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96.俺、外交問題を心配する

 進級試験の季節が来た。そして男子会メンバー全員、問題なく進級だ。これで4年生も同じ部屋でいられるぞ。

 そして、その後は、いよいよ飛び級試験だ。エマ!頑張るんだぞ!

 レピッド王女は二日前に入国して、ワーニーに挨拶をしたらしいが、受験でピリピリしているので、俺達には後で挨拶にくるそうだ。いらないけどな。


「あのさ。もし、王女が合格したら、僕たちと同じクラスになるのかな?」不満そうな顔でヤーニーが聞いてくる。

「どうだろう?俺とヤーニーだってクラスが分かれるかもしれないだろう?」

「そうなったら、校長室を破壊しにいくよ。僕」と宣言された。ありったけの忖度を期待しよう。校庭に穴を開けた前科があるから、セット扱いになっていると思うけどね。

「私たちは絶対ばらけますよね。チーム対抗戦とか見てても、戦力が偏りますからね」と冷静なキリアル。そりゃ、5人一緒は無理だろうな。グレッグは、

「私は、婚約がどうのと言って来ている王女と、ウェルたちは違うクラスと思いますね。キリアルに押し付けられそうな気がします。それで、エマ様と私、デイブは今まで通りレナード君と一緒って感じで予想しています」と、なんか当たっていそうな予想を披露した。

「なんで私、いやだよ。グレッグ代わって~」キリアルが全力で嫌がっている。尊い犠牲だ。俺も嫌だからなぁ。


 試験が終わって、エマが報告に来た。

「完璧よ!合格間違いなし!」と嬉しそうだ。どんな問題が出たのか聞いていると、ガイルから通信鏡で連絡がきた、王女が今から来るそうだ、すぐ帰れだって。突然のアポで来るかね、普通、親しくもない王族が。


 エマとヤーニーも一緒に戻る。

 強引な訪問に、家令のジョージも家政婦長のマーガレットも戸惑っている。

 取り敢えず、ウーちゃんに、応接室の壁に不可視結界、遮音付きを作ってもらう。気が散るから、俺達にも見えない様にしてもらって、ヤーニーと母様とシャルは、そこで待機だ。ウーちゃんに小声で、ヤーニーのことを頼んだ。


 俺とエマとガイルで、玄関まで出迎える。

「お久しぶりですウェルリーダル様。私、今日をとても楽しみにして参りましたの。落ち着いたところでゆっくりお話ししたいですわ。案内をお願いします」と満面の笑みで話し、手をのばし、エスコートを待っている王女。

 ガイルはこの国の宰相で、俺の父親なんだけどな。そこスルーしちゃうんだ。

 この人、王族として国外に出してはいけない人だと思う。


 腹が立ったので、応接室に案内して、それから、ガイルとエマを紹介することにした。

 これで、壁から見ている皆にも、何があったか分かるだろう。

「先程ご挨拶させていただけなかったのですが、父と、親戚のエマです」

「お初にお目にかかります。ブラス侯爵家当主、ガイル・ブラスでございます」

「ブライト伯爵家エマでございます。ブラス家の遠縁でございまして、こちらで暮らしております」

「よろしくお願いするわ。

 それでですわ、ウェルリーダル様、私、今日の為に必死にお勉強いたしましたのよ。兄様も姉様も私なら、絶対に大丈夫だって応援してくださったの。ピアスも見てください!これで魔法が使えますの。大教会が管理しているものを、ウェルリーダル様のご手配で、私に回るようにしてくださったのでしょう」と嬉しそうに話しだした。あ~頭痛い。


 マーガレットが見たこともない、能面のような顔でお茶を淹れている。

「王女殿下も試験に自信がございますのね。私も同じ試験を受けましたの。同級生になれると嬉しいですわ」とエマが果敢に切り込んだ。

「まあ、あなた、相当年下でしょう?あの試験が出来たの?」

「えぇ。ウェルと同じ年齢ですわ。ウェルが私の為に勉強を教えてくれたのですもの、きっと満点合格ですわ!」と俺をみてニッコリ笑う。怖ぇ~。笑顔のバトル、怖いよ。でも俺も頑張ってニッコリを返す。

「満点って、自信家ですのね。自信過剰の女は嫌われましてよ!」

 うわ~。どの口が言うんだろう。

「まあそれは大変、ウェル~、私の事嫌いになっちゃう?」

 うそ~。エマ大先生、そのパスいらないわ~。

「エマのこと嫌いになんてならないよ」ニコッでごまかす。

 うわ~。メンタル削られる。俺も不可視結界の中に入りたい。あっちで爆笑しているのかな。

「ウェルリーダル様はご婚約者はいらっしゃらないと聞いていますが?」

「そうです。息子には婚約者はおりません。ですが、親戚の中に縁があるのも良い事だなと考えております」と、やっとガイル登場。

「まあ、そんな、たかが伯爵家との縁など、よりよい縁があれば吹き飛んでいくものでしょう」


 はぁ~。あったまくるな~。

「レピッド王女、あなた、『魔力なし』って言われて、落ち込んで引きこもっていたんでしょう?そんな人が、努力してもどうにもならないことで、どうして他人を貶められるんですか?」

「・・・」

「また、だんまりですか?自分を貶めて家族を悲しませて、今度はエマを貶めて、エマを愛する全ての人を悲しませる。あなた一体なにしてるんですか?」

「私は、ただ、ウェルリーダル様と、縁をいただきたくって・・」

「俺、性格悪い人、嫌いなんで。人の家を急に尋ねてきて、当主が出迎えても挨拶もしないとか、性格に加えて頭も悪いんでしょうか」

「お黙りなさい!王女殿下に向かって、不敬が過ぎます!口を出さぬように言われておりましたが、これはあんまりです」と付き添っていた女官が口を挟んだ。

「言い過ぎました。申し訳ございませんでした。王女殿下」俺はあえて王女殿下と呼んで、頭を深く下げた。


 静まり返った部屋の中に、母様が入ってきた。全て見ていただろうが、当然知らぬふりだ。

「王女殿下、ウェルリーダルの母でございます。お初にお目にかかります」完璧な作法でお辞儀をしたあと、微笑みながら、

「私の姉は、この国の王妃殿下ですの。先程まで一緒にお茶をしておりましたが、ヤーニー様に婚約の打診があったと打ち明けてくださいましたのよ。王女殿下はヤーニー様のどのあたりがお好みでしたの?」と無邪気を装って質問した。母様も怖ぇ~。矢継ぎ早に話し始めた母様。

「・・・」だんまりを決め込んだ王女は、しばらくして、

「気分が悪いので失礼するわ」と部屋を出て行った。

 一応、玄関まで見送ったが、塩持ってこ~いって気分だった。


 応接室に戻ると、ワーニーとサテラ様もいた。お出迎えで席を外している時にやってきたんだそうだ。最初からいたって事か。

「これで、うるさいのが撤退してくれるといいんだがな」とワーニー。

「ごめんね。ムカついちゃった。外交問題になるかなぁ?」

「7歳の少年の言ったことで外交問題になるようなら、国が傾きます」とガイル。

「ウェル、よく頑張ったわよ。シーナが入って行ったときには、私も一緒に行きたかったくらいよ!」とサテラ様。相変わらず楽しい人だ。


 ヤーニーがムギューと抱き着いてくる。久しぶりの甘えたか?女性恐怖症ついに発症したか?母様まで激コワだったもんな。そうでなくてもトラウマなのにな。ヨシヨシ。

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