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SHADOW OF VIOLET  作者: 火瀬
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3/8

second/contradiction

「なんでも屋?」


 場所は移り、近くの喫茶店。

 昼間だというのに店内は空いていて、今にも潰れそうな雰囲気が漂っている。

 ヒノエは目の前に座っている女性――恐らく依頼人だろう――を見て、頷いた。

 黒髪が流れる様に美しい、色白の美人だが、何処か不安気に辺りを見回している。

 葉月はワザとらしい笑みを振りまきながら、女性に言った。


「金さえ出せば、猫探しから犯罪ギリギリの事までやる奴です。腕は僕が保証しますよ。――ヒノエ、こちら香織さん。今回の依頼人だ」


 女性……香織は、ヒノエを真直ぐに見つめ、確かめる様に言った。


「本当に、何でも?」


 ヒノエは勿論、と笑う。


「正確に言うなら、犯罪でもね」

「それを言うなよ。人が折角ぼかしてんのに」

「存在自体が犯罪の刑事が何言ってるんですか。ウチのドアどうしてくれるんです? 立派な器物損害でしょう」


葉月の恨めしげな視線を無視し、ヒノエは改めて香織に向き直った。


「依頼内容を伺いましょう」


 香織は、躊躇いがちに口を開いた。



「実は……ストーカーを退治して欲しいのです」



「ストーカー?」


 ヒノエが問い返すと、香織は小さく頷いた。

 隣に座っている葉月が補足する。


「ただのストーカーじゃない。――一週間前、彼女の家の近所で殺人事件が起こった。彼女が視線を感じ始めたのは、その直後からだ」「殺人犯に狙われてるって事ですか」

「タイミングが良すぎるからな。十中八九、間違いないだろ」


 香織がしゅんとうなだれる。

 その顔には生気が感じられず、暗い恐怖が濃い影を作り出していた。


「私、恐くて……それで、捜査をされていた水城さんに相談したんです。どうか、助けて下さい」


『たすけて、ひのえ』


 今は亡き声が囁く、遠い日の記憶。


 ヒノエは無言で拳を握り締めた。






「まさかただの殺人犯、てワケじゃないでしょう?」


 香織が立ち去った後、ヒノエがぽつりと呟いた。

 それだけならあなたの仕事でしょう、と言いた気に。

 葉月は、上着のポケットから煙草を取出しながら笑う。


「事件で死んだのは5人。それも例外無く、首を切られ腹を裂かれて」


 ヒノエは銀のライターを取出し、葉月の煙草に火を点けた。


「成程。『首を不自然に引きちぎられて』『裂かれた腹から内臓を喰われて』いたんですね?」


 言って、楽しそうに笑う。

 闇が黒を笑う様に暗く

 血が赤を笑う様に妖しく

 人が魔を狩る様に、嘲笑う。


「やってくれるな?」


 ヒノエは頷き、片目を閉じて見せた。



「OK,client.――お任せあれ」

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