断しようとするが、そうはさせじと化け物は触角をすぐさま戻して次なる攻撃をしかける。それにしても、みちるはいちいちアクションの度に「とうっ」とか「やあっ」とかの掛け声を出すのはやめてほしい。特撮番組じゃないんだから。笑いをこらえるこっちの身にもなってくれ。それとできるならさっさと倒して。塀や電柱や街灯や道路が穴だらけじゃないか。とはいえ、あの触角があるかぎり容易には近づけそうにないし、みちるの得物はあの光の剣だけみたいだ。まだ武器があるだけマシだ。


「あれじゃあなかなか近づけないな」

 伸びては引っ込んでを繰り返す触手にみちるは化け物に近づくことができない。しかも、触手はそれだけじゃなかった。元の大きさにもどった触手からビームが出てきて、それがムチのように撓って触れたところを切断したり削ったりしたのである。この辺りが民家の少ないエリアで良かった。で、肝心のみちるをそれで切り刻めたかというとそうではなかった。みちるはライトブレードの刀身でビームを受け止めると、それを化け物の方にはね返した。自分のビームに腹を裂かれ化け物は悲鳴をあげた。


「いまだ!」

 化け物がひるんだ隙にみちるはジャンプして化け物との距離を一気に詰めた。そして、化け物の触角をライトブレードで切断した。これで化け物の武器はすべて封じた。触角を失って狼狽する化け物にライトブレードが振り下ろされた。


「みちるダイナミック!」

 哀れ化け物は一刀両断にされて滅びた。と同時にそれまで笑いをこらえていた僕は堰を切ったように笑い転げた。原因は“みちるダイナミック”だ。センスの欠片も見受けられないネーミングに僕は腹を抱えて大笑いした。笑い転げながら手や足で何回も地面を叩く。笑いすぎで腹が痛い。やばい、笑い死にするレベルだ。ふと、シスターを見ると僕がなんでこんなに笑っているかわからないといった顔をしていた。笑いで周囲を窺うことができない僕は、みちるがさっき切り落とした触角を拾って近づいているのに気付かなかった。


「ねえ、そんなにおかしい?」

 笑い疲れていた僕はみちるの発する殺気にも気づかなかった。そして、顔をあげた瞬間、僕は顔面を触角で貫かれた。

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