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双子転生 ~そして、俺だけ捨てられた~  作者: 堅物スライム
スローライフを目指してみよう編

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☆31 ミスティア湖

ローハンは数年ぶりに故郷のセレスティアに戻ってきた。

Bランクの冒険者である彼は、暫くの間、ソルディア王国のギルドで活動をしていたが、母親が病気で倒れたとの連絡を受け、その様子を確認しにきたのだ。


セレスティアに戻ったからには、交通費の元を取らねばならない。

後はちょっとしたお小遣いも。

そして、ここにはギルドの仕事などより、手っ取り早く稼げる方法がある。


彼しか知らない秘密の場所で。


公都エルドラの城下街から少し外れた場所に位置するミスティア湖。

魔導石を発見したのは、たまたまだった。

湖のほとりで昼寝をしていた時、狐だか狸だかに荷物を漁られ、追い払った時にそのカバンから商売道具の魔道具を湖に落としてしまった。

慌てて湖に潜ってみたが、その底は深く、とても底まで辿り着けない。


街へ戻り、投げ網の材料を買い揃えると、「俺は何をやってんだ」とボヤキながら、湖の近くで組み立て始めた。


投げ網を放り投げ、巻き上げると、その網の中に肝心の魔道具は無かったが、代わりにマナを発光している不思議な石を拾うことが出来た。


こいつは金になる、と直感で感じたが、大量に持って行くと怪しまれる。

そこで、時々ここを訪れては小遣い稼ぎをしていたのだった。


◆◆◆


久々に訪れたミスティア湖の周辺は様変わりしていた。


まず、道が整備されている。

お城のような立派な豪邸や、民家もいくつかある。

挙句の果てには農作地まであり、見たことも無いような作物が育っている。


困惑したまま、ミスティア湖まで行くと、小舟があった。

ちょっと嫌な予感がしたが、投げ網の準備を進める。


その時だった。


「おい、おっさん、何してんねん。」


振り返ると、三人ほどの少年が武器を持って近づいてくる。

その身のこなしからして、戦ったら勝ち目は無いことは瞬時に理解した。


「いや、何って、ちょっと釣りでもしようかと思ってね。」


「釣り? 誰の許可を得てんねん。ここはエリシアさんの私有地やぞ?」


何だって?

私有地??


来る途中に見かけた豪邸を思い出す。

おいおい、この一帯を買い占めるとは、どんな金持ちだ?


「そうなのか……いや、数年ぶりに帰ってきたものでね。知らなかったよ。ところで、そのエリシアさんというのは何者なんだい?」


ローハンは両手を上げ、降参の意を示すと質問した。


「エルダリン王国の王女様や。本来ならとっ捕まえて突き出すとこやけど、知らんかったんならしゃあない。見逃したるから、二度と来んようにな。」


エルダリン??


馬鹿な。

この魔導石の宝庫まで他国に売ってしまったというのか。


何と愚かなことを。


「分かった。言うとおりにしよう。」


ローハンは荷物をまとめると、大人しく道を引き返していった。

エルドラまでの道を徒歩で戻りながら、次の手を考える。


あそこで小銭稼ぎはもう出来ない、か。

くそ、せっかく危険も無い穴場だったのに。

であれば、領主に情報を売るのはどうだ?

領主があの湖の価値を知り、取り戻すことができれば、見返りとしてそれなりの金は貰えるだろう。


◆◆◆


ローハンはエルドラに戻ると、さっそく領主レオナード・エルドラに面会する為の諸々の手続きをギルドに依頼した。

本来であれば、一介の冒険者が会えるような人物ではない。

ただ、今回は国益に関わる由々しき事態、と強調しておいたのでレオナードも会わざるを得ないだろうと踏んでいた。


数日後、読み通りローハンに呼び出しがかかり、馬車の迎えが来た。

今までの人生で乗ったことも無いような立派な馬車だ。


緊張の面持ちで乗り込み、レオナードの屋敷へ向かう。

外から見たことは何度かあったが、門の中に入るのは当然初めてだった。


大広間に案内され、その豪華さに圧倒されているとレオナードは姿を現した。

見るからに不機嫌な表情で、挨拶も無しにいきなり切り出す。


「私は忙しいんだ。本来であれば、君のような人間と会っている時間など無いことは承知だろう? 国益に関わる由々しき事態とやらが下らない話だったら、牢にぶち込むぞ。」


その威厳に気圧されたローハンだったが、深呼吸をして話し始める。


「ミスティア湖に関わる話でございます。公爵様は、あの一帯をエルダリン王国の王女に売却したとのお話ですが、間違いございませんでしょうか?」


「だったら何だ。」


「あの湖の底には、魔導石が大量にございます。その貴重な資源を他国に売り払ったということが、王都に知られると、大きな問題になってしまうかと。」


「何だと? 何故、お前はそんなことを知っている? 今まで、盗掘していたということか?」


「そ、それは……」


ローハンの背中に冷たい汗が流れる。

レオナードはじっと目を瞑り、暫く考え込んだ後、やがて口を開く。


「ふむ。だが、その話が本当なら確かにまずいな。情報を提供してくれた代わりに、今までのことは見逃してやる。」


おい、こいつをつまみ出せ。

と側に控えていた護衛二人に指示を出すと、ローハンを両脇から抱え上げ、屋敷の外へと投げ捨てさせた。


「面倒なことになったな。一度、王女様とお話しする機会を作らねばならんな。」


レオナードは、この後のエリシアとの会談を想像し、深くため息をついた。

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