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☆4 セレスティアを目指す

目が覚めると、俺はベッドの上にいた。

周りには誰もいない。さっきまでの出来事が夢だったのか現実だったのか、混乱していたが、起き上がって目を凝らし、自分の体を見ると、眩しい輝きを放っていた。


「……、夢じゃなかったんだな。」


頭はまだフワフワしていたが、体の奥底から活力が湧き上がる感覚があった。

これがマナというものなのだろう。

朦朧とした感じに抗えず、もう一度横になってぼーっとしていると、しばらくしてナクティスが水筒を持って部屋に入ってきた。


「お、目が覚めたか? 気分はどうだ?」


「なんか頭がフワフワというかクラクラする。体は元気が溢れてるけど。」


俺はまだぼんやりとした意識の中で答えた。


「無理もない。一日中、寝ていたからな。お前、自分の体の状態がどうなってるか分かるか?今までの違いとか何か感じるか?」


「目を凝らすと体が光に包まれてるのが分かる。これがマナって奴だろ?」


俺は自分の体を見つめながら言った。


「ああ、そうだ。とんでもない輝きをしてるぞ、お前のマナ」


確かに、ナクティスの体を覆うマナと比較しても、俺のその輝きは比べ物にならないほど強かった。そのマナはまるで生き物のように脈動し、エネルギーが溢れ出しているのが感じられた。


「すごいな、こんなマナは初めて見たぞ……」


ナクティスは驚きと尊敬の入り混じった表情で俺を見つめていた。


◆◆◆


ダークエルフの集落には本当に感謝してる。

ここまで育ててもらって、マジでありがたいと思っている。

前世からダラダラした生活を送りたいと思っていたし、今はまさにそんな感じだ。


でも、せっかく異世界に転生できたんだから、この集落の外の世界も見てみたいという、今まで抑えてきた気持ちが日増しに強まっている。

俺は今まで集落の外に出ることを許可されていなかった。

それは当然、マナを持たない俺が万が一、危険な魔獣などに遭遇すると命が危ないからだろう。


俺は日々ナクティスにマナの基本的な使い方を学びつつ、言い出すチャンスを伺っていた。ちなみに、ここでの生活で唯一にして最大の不満は飯が精進料理みたいで味気なさすぎることだ。もっとこう唐揚げとかチャーハンとかカレーとか、ガツンとくるものが食いたい。


そんな悶々としていたある日、俺は一人で中型の魔獣ウィスプ・ハウンドを仕留めた。マナを込めた拳で殴っただけだが、その一撃でそいつは倒れた。


この魔獣は鋭い牙と黒い体毛に覆われた体を持っているが、その肉は意外と柔らかくて、そこそこ美味い。ただし、捌くのは一苦労だ。

体毛が密集しているため、まずそれを取り除くのが大変だし、骨も硬くて切り分けるのに力がいる。


俺は少し考えて、こいつを手土産に族長の家へと向かうことにした。


「族長、忙しいところすみません。ちょっと話がありまして。」


俺は意を決して族長に切り出した。

族長は見た目は若者だが、その年齢は千歳を超えているらしい。

褐色の肌は時間の流れを感じさせず、白い髪は月光のように輝いている。

彼の深い瞳は、まるで無限の知識を秘めているかのようだった。


「どうした、畏まって。」


「いきなりでなんですが、単刀直入に言うと、外の世界に行ってみたいです。」


族長は一瞬、驚いたように眉をひそめたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。


「そうか。今のお前であれば外に出ても大丈夫だろう。好きにすればいい。」


あっさり了承してもらった。

すると突然、ここまで育ててもらったのに何も恩返しできていないことに今さら気づき、胸が締め付けられるような思いが湧きあがった。


感謝の気持ちを伝えたくて、言葉を探しながらも、何を言えばいいのか分からず、ただ頭を下げることしかできなかった。


「捨て子だった俺を本当の家族のように迎えてくれて、ありがとうございました。あなたたちがいなければ、今の俺はここにいなかった。」


声が震え、涙がこぼれそうになるのを必死にこらえた。

族長は優しく肩に手を置き、静かにうなずくと、部屋の隅にある木製のキャビネットの方へ向かい、小袋を持って戻ってきた。


「これを持っていけ。少しの間は生活できるだろう。」


小袋を受け取ると、中には何枚かの銀貨が入っていた。

銀貨の重みを感じながら、俺は言葉が出ず、心の中でまた深く感謝した。


◆◆◆


出発の日、ナクティスはニヤリと笑いながら言った。


「いつでも帰ってこい。その頃には忘れてるかもしれんけど。」


その言葉に、俺は苦笑いを浮かべ、十五年間一緒に過ごした思い出が頭を駆け巡る中、固く握手を交わした。


ナクティスの手の温もりが、これまでの絆の深さを物語っていた。


◆◆◆


急に外に放り出された感じ、というか自分から飛び出したんだけど、集落から遠ざかるにつれ、じわじわと不安が俺を襲ってきた。


まぁ、いい。

さて、まず何をしようか。

とりあえず冒険者ギルド?とやらに登録してみるかと思い、ちょっと考えてヴァルフォードの隣の領地セレスティアを目指すことにした。

ヴァルフォードから離れることにしたのは、多分、鳴海とは双子だから同じ顔してると色々面倒なことに巻き込まれそう、と思ったからだ。


だって、あいつは貴族なんだろ?


セレスティアは、広大な草原と美しい湖が広がる自然豊かな土地と聞いている。まずは、冒険者ギルドに登録して、仕事を見つけることが第一歩だ。


根無し草の宿屋暮らしは早めに卒業したい。

その為には家を持つことが必要だな。

田舎に家を建てるにはどれ位の金が必要なんだろう。

ごみごみしたところは避けるに限る。

でも相場が全く分からない。


前世でもバイトとかしたことのない俺にとって金を稼ぐということは不安でもあり楽しみでもあった。

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