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幽霊少女と不思議な街  作者: 木偶
第一話
1/1

夕暮れbeginning

初投稿で処女作です

ご意見ご指摘等ありましたらお気軽にどうぞ

 俺は幽霊を信じない。

 いや、 幽霊だけじゃない。

 宇宙人とか妖怪とかそういうのも信じない。


 だって『普通』じゃないだろう?

 自分は他の星からきた、 とか。

 私は人間ではない、 とか。

 僕、 実は死んでるんです、 とか。


 冗談じゃない、 こんな奴とは関わりたくない。

 信じなければ関わらない。

 関わらなければそれでさようならだ。

 『普通』が一番だ。


 だから目の前にいるモノを信じたくない。


 夕暮れで橙色になっている学校の廊下。

 その奥にいる人の形をしたモノを。


 離れているため顔はよく見えないが、 夕日が差し込む窓をぼ~っと見上げていて儚い雰囲気を醸し出し、 亡くなったひとに着せるような白装束を着て、おでこには三角頭巾までつけている。 幽霊のお手本のような格好だ。

 流石にここまであからさまだと誰かが仮装しているんじゃないかと疑うだろう、 が違う。


 わかってしまうのだ。 なぜだかはわからない。


 理由だとかそういうものもない。


 人の本能とか第六感というものが語りかけてきている気がするのだ。





 この世のモノではない、 と。





 「ここ、だな」

 俺は持っていた書類にかかれた住所と学校名を見直す。


 市立御伽(おとぎ)東高等学校。 学校の名前を確認して校舎を見る。

 生徒を多めにとっているために普通よりも広く大きめに作られた校舎は朝早いためかひとの気配は無く静まりかえっている。

 ちなみに、 御伽(おとぎ)というのは、 この街の名前らしい来る途中色々な所で見かけた。

 

 上手くやっていけるだろうか。

 突然不安になってきた。 学校につけて安心したからだろうか。


 いや、 上手くなくていいんだ。 普通でいい。 その場にとけこめれば、 目立たなければいい。

 それに俺にはこれがある。 背負っていたスクールバックから簡単に止められただけの冊子を取り出した。 『先生』に「役に立つ」といわれて渡されたものだ。 結構な回数を読み直したためヨレヨレになっている。


 冊子を読み返しながら歩き職員室をみつけた。 広いため迷いそうだったが、 杞憂だったようだ。


 ふぅ、 と小さく息をはき職員室のドアを開く。

 

 「今日からこの学校に転入することになった新樹紾一(あらきしんいち)です。 えっと、 はじめ、 先生はいますか?」


 やっぱり『先生』以外の人先生と呼ぶのは抵抗がある。 少しずつ慣れていこう。

 それはいいとしてなんだか周りからくすくすと小さな笑い声が聞こえる気がする。

 何か変な事をしたかとどきどきしていると一人の女性が近づいてきた。


 「君が新樹紾一君ね。 うん、 時間通り、 結構結構」


 彼女がはじめ先生なのだろう。 やたらと元気に俺の肩をぱんぱんとたたきながらにっこりと笑ってくる。

 年齢二十代はだろうか、 顔はまだ少し幼さをのこしているが、背は俺よりも少し低いぐらいと高めのようだ。 腰らへんまである髪を一つに束ねている。

 ちなみに、 俺の身長は百七十三センチなので百七十くらいか。


 「最近の子どもは時間を守らない奴が多いからね~。 礼儀もいいし。 うん、 いい子そうでよかったよかった」

 

 相変わらず肩をたたいてくるが、 どうやら変な事をしてないようだ。 一安心。


 「っと、 自己紹介が遅れたわね。 私は一響(にのまえひびき)。 君が来る二年一組の担任をもってるわ。 よろしくね」

 「はぁ……。 ん?」


 少々気の抜けた返事をした所で気付いた。

 

 「にのまえ?」

 「そっ、 一って書いてにのまえ。 まぁ普通はこう読まないし、 間違われるのも慣れてるから気にしないでね」


 普通じゃない、 か。

 『一先生を訪ねろ』と『先生』が書いた紙を見直す。 紛らわしい。

 なるほどさっきのくすくす笑いの正体はこれだたったのか。 本当に紛らわしい。


 「さてと、 自己紹介もすんだことだし、 時間もあるから学校の中でも回ろうか。 うん、 そうしよう」


 学校案内を勝手に決めると彼女は俺の手引っ張り歩き出す。 元気な人だ。

 もっと教師というものは堅物で愛想がないと聞いていたが……こっちが普通の教師なのだろうか?


