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SHADOW OF VIOLET  作者: 火瀬
6/8

fifth/identity

 ヒノエは慣れた手つきで銃をホルスターに仕舞い、紫影を拾い上げた。

 刀身にべっとりとついた血に顔をしかめる。


「ヒノエさん!大丈夫ですか?」


 駆け寄ってきた香織と葉月に、ヒノエは頷いてみせる。


「ええ、大丈夫です」

「腕の一本でも折ってもらえば良かったのに」

「治療費請求しますよ。もの凄く水増しして」

「銃刀法違反でしょっぴくぞ。罪状は山程有るんだからな」


 睨み合う二人に、香織は遠慮がちに声をかけた。


「あのぅ……あれは一体……?」

「あれは化け物ですよ」


 ヒノエは葉月から目を逸らし、香織を見つめた。


「『闇より出る、人を喰らう闇』……そう呼ばれている化け物です。具体的に何なのかは全く解っていない。それは人間が生まれる前からここに有り、人間の誕生と共に闇へと追いやられた。だから彼らは人を喰うんです。己の領地を取り戻す為に」

「けれど、そんな事聞いた事――」

「『狩る者』が居るんです。『闇』を凌駕する力を持つ人々が」

「じゃあ、ヒノエさんも?」

「ええ。だから、あんなのの『三匹』位、何でもないんですよ」


 地に転がっている『二つ』の死体を一瞥して、ヒノエはにっこりと笑う。

 ゆっくりと紫影を持ち上げて香織に向け、ヒノエは言った。


「僕をあまりナメない方が良い。罠にはめて、何が目的です?」


 香織は一瞬戸惑いの表情を見せたが、すぐにそれは顔から剥がれ落ち、代わりに笑った。



「それを知る必要は無い。あなたは此処で死ぬのだから」



 再び、暗闇に赤い穴が開く。

 数えきれない程の。


「これだけの数を相手にして……生き残れるかしら?」


 挑発する様な香織の言葉を、ヒノエは鼻で笑った。


「生き残るさ。それが僕の罪だから」



「殺セ」



 迫り来る、赤い瞳の中。

 ヒノエは微笑んだまま、紫影を空に掲げた。

青白い月光が、刄を煌めかせ――

ヒノエは呟く。

オシマイの言葉を。



「"SHADOW OF VIOLET"発動」

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