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一個人の心の内

小説

作者: 樫宮穂月

すべての人が私を愛し、慈しんでくれる

それは理想の世界だ


とろけるように甘やかされ

欲しい言葉を与えてくれて

困った時には手を差し伸べてくれる


それは、甘い時間をくれるだけではない

ただただ私の望みをかなえてくれるだけではなく

わがままを聞いてくれるだけでは決してない


私が望むであろうことを察知して

先回りをしてくれたり、時には叱ってくれたり――

それはさながら、教師のよう

迷路から連れ去って

私が欲していた答えに導いてほしい


甘えたり、嫉妬したり、悲しんだり

私にだけ見せてくれる表情を、想いを楽しみたい

意図的ではない、彼らの純粋な想いが見たいのだ

こうすれば私が喜ぶだろうなんてことは

考えないで行動してほしい


でも、そんな世界はどこにもない

何もかもが自分の思うとおりになるなんてことは

この世にありはしないのだ


だから――

私は今日も、物語を紡ぎ続ける


現実に目を背け、紙の上に城を築きあげる

誰にも壊されない、私だけの箱庭を

私の理想を、私の欲する人達を、私の描く物語を(したた)めていくのだ

仄暗い想いで、墨を磨りながら、夢に耽りながら――

存在しない彼らに、懸想する


それは終わらない宴

果てない想い

目を閉じなければ出会えない、愛しい人

恋しい人よ、夢の中で逢いませう


おやすみなさい、あなた




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