 

 程なくして自分の教室につく。 職員室がある二階から階段で一階あがり、廊下をまっすぐ行った曲がり角のすぐ隣にある。 「2-1」と書かれた札がぶら下がっているので間違いないだろう。

 ドアを開けようとすると内側から勢いよく開かれる。


 「あら、 おはよう、 如月さんいつも悪いわね」

 「おはようございます。 これが私の仕事ですからやって当然です」

 「別にそこまで責任を感じなくてもいいんだけどね~。 気楽にやればいいのよ気楽に」

 「そういうわけにもいきません。 役割ですから」


 (にのまえ)先生がいきなり教室から出

てきた少女と話し始める。 やはり少女の肩をぽんぽんとたたいている。くせなのだろうか?

 どうやら彼女はどの人に対しても先ほどの俺のように接しているらしい。

 反対に、少女の方はかなり真面目な子のようだ。仕事をしていたと言っているし、 役割がどうとか言っている。


 「それでは、 失礼します」


 そう言うと少女は階段の方へといってしまった。 ちゃんと歩いて行くのが真面目だ。


 「あ~、行っちゃった。まだ新樹君の紹介してないのに……。 まぁいっか、 どうせあとでするし。 待たせて悪かったわね。 あの子は、如月藍子(きさらぎあいこ)さん私のクラスで学級委員長をやってもらってる子なの。 真面目なのはいいんだけどちょっと真面目すぎちゃってね~。 彼女には朝、教室の掃除をお願いしているの。 毎朝やらなくてもいいって言ってるんだけど……」


 なるほどさっき言っていた仕事やら役割というのはそれか。 言われなくても毎朝やるとは真面目だな~。

 それに学級委員長というのにも頷けた。

 前髪は校則にかからない眉上まで、 後ろは束ねず腰までの髪をまっすぐに伸ばしていた。もちろん色はきらめくような黒だった。

 学級委員長とはこういう髪型だと冊子にも書いてあったので、 彼女は普通なのだろう。



 その後も学校内を見て回った。 広い校舎を隅から隅まで回ったので朝からクタクタになってしまった。こんな調子で大丈夫だろうか?


 だがついにこの時が来た。 教室の中からは転入生が来たと知らされてざわついている。

 大丈夫だあの冊子どおりにやれば何も問題はない。

 そう自分に言い聞かせ心を落ち着かせる。


 「それじゃあ新樹君入って~」


 そう呼ばれて俺は意を決してドアを開き叫んだ(・・・・)


 「俺の名前は新樹紾一だ!! この中で一番強いのはだれだ!!」

 「…………」


 おやおや~

 何だこの空気は~


 気付いた時にはもう遅かった。

 俺は『先生』に騙された、と。



 やっと終わった。

 俺は肩を落としながら廊下を歩いていた。

 今日の全ての授業が終わったら職員室にくるように、と呼ばれていたので最後の授業が終わってすぐに教室から飛び出してきた。

 あんな所には居たくない。 そう思いながら今日のことを振り返る。

 幸い、 言い終わってから自分までもが呆然として居たため、 笑いを取りに行ったと勘違いされたらしく、 変人のレッテルを貼られずに済んだ。

 ……番長というあだ名がつきそうにはなったが……。

 しかも、 目を合わせるとくすくすと笑われるは結構メンタルにくるものがある。

 担任のことといい自己紹介のことといい何だか『先生』の笑いの種になってる気がして来た。

 あの冊子を鵜呑みにしていたらまたいつやけどするかわかったもんじゃない。

気を付けよう。


 

 「くく、 新樹君、 ぷっ、 朝は大変だったわね、 ぷふ」


 この教師目を合わせると肩をたたきながら笑ってきやがった。 ダメだこの人すきになれそうにない。


 「まぁ、 どうせ紫苑寺のやつに騙されたんでしょう。 あいつあーゆーの好きだし」

 「えっ? 『先生』の知り合いだったんですか?」

 「そうよ~。 腐れ縁ってやつね。 だから君のことも前から知ってたのよ。 大変だったわね」

 「知ってたんですか」


 紫苑寺 鏡介(しおんじきょうすけ)、 『先生』の名前だ。 こんな所で耳にするとは。


 俺、 新樹紾一は二年前、 事故で大怪我をして記憶を失った。 そんな記憶の失った俺を助け、 言葉もちゃんと話せなかった俺の面倒を見てくれたのが彼だった。

 何故助けてくれたのか聞いてみたことがあったが、 目の前で死なれちゃ夢見が悪いだの、 気まぐれだの茶化されただけだったのでそれ以来聞いたことがない。

 そうか。 知り合いだったのか。


 「君のことよろしくって言われてるわ。

安心して、 今日のことは言わないから、 くくっ」


 まーた笑やがった。



 これまでの事とこれからの事を話し終わって職員室からでたころにはもう日が西に傾いていた。 随分と話し込んでいたらしい。 どうやらこの時間まで校舎に残っている人は少ないらしく静かになっていた。

 そこで、 ふとあの冊子がない事に気付いた。 そうかあの時怒りにまかせて机の中にほうりこんだった。


 ここで冊子を取りに教室まで行かずこのまま帰ればよかったと思ったのはそう遅くなかった。















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