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吾まだ死せず  作者: えねこ
第一章 ―― マリアナ沖迎撃作戦

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「は」号作戦(後)

 ポートモレスビー上陸作戦は、いかな精鋭空挺部隊を投入したとしても当初苦戦すると思われ、事実赤松長官もその戦果報告を聞いた際に、喜ぶのではなく逆に嘘を吐くなと怒ったと伝えられる程度には、その作戦予測と戦果は乖離していた。と、いうのも……。

「なんでぇありゃあ。連中、銃弾じゃなくて小便もらしてらぁ」

「小便ならまだいいよ、あの白人なんか、大便もらしてる」

「えぇ……」

 まともな抵抗能力の残っていなかったポート・モレスビーはその上陸を阻む術が存在せず、尚且つ砲弾神経症(シェル・ショック)を起こした連合軍将兵であふれ、参加した下士官の一人に至っては先程の会話のようにあっけにとられた、殆ど「無血開城」に等しかった。まあ、だからこそ、高松宮は「嘘を吐くな」と怒ったのだが。

「…………罠か?」

「私も疑いましたが、ここで罠を仕掛けてポートモレスビーを可惜失う真似をするのは合理的とは言い難いかと」

「……それならばまあ、喜ぶとしようか」

 そして、ソロモン諸島が更地になり、ポートモレスビーが帝国府の掌中に収まったということは、即ち。

「…………なんともやれやれ、本来の要諦とは違い始めているが……。果たして南方作戦の停止は成るかね?」

 実は、赤松長官はある目的の下赴任したわけなのだが、彼は徐々にその「目的」と現状が乖離し始めていることに気付いていた。だが、気付いただけで打てる手は乏しかった。

 彼ほどの知性を持つ人物が打てる手が乏しいというのは、実際の所目的が目的だからであり、本来軍人が目指すべき状況を考えたらこれ以上無い程度には栄えある状況といえた。

 だが、だからこそ彼は、苦悩し始める。

 赤松長官、否、天皇陛下の弟君である高松宮が派遣された理由、それは……。

「長官、次は陸軍との折衝です、急ぎましょう」

「……急ぐ必要は無いだろうが……、まあいい、善は急げだ」

「そういうことです!」


 ……は号作戦によって、連合国の犯行作戦は振り出しに戻った。否、振り出しに戻ったどころではない、ポートモレスビーの失陥を初め、多くの戦略的意味を失った結果、オーストラリアは早くも根を上げ始めていた。オーストラリアの脱落だけであればまだアメリカ合衆国にとっては想定内とも言えたが、彼等も予想し得ない状況は、刻一刻と迫っていた。

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