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吾まだ死せず  作者: えねこ
第一章 ―― マリアナ沖迎撃作戦
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内南洋に沈む星(後)

 第一陣防空部隊に続き本当に熟練兵揃いのエース・パイロット達も帰投し、合衆国軍太平洋艦隊が第五波を送り込むか悩んでいた頃、ほうぼうのていで第三波の合衆国軍太平洋艦隊所属の航空機が帰ってきた。彼等曰く、「あそこに居るのは鬼である」と。鬼は鬼でも鬼神の類いであったのだが、さすがにそこまで言われたら合衆国軍太平洋艦隊も考えを改めたのか、都合第六波まで用意していた航空部隊を引っ込め、護衛として付けていただけの戦艦や巡洋艦などを再編成し直し、夜間艦隊決戦の状態を整え始めた。彼等にはレーダーも存在するし、少なくとも無様な負けだけは取らないだろう、そう判断してのことであった。だが……。


「長官、どうやら敵は追撃を諦めたようでございます。第五波がまだ観測されません」

「皆、楽観視はまだ早い。連中の攻勢がしつこいことは知っていよう。それに、だな……」

「はっ」

「……敵にも戦艦はまだいよう。……或いは、ということもあるかもしれん。そして、航空隊員に通達せよ」

「ははっ」

「陸上爆撃任務なら後でいくらでも存在する、今少し休んでおけ」

「……ははっ」


 ……高松宮、じゃなかった、偽名赤松は次に合衆国海軍太平洋艦隊が行うであろう行動を既に読んでいた。否、それは読んでいたなどという生易しいものではない、彼は明らかに、敵軍をほしいままに操っていた。その行動や思考回路は、軍神等という生易しい比喩ではない、正しく帝王学を受けた本物の「将」であった。裏を返せば、彼を投入しなければならないほど、帝国軍は追い詰められていた、というわけだが、以後宮様将校は今迄と違い、積極的に前線に投与され……着々と、そして赫々たる大戦果を挙げ始めた。赤松長官は、いわばその魁と言えた。

 そして、夜が降りてきた。本来なら太陽の沈み星が出てくる空模様において、あろうことか星は全て落ち、太陽が昇ることになる。

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