☆47 懐かしい景色
再開します!
また引き続き宜しくお願いします!
懐かしい森が目の前に広がっていた。
喧嘩別れをしたわけでもないのに、なぜかダークエルフの皆と再会するのが少し気恥ずかしい。俺の足は自然と集落ではなく、俺が捨てられたあの洞窟へと向かっていた。相変わらず、高くそびえる木々が太陽を遮り、暗闇の中で洞窟の口は不気味に開いている。
あの頃とは違い、今の俺はマナを自在に操ることができる。
洞窟の中は真っ暗だったが、掌にマナを集中させ、その輝きで足元を照らしながら、静かに奥へと進んでいく。
特に目的があるわけじゃない。
だけど、なぜか心が引き寄せられるように、俺がこの膨大なマナに目覚めた神聖な場所へと向かっている。
まるで、あの瞬間が再び俺を待っているかのように。
深く、静かに、息をのむような空気の中で、一歩一歩確かめるように進み続けた。
やがて、昼間のように明るく輝く神聖な場所へと辿り着いた。
足元を照らしていたマナの光は、ここでは必要ない。
眩い光が、洞窟の奥深くまで満ちている。
そして、その空間へ一歩足を踏み入れた瞬間、何かの気配を感じた。
誰かがいる。
気配の主は、慎重に植物の種や果実を選り分けている。
その後ろ姿を見て、心臓が跳ね上がる。
忘れるわけがない。
「ナクティス!!」
気がつくと、俺はその名前を叫んでいた。
声が響くと同時に、驚いた様子で、褐色の肌に銀髪を束ねた男が振り返る。
そして、訝しげな表情を浮かべながら、迷いなく俺の方へと歩み寄ってきた。
「ん? 何で俺の名前を知ってる? 誰だ、お前?」
おい、嘘だろ……。
思いもよらないナクティスの言葉に、俺は反応できず、ただその場に固まってしまった。
そんな俺を見て、ナクティスはニヤリと笑い、軽く俺の肩に手を置く。
「冗談だよ。元気でやってたか、ソウタ。」
その何でもないような軽い言葉に、俺はようやく息をつき、少し肩の力が抜けるのを感じた。
「で、どうしたんだ突然。またここに戻りたいってか?」
ナクティスが軽くからかうように言う。
「ああ、そのことなんだが、最近のヴァルフォード騎士団の動きについては知ってるだろ? ちょっと族長に話をしたいと思ってさ。」
「ふ~ん、じゃ何で里に向かわずここに来たんだ? あ、照れ臭いとかか?」
「……。まぁ、そんな感じかな。」
「はは。くだらねぇこと気にしてんだな。そんなら一緒に行くか。」
ナクティスは笑いながら、俺を見つめて肩をすくめた。
その無邪気な様子に、俺もつい苦笑いを浮かべた。
◆◆◆
洞窟を出て、ナクティスと共に族長の家へ向かう。
高い木々が作り出す日陰の中、村の小道を歩いていると、次々と馴染みの顔が俺に声を掛けてくる。
「おい、ソウタじゃないか! どうしたんだよ、久しぶりだな!」
「あれ、ソウタ? お前、少し背が伸びたんじゃないか?」
皆が驚きと懐かしさが入り混じった表情を浮かべている。
その笑顔に、俺もつい自然と笑みがこぼれた。
子供の頃、一緒に過ごした仲間たちが、今も変わらず俺を歓迎してくれる。
「元気だったか?」と、肩を叩かれるたびに、俺はここがかつての故郷だったことを思い出す。
ナクティスが横でニヤニヤしながら俺を見ている。
「お前、みんなに愛されてんじゃんか。照れ臭いのもわかるわ。」
そう言われると、なんだか気恥ずかしさがさらに増してきたけど、それでも懐かしさに包まれた温かい感覚が心に広がっていく。
族長の家は、あの頃と何も変わっていなかった。
木で組まれた大きな屋根、広々とした庭、そして周囲を取り囲む静かな木々――まるで時間が止まっているかのようだ。そして、族長自身の姿もまったく変わらない。相変わらず若々しく、凛々しいままだった。
「族長、お久しぶりです。」
族長は静かに微笑みながら、俺をじっと見つめる。
「おおソウタ、立派になったな。時折、訪れる冒険者たちからお前の噂を聞いているぞ。」
その落ち着いた声には、かつてと同じ威厳と優しさが宿っている。
族長の視線は俺をまっすぐに捉え、懐かしさと共に誇らしさを感じさせるようだった。
「さて、今日は何の話をしに来たんだ?」
その問いかけに、俺は少し緊張しながらも、覚悟を決めて口を開いた。
「はい、最近のヴァルフォード騎士団の動きに危機感を募らせてまして。」
俺は息を整え、思い切って核心に触れた。
「単刀直入に言いますと、今、俺が住んでるセレスティアに皆で避難してくれませんか?」
族長は一瞬驚いた表情を見せた後、真剣な表情で俺を見つめ続けていたが、しばしの沈黙の後、低く静かな声で問いかけた。
「エリシア自治区とやらか? ヴァルフォードからの避難民が続々と流れているという噂は聞いている。」
「ええ、そうです。この神聖な洞窟を守ることがどれほど重要かは、もちろん承知しています。でも、無理に騎士団に抵抗して壊滅とか、俺と一緒に転生してきたあの雑魚に、みんなが服従する姿なんて見たくないんです。」
「洞窟を守る? 千年以上前に、たまたまここに住み始めて、たまたま近くにマナの源泉があったから利用しているだけだ。あそこを守っているという意識は、正直言って無いぞ。」
そうなのかよ。
予想外の返答に、俺は一瞬言葉を失う。
だが、すぐに気を取り直し、「じゃあ」と言いかけたところで、族長が手を挙げて俺の言葉を遮った。
「だが、その自治区はエルフが治めているのだろう? 残念だが、我々ダークエルフは歓迎されまい。」
「それなら大丈夫っす。ちゃんと話はつけておいたので。」
その言葉に族長は驚いた表情を浮かべ、しばらく俺を訝しげに見つめていた。
「じゃ、早速引っ越しの準備を始めましょう。」
俺はそう言って、勢いよく立ち上がった。
「お、おい、ソウタ。一体どういうことだ?」
族長は困惑していたが、俺はそのまま強引に話を進めた。
そして里の皆に引っ越しの準備を促し、行動を起こさせるべく、すぐに動き出すのであった。
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