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吾まだ死せず  作者: えねこ
第一章 ―― マリアナ沖迎撃作戦
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夜に照る日差し(前)

 たかま……赤松長官の座乗する大和が先ず捕捉したのはアイオワであった。大和はなんと、初弾命中の誉れを成し遂げ、速やかにアイオワを水底に沈めた。合衆国海軍退役将校の証言によると、アイオワが轟沈した数秒後に轟音が聞こえたというものがあり、それを信じるならば大和の砲撃能力は超音波や衝撃波の類いを発生させるほどのものであったのだろう。そして、大和の妹たる武蔵もまた、姉大和に劣るものではあり得なかった。むしろ、赤松長官という護衛対象が居ない分、その暴れっぷりは特筆すべきものであった。さすがに初弾命中の誉れこそ大和に譲ったものの、第二斉射において彼女が成し遂げたのは全弾命中という誉れであった。その、何かしらの目標に当たった砲弾は、ワシントン、ノースカロライナ、ニュージャージーといった大型戦艦の装甲をたたき割り、一撃で大破にまで追い込むことに成功した。いくら戦艦の主砲が自身の装甲と拮抗するレベルで設計されているとはいえ、異常事態と言うべきものであった。……少なくとも、合衆国海軍にとっては。

 そして、合衆国海軍は大和の砲撃がラッキーパンチ等ではなく、武蔵の砲撃で砲撃部隊旗艦などが大破したことにより、自分たちが何の存在に喧嘩を売ったのか知ることになる。

 敵の戦艦は自分たちよりも強力だ! 誰かがそう叫んだ。だが、その声は届くことはなかった。それは彼が脳神経から発声を発生させるまでに絶命したからではない。勿論、それもあるにはあったのだが、彼が仮に発声を発生させることに成功したとしても、その声は誰にも届かなかっただろう。

 なぜか。彼が発声する瞬間、アイオワ、ワシントン、ノースカロライナ、ニュージャージーと並んでいた単縦陣の後ろにいたサウスダコタが突如として大爆発を起こしたからだ。

 その爆発の瞬間に上がったのは、皮肉なことにキノコのような雲であった。

 謎の大爆発の原因は、今だ諸説があるものの、最も尤もらしい説とするならば、武蔵が放った初弾の至近弾が、水中弾効果を得てサウスダコタの喫水線下の装甲に潜り込み……弾薬庫近くまで突破した後に炸裂し、周囲の火薬が海水によって湿気る迄に発火し……そして本来日本軍に浴びせるはずであったろう各種砲弾が順次炸裂し……キロトン単位で起きた爆発特有のキノコ雲を発生させたのだろう。

 そして、その光景を見た両軍は、しばし唖然とした。その数秒の時間を利用して、近づいてきた軍艦にも気づかずに。

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