second/contradiction
「なんでも屋?」
場所は移り、近くの喫茶店。
昼間だというのに店内は空いていて、今にも潰れそうな雰囲気が漂っている。
ヒノエは目の前に座っている女性――恐らく依頼人だろう――を見て、頷いた。
黒髪が流れる様に美しい、色白の美人だが、何処か不安気に辺りを見回している。
葉月はワザとらしい笑みを振りまきながら、女性に言った。
「金さえ出せば、猫探しから犯罪ギリギリの事までやる奴です。腕は僕が保証しますよ。――ヒノエ、こちら香織さん。今回の依頼人だ」
女性……香織は、ヒノエを真直ぐに見つめ、確かめる様に言った。
「本当に、何でも?」
ヒノエは勿論、と笑う。
「正確に言うなら、犯罪でもね」
「それを言うなよ。人が折角ぼかしてんのに」
「存在自体が犯罪の刑事が何言ってるんですか。ウチのドアどうしてくれるんです? 立派な器物損害でしょう」
葉月の恨めしげな視線を無視し、ヒノエは改めて香織に向き直った。
「依頼内容を伺いましょう」
香織は、躊躇いがちに口を開いた。
「実は……ストーカーを退治して欲しいのです」
「ストーカー?」
ヒノエが問い返すと、香織は小さく頷いた。
隣に座っている葉月が補足する。
「ただのストーカーじゃない。――一週間前、彼女の家の近所で殺人事件が起こった。彼女が視線を感じ始めたのは、その直後からだ」「殺人犯に狙われてるって事ですか」
「タイミングが良すぎるからな。十中八九、間違いないだろ」
香織がしゅんとうなだれる。
その顔には生気が感じられず、暗い恐怖が濃い影を作り出していた。
「私、恐くて……それで、捜査をされていた水城さんに相談したんです。どうか、助けて下さい」
『たすけて、ひのえ』
今は亡き声が囁く、遠い日の記憶。
ヒノエは無言で拳を握り締めた。
・
「まさかただの殺人犯、てワケじゃないでしょう?」
香織が立ち去った後、ヒノエがぽつりと呟いた。
それだけならあなたの仕事でしょう、と言いた気に。
葉月は、上着のポケットから煙草を取出しながら笑う。
「事件で死んだのは5人。それも例外無く、首を切られ腹を裂かれて」
ヒノエは銀のライターを取出し、葉月の煙草に火を点けた。
「成程。『首を不自然に引きちぎられて』『裂かれた腹から内臓を喰われて』いたんですね?」
言って、楽しそうに笑う。
闇が黒を笑う様に暗く
血が赤を笑う様に妖しく
人が魔を狩る様に、嘲笑う。
「やってくれるな?」
ヒノエは頷き、片目を閉じて見せた。
「OK,client.――お任せあれ」




