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双子転生 ~そして、俺だけ捨てられた~  作者: 堅物スライム
スローライフを目指してみよう編

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☆26 二体目

アスモデウスの放った禍々しいマナが、暗黒の霧のように俺たちを包み込む。

体にまとわりつくその瘴気は、まるで生き物のように動き、逃げ場を失わせる。


ぶっちゃけ俺には特に何も変化が無かったが、エリシア達の前に立ちはだかり、その瘴気を一身に浴びたノアは、苦しげに表情を歪めていた。


「う……」


と、ノアは喉の辺りを掻きむしりながら苦しげに声を漏らす。

激しい痛みと不快感が彼の体を襲っているようだ。

顔は青ざめ、汗が額から滴り落ちている。

するとユナは両手を胸の前で組み、静かだが力強い声で詠唱を始めた。

彼女の声は周囲の空気を震わせるように感じられる。


一瞬の間を置き、ユナの体全体からマナが放出され、真っ白に輝くヴェールとなり、俺たちを包み込む。その光は暖かく、毒の効果を打ち消す癒しの効果をもたらしているようだ。


最も俺には効果が無いので、ただ集中し、反転されないように気を付けるだけだ。


ユナの浄化の力で回復したらしいノアも態勢を整え、魔法の詠唱を始める。

彼の目には決意の光が宿り、マナは雷のエネルギーへと変換されていく。


雷鳴疾風(ライトニング)!!!」


ノアがその右手を伸ばすと、雷鳴音が轟き、一筋の稲妻となってアスモデウスの体を貫いた。その瞬間、アスモデウスの表情が一瞬歪み、苦痛の声を上げた。


「ぐっ……!」


毒の魔神は一瞬だけ、苦悶の表情を浮かべたが、すぐにその表情を消し去ると、三つの口から瘴気を更に勢いよく吐き出した。

それは黒く濁り、周囲の空気を重くし、息苦しさを増大させた。

ユナが歯を食いしばり、必死に癒しのヴェールを強めようとしているが、その額には汗が滲み、限界が近いことが見て取れた。


あ、これは俺の出番だな。


「みんな、俺の後ろに来てくれる?」


と声をかけると、三人とも戸惑いながらも俺の後ろに集まった。

俺は両手を広げ、マナを全身から放出すると、周囲の毒の瘴気は瞬く間に癒しのオーラに反転し、俺たちを優しく包み込んだ。


禍々しい漆黒が薄れ、柔らかな光となって広がり、空気が一気に清浄化された。


うん、そうだな。

今回は、俺は攻撃ではなく防御に徹しよう。


「エリシア、修業の成果を見せてくれよ。」


俺はニヤリと笑い、エリシアに攻撃を促す。

エリシアは一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに決意を固めたように頷いた。彼女は右手の指輪にマナを込め、静かに召喚の呪文を唱え始める。


指輪が淡い光を放ち始め、次第にその光は強くなっていった。

やがて、炎の巨人アグニがゆっくりとその姿を現す。

魔神の体は燃え盛る炎で覆われ、その熱気が周囲の空気を揺らめかせた。


「アグニ、あの毒の魔神アスモデウスに力を見せつけて下さい。」


「承知した。」


アグニの声は低く、しかし力強く響いた。

アグニは俺たちの前に出ると、その巨大な体から熱気をまき散らしながらアスモデウスへと向かっていく。一歩一歩が地面を揺るがし、その存在感は圧倒的だった。


巨人同士の壮絶な殴り合いが始まった。

アスモデウスの牛の顔がアグニを噛みつきにいくが、アグニはそれをものともせず、拳を振り下ろす。その拳が振り下ろされるたびに、炎が爆発し、アスモデウスの毒の瘴気と激しくぶつかり合う。


炎と毒が交じり合い、薬品が焦げたような不快な匂いが充満する。


アスモデウスの瘴気は黒く濁り、見るからに息苦しさを感じさせるが、アグニの炎はその瘴気を焼き尽くすかのように燃え盛り、周囲の温度が急激に上昇する。


アスモデウスも負けじと反撃し、その三つの口から吐き出される毒の瘴気を更に濃くしてアグニに襲いかかる。その瘴気はまるで生き物のようにうねり、アグニの炎を包み込もうとする。


エリシアはトランス状態となっているのか、周囲の状況は全く目に入らないようで、右手を伸ばし、一心不乱にアグニに向けてマナを注ぎ続ける。


彼女の目は炎のように輝いていた。


横を見るとノアもまた集中し、アスモデウスへの攻撃の機会を伺っているようだった。彼の目は鋭く、両手に雷のエネルギーが集まっていくのが見えた。


雷光爆裂(ヴォルトブラスト)!!!!!」


アグニとアスモデウスが距離を開けた瞬間だった。

ノアは残っているマナの全てを凝縮し、一気にアスモデウスへと解き放った。


雷光がアスモデウスに襲い掛かる。

その光は目を焼くように眩しく、耳をつんざくような轟音が響き渡った。


不意を突かれたアスモデウスは躱すことも出来ず、まともにその稲妻を喰らった。


「ぐおおおおおお!!!!!」


苦痛の叫びが響き渡る。

アスモデウスの瘴気が一瞬薄れ、その力が弱まったのが感じられた。

その隙を見逃さず、アグニが獄炎を込めた渾身の一撃で殴りつけると、アスモデウスの巨体が後方へと弾け飛んだ。

壁に叩きつけられたアスモデウスは片膝をつき、


「見事だ。そなたたちの力、しかと見せてもらった。我が力、そなたたちに授けよう。」


地の底から響くような重々しい声でそう言うと、アグニがフッと姿を消した。


俺たちは一瞬の静寂に包まれ、戦いの終わりを実感した。


あ、またエリシアがマナを使い果たし、倒れこんだのかと思いきや、顔面蒼白になりながらもエリシアはその場に立ち続けていた。

疲れ切っているのは明らかだったが、その表情には薄っすらと笑みが浮かんでいた。ノアとユナも地面に両手をつき、肩で息をしながらなんとか踏みとどまっていた。


ノアは疲労困憊の中でも、戦いの終わりを感じて安堵の表情を浮かべていた。

ユナもまた、疲れ切った体を支えながら、俺たちの無事を確認して微笑んでいた。


うん、ガルドとフィアのポンコツコンビとはやっぱ違うな。


◆◆◆


エリシアはゆっくりと、アスモデウスの前に進み、契約の儀を始めた。

暫くすると、前回のアグニの時と同様に、エリシアの差し出した小指の指輪にアスモデウスは吸い込まれていった。


無色だったその指輪が緑色の輝きを放ち、神秘的な光が周囲を照らした。

儀が終わると、エリシアは誇らしげにその指輪を俺に見せつけてきた。

薬指には赤い指輪、小指には新たに加わった緑の指輪が輝いている。


「良かったな。コレクションが増えて。」


そう言うと、エリシアは


「ええ、でもまだまだ足りません。また宜しくお願いします。」


と、満面の笑みを浮かべた。

